表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/61

21話 魔術陣を描こう(後編)

 魔術陣が描けるようになるの、早くても3つの月かかるって……早くてもってことはそれ以上かかることもあるわけで……

 ……う、うん!頑張ろう!今悩んでもしょうがない!


「魔術ペンの属性が違うから、メルには水の初級魔術陣を、マリーは金の初級魔術陣を描いてもらう」


「その方が描きやすいからな」と言って師匠は紙の束を私とマリーベルの間に準備する。次に本をめくり、私の前に魔術陣が載っているページを開いて置いてくれた。これが水の初級魔術陣なのだろう。マリーベルには別の初級魔術陣のページを開いて置いていた。水の初級魔術陣と金の初級魔術陣は、初級魔術陣というだけあって、以前師匠が描いていた結界や癒しの魔術陣とは比べ物にならないくらい描くものが少ない。師匠が描いていた魔術陣は円の中に記号やら文字やら図形やらびっしり描かれていたが、初級魔術陣は余白があるくらいだ。


「魔術ペンにその属性の魔力を一定力注ぎながら魔術陣を描くんだ。魔術陣によって必要な魔力が変わるが、これは初級魔術陣だから、普段魔道具に注ぐ量の3倍くらいで大丈夫だ」

「さ、3倍ですか……」


 魔道具がいかに魔力を節約して作動するようになっているかわかる。


 ありがとう魔道具。ありがとう開発してくれた人たち。


 魔道具の偉大さに改めて感謝をしてからさっそく魔術陣を描き始める。ついに魔術陣を描けるということにドキドキしながら黒い魔術ペンを握る。本を見ながらゆっくりと線を引く。魔道具の3倍の魔力、水の属性を意識しながら魔力を注いでいく。普通に羽ペンで描くのとは違い、何か抵抗のようなものを感じてなかなかスッと線が引けない。そのせいで初級魔術陣だというのに1つ描き終わるのに、ゆっくり食事をとるより時間がかかった。

 

 魔力の少ない私は、魔道具の3倍の量を注ぎながら魔術陣を描き終わるまでそれを維持するというのはなかなかに大変で、1つ魔術陣を描いただけで疲れてしまった。


 ブレずに線を引くことが難しいため出来上がった魔術陣は全体的にヨレヨレしている。


「……師匠、これって発動するんですか?」

「……本来の効果よりだいぶ劣るが一応発動する……と思う」

「ううっ」


  疲労感と悔しさからお行儀が悪いのは承知で机に突っ伏す。

 

 ……師匠が早くても3つの月がかかるって言ってた意味がわかったよ。


「いや、でも初めてにしては、それも自分専用の魔術ペンを使ってないにしてはよく描けているほうだぞ」


 師匠がそう言って頭を撫でながら慰めてくれた。なんだか最近師匠が優しい。最初は頭を撫でられたらどうしたらいいのかわからなかったけど、頭を撫でてくれるのなんて師匠くらいだし心地良いからされるがままだ。


「でも師匠……」


 私はそこまで言って首を横に向ける。隣では黙々と魔術陣を描いているマリーベルがいる。私が1つ描く間にマリーベルは2つ描き終わり、今は3つ目を描き始めている。

 そんなマリーベルを見ているとやっぱり私は出来の悪い子なのかと思ってしまう。


「マリーが器用なだけだ。2人とも優秀で驚いている。マリーは下級貴族だが中級魔術師だったな。中級魔術師の中でも魔力量は多そうだ」


 そういえばここにいるみんな血統因子外れだ。疲れてしまった私は今日は魔術陣を描くことを諦め、気になったことを聞くことにした。 


「師匠、血統因子外れって多いんですか?」

「そんなことないぞ。国内の魔術師の中で血統因子外れは今は30人もいないんじゃないか?」

「思ってたよりも多かったです」

「元平民も入ってるからな」

「平民ですか?」


 師匠が言うにはたまに平民からも魔力持ちが生まれるそうだ。割合は貴族の血統因子外れよりも少ないらしい。平民から魔力持ちが出た場合、その人だけ一代貴族になるそうだ。住める町は王都と今私たちがいる町ともう一つの大きい町の3つに限られるそうだが、家族とは一緒に住めるとのことだ。


「どうしてその3つの町なのですか?」

「警備の問題だな。昔は結界が脆かったのもあって、平民の魔力持ちが攫われたり知り合いに売られたり色々問題があったらしい。戦局に魔力は大いに関わるからな」

「そんな……」


 戦争で勝つために魔力が必要だから、魔力持ちの平民を攫うの?


 人として見られていないことに何とも言えない気持ちになる。ああ、でも貴族も魔力で判断されるか。魔力を持っている人は全て、純粋にその人自身を見てもらうことは難しい。

 私の気分が少し沈んだことがわかった師匠が慌ててフォローする。


「今は警備は万全だからそんなことは起こっていないはずだ!平民の魔力持ちを見つけたら必ず国に報告しなければ罰せられるから隠して売ることもないと思うぞ!」

「そうなんですか」


 今はそんなことは起こっていないと聞いて安心した。すると黙々と魔術陣を描いていたマリーベルが「できました!」と声を上げた。

 線は少しガタガタしているが私の描いたものに比べると断然綺麗だ。


「上達が早いな。自分専用の魔術ペンを使ったらもっと綺麗に描けるだろう。……3つの月かからないかもしれないな」


 ……私は私のペースで頑張るもん!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ