表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/74

19話 混ぜるな危険

「……2人がお父様とお母様だったらよかったのに」


 2人に抱きついたまま言葉をこぼすと、バッと2人が勢いよく離れた。


「……姫様のお母様は大変光栄ですが夫がフレデリック様は嫌です」

「安心しろ、俺も嫌だ。あとメル、せめて兄にしろ」


 2人が心底嫌そうな顔をする。

 師匠が小さく「人が感動しているというのに……」と呟いていた。


「……前から思ってたけど、2人って似てる所多くて気が合いそうなのに、結婚するのは嫌な」

「「絶対嫌」です」


 私が言い終わる前に、何時ぞやと同じように息ぴったりの2人が先程よりも嫌そうな顔をして言った。


「似ているからこそ嫌だ」

「どうしてですか?考え方が似てる人といるのは楽なんですよね?前に読んだ本も、似た者同士の夫婦は喧嘩が少なくて末永く仲良く暮らしたってありました」

「まあそういう場合もあるだろうが……」


 そう言うと師匠とマリーベルは視線を交わす。


「私とフレデリック様は陰か陽かで言ったら陰なんですよ。姫様は逆に陽です」

「……私さっきまで思いっきり陰だったけど」

「そりゃ陽の人間だって落ち込むことはあるだろう」


 私がそれでも納得しかねているとマリーベルが例を出す。


「城を出る様に陛下たちに言われた時、姫様は落ち込んではいましたが比較的すぐに前向きになりました」

「あの時はそうね。でも今回は……」

「それでも姫様は陛下たちに復讐しようなんて思わないでしょう?」


 マリーベルの言葉にギョッとして何度も首を縦に振る。


「そういう所です。私とフレデリック様は同じ状況になったら復讐するでしょうねぇ」


 マリーベルが怖い笑みを浮かべる。私の背筋が冷える。


 こ、怖い……なんか黒い……


「というわけで私たちが結婚したら闇堕ち真っしぐらですよ」

「俺とマリーの思考、何かされたら相手を怒りや恨みからどうこうしたいっていう方向なんだよな。普通夫婦だったらどっちかが止めそうだけど、それがない」

「今でも王族暗殺できないかしらと思うことはありますからね」

「俺も思う。正直殺すだけなら難しくないんだよな。兄がいなければやってただろうな」


 ……物騒すぎるよ!


 師匠はともかく長い間一緒にいたマリーベルがそこまで物騒な思考の持ち主だとは思ってなかった。


 あっでも片鱗はあったな……


 捨てられた時やドミニク様の一件を思い出す。この2人を敵に回すと大変だ。特に師匠なんて警備が厳重な王族の殺害が難しくないと言う。味方でよかった!本当に!!


「それにしてもメルはマリーに育てられたようなものだろう?よく捻くれずに育ったな」

「そうですね……私のこの性質は別にいいと思ってるんですけど、母は私と違って優しくて前向きだったんですよね。人生どっちが幸せか考えるとやっぱり母の方だと思うんですよね。ですから姫様には母が私にしてくれていたように接していました」

「じゃあ私、マリーベルのお母様に似てる?」

「それがそうでもないんですよね。母はおっとりしていて全てを包んでくれる海のような人だとしたら、姫様は元気いっぱいで明るく周りを照らす太陽みたいな感じですかね」

「……お転婆ってこと?マリーベルのお母様の方が姫っぽいわ」


 ちょっとしょんぼりして肩を落とす。師匠がポンと私の頭に手を乗せる。


「メルにはメルの良さがある」


 そう言うとまた撫でられる。優しい笑顔付きだ。


 ど、どうしたの師匠!?さっきから優しさの大盤振る舞いすぎない!?


 私が内心あわあわしている間に師匠は手を下げ、結界の魔石に視線を向ける。もういつもの師匠だ。


 ……私1人だけ焦って馬鹿みたい。もう気にしないようにしよう。


「結界のことで何か聞きたいことはあるか?」


 私が何かあるかなと考えている間にマリーベルが質問する。

 

「この強化結界はフレデリック様と王族、一部の上級貴族しか使えないというのは本当ですか?」


 マリーベルの質問で、結界の使用者に制限があるなんて初めて知った。


「本当だ。強化結界と普通の結界、何が違うか知ってるか?」


 普通の結界より強力ということしか知らない私は首を傾げる。


「普通の結界は術者を上回る魔力で攻撃すれば破れます。つまり複数人から攻撃されれば終わりです。しかし強化結界はどれだけ強い攻撃をされても破れることはありません」

「そう。術者や術者が許可した人以外は全て弾く」

「えっめちゃくちゃすごくないですか!?」

「だから使用者を限定しているんだ」


 師匠が言うには強化結界を悪用されないために使用者制限があるそうだ。例えば何か罪を犯した者がその結界を張ったら捕まえることができないとか、内乱を加速する恐れがあるとか。


「この結界のおかげで他国との争いはなくなったんですね」

「……どうだろうな。表立っての戦争は起きにくくなったが、スパイによって内側から崩されることもあるだろうしな」

「えっスパイがいるんですか!?」

「いるだろう。いくら入出国の管理が厳しくたって身分を偽証することはできるしな。そういうこともあって強化結界は使用者制限があるんだ。スパイがこの魔術陣を自国に持ち帰って、結界を破る方法を見つけられたら困る」


 それは確かに困る。私は戦争を経験したことはないけど、本を読む限り体験したいとは思わない。


 そんな話をしていたら夕方の鐘が鳴った。今日の魔術講義は終わりだ。部屋から出て、私とマリーベルは夕食の支度のため調理場へ、師匠は作業部屋へ向かった。


 今日のご飯は大変美味しくいただけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ