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35話 硬貨の行方

 魔術陣を描く練習をしたり、庭のお世話をしたりお料理のお手伝いをしたりしてあっという間に夏の1の月になった。庭で草抜きをしているとすぐに汗をかく。


 魔術陣はようやくほぼ全部発動するようになった。師匠が言ってた通りちゃんと3つの月かかった。それでも師匠は早い方だって褒めてくれた。


 隣にマリーベルというもっと早い人がいるけど、私は褒められて伸びる子なので受け入れるよ!


 私がきっちり3つの月かかった間にマリーベルは初級の金の魔術陣を完璧に描けるようになり、今は木の属性である初級の癒しの魔術陣を練習している。それも7割ぐらいは完璧に描けている。


 私がもし包丁で指を切ったら治せるようにしたいと言っていたけど、指切ったことないからね、まだ!

 

 どうやらマリーベルはだいぶコツを掴んだようで、上達が著しい。

 師匠が言うには大体の魔術師は描いていく内にコツを掴み、他の魔術陣も大して練習をしなくても描けるようになるが、その『コツを掴む』という時間がマリーベルは圧倒的に早いらしい。


 ……比べない、比べない。よく頑張ってるよー、私。


 私は心の平穏を保つために呪文を唱えるのだった。


 この間にほうれん草も収穫できた。キッシュやグラタン、ベーコンと一緒に炒めたり大変美味しくいただいたのだった。

 土の属性の土で作った野菜の方が大きいし、甘味や旨味が強い。世話ができるならなるべく庭で育てた方がいいんじゃないかと思う。


 最初は面倒くさがっていた師匠も、無心で草を抜くことにハマったらしく、作業部屋で何かイライラすることが起きたらフラッと館を出ていき、庭で草抜きをするようになった。

 今では庭が気に入ったようで早くテーブルセットを置きたいと言っていて、感慨深くなった。




 そんなこんなで夏の1の月、24の日。町へ買い出しに行くことになった。今回は私も採寸の必要があるため、お留守番回避だ。やったね!

 師匠がめちゃくちゃ心配して、攻撃用の魔石や魔術陣をカバンに入りきらないくらい渡してくれたが、大半を返した。硬貨も入れられないのは困る。


 そうそう、宰相に貰った硬貨は少し私が貰って残りは師匠とマリーベルで二等分しようとしたら、二人に断られてしまった。あれは私へのお礼だからと言ったが、私へのお礼はあのキラキラの髪飾りで十分だと思う。それでも硬貨はある方がいいので、厚かましいと思うけど少し貰おうと思っていた。それなのに二人が受け取らない。

 マリーベルは「助けて欲しいと姫様が声を上げ、フレデリック様が魔術を使われたのですから、私に受け取る権利はありません」と言っていたが、マリーベルも不本意ながらも魔術陣を持ってくれていた。受け取る権利はあると思うと私の意見も言う。

 しばらく問答したが二人が折れなかったので、じゃあ師匠の仕事を手伝えそうにないから魔術ペン代とか服代ということで渡そうとした。マリーベルはその代金を貰った硬貨から支払うことに、「それなら」と納得してくれたが、師匠には断られてしまった。それどころか「それくらい払わせてくれ」と言われた。

 

 師匠は強化結界の魔術陣の開発だけでも一生遊んで暮らせるほどの褒賞をもらったのに、定期的に仕事のお金も入ってくる。それなのに、ほとんど館から出られない。お金を使う場所が少ないのだ。師匠のお兄様にお願いして色々送ってもらっている物も、師匠は払うと言ってもお兄様が「これくらいはさせてよ」と困った顔で笑うので強く言えないということだった。

 そうなると衣装に凝るくらいしかないが、日常は堅苦しい格好はしたくない。新年祭の衣装は派手すぎず豪華になるようお願いしているが、ソニアさんの仕立て屋はちょっとお金持ちの平民が利用できるくらい良心的なお店らしい。

 貴族街の近くに王都で有名な仕立て屋の支店があるらしいが、貴族がうろうろしているし、有名料なのかソニアさんのお店の比べると3割り増しは当たり前だと言う。それなのに仕立てに時間がかかる上にソニアさんのお店の方が縫製が綺麗とくるといくらお金を使いたいと思っていてもそんな所で払いたいと思わないとのことだ。それには同感だ。


 そんな訳で仕事した分は報酬を貰うが、それ以外は必要ないと言われた。何があるかわからないから持っておけと言われ、有り難く貰っておくことにした。確かに今の所、お金を稼ぐ手段がないので助かるのだ。

 マリーベルには断られたが半分はマリーベルの分だと私の中で決めた。もしマリーベルがお金に困ったら渡そう。私がマリーベルのお金を預かっていると思うことにする。


 それにしても「お金を使いたい」とは……1回くらい言ってみたいものだ。

 いや言ったことはあるけど、私の使いたいは好奇心からであって、師匠とは違う。


 マリーベルが「お金を貯められるだけ貯めればいいのではないですか?」と師匠に言ったら、師匠は目を丸くしてキョトンとしてこう言った。


「お金は使うためにあるのに、使わなかったら意味ないだろう?」


 ……うん。その通りです。その通りなんだけど早くその境地に行きたいものです。

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