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12話 町でお買い物

 準備が整ったので転移の魔術陣を使って町へ。魔術陣の上に私、マリーベルが乗ると師匠も魔術陣に乗り、魔力を注いだ。私が転移させたかったけど、私だと魔力が足りないそうだ。転移させるものの大きさで必要な魔力が変わるそうで、私には小さな荷物くらいしか送れないらしい。がっかりしていたら魔石を使って魔力を補えば私でも人を転移させることは可能になると師匠が教えてくれた。

 

 魔術陣が光り、眩しさから目を瞑る。しばらくすると光が収まった気配がしたので、ゆっくり目を開けると、まず目に入ったのが壁だった。少し見回すと以前王宮から館へ行く時に使った転移の魔術陣がある町役場だとわかった。

 町役場で私たちはそれぞれ書類を記入して、カードの魔力で本人確認をしたあと、布の袋に入った硬化を受け取った。私とマリーベルは大銀貨5枚ずつ。師匠は銀貨も金貨も沢山交換してもらったようだ。私はマリーベルが持っているカゴバッグに硬貨を入れてもらい、師匠は革製のウエストバッグにしまっていた。ウエストバッグは四角く、側面には細長い深めのポケットがあって、そこにペンが収まっていた。

 それから師匠は私たちに「少し待っていてくれ」と言って、近くにいた町役場の人と少し話してから戻ってきた。

 町役場を出るとお店が沢山並んだ通りが広がっていた。人が多く活気がある。


「わあああ……!これが市場!?」

「いえ、ここは商店ですね」

「市場は毎月1の日に開かれる」


 私の言葉にすかさずマリーベル、師匠から訂正が入った。マリーベルが「市場が毎月1の日に開かれるのであれば、1の日に来ればよかったですね」とポツリと言った。

 今日は春の1の月の29の日だ。


 市場、明後日だったのね……残念。行きたかったなぁ。


「明後日にもう一度来るのはダメなの?」

「そうですね……市場で買う方が安いんですよね……今日はどうしても必要な分だけ購入しましょうか」


 私とマリーベルの中で、明後日また町に来るということでまとまりかけたが、周囲を見回していた師匠が待ったをかけた。


「いや、市場は人が多くなるから、避けた方がいい。それに頻繁に外出するのは王宮側からの心証があまりよくないと思う」


 師匠が言うには買い物は毎月1回、市場が開かれる日周辺を避けた日がいいらしい。本当は今日も、明後日市場が開かれるということで、いつもより人が多いようだ。


「そこまで気にしなくても大丈夫なんじゃないですか?正直私が狙われているっていうのは嘘だと思うんです」


 私の言葉に師匠が険しい顔をして、また辺りを見回した。


「狙われているかどうかはまだわからないが、監視がいることは確かだ」

「え!?」


 私とマリーベルは驚く。


「師匠、出かけるって城に連絡したんですか!?」

「そんな命令はなかったから、していない」

「じゃあずっと館を見張ってたってことですか!?」


 え〜……暇すぎない?まあ師匠が万が一にでも国外に行ってしまうようなことがあったら一大事だから監視は必要ってことか……監視する人、大変だなぁ……


 でも師匠が言うように監視がいるなら、頻繁に外出するのはよくなさそうだ。仕方なく月1回の買い物で我慢することになった。

 


 食材は大量に買うことが決まっていて荷物になるので、後で買うことにして他のものを見ようということになった。

 そんな話を道の端の方でしていたが、行き交う人々からジロジロ見られている。主に師匠が。冷たい雰囲気はあるけど、綺麗な顔だからかなと思っていたけど、それだけじゃなかったようだ。明らかに師匠の服が上等だから貴族だということがわかって遠巻きにされている。

 

 この町は王都の次に大きな町のようで、国のほぼ中心にあるらしい。本当の中心は結界の館だが、王城も広大な森を挟んだ位置にあるため、王都もほぼ国の中心にある。

 ちなみに館から王城が微かに見えるが、途中大きな崖があり、王城はその上に建っている。館と王城はその森を抜けて、直接行き来することは不可能だという。


 悪目立ちするのもあれなので、まず服を買いに行くことになった。ちょっといい所の商家の子という設定で服を選ぶ。師匠は白いシャツに紺色のズボン、ついでに私とマリーベルもワンピースを購入。私はアイボリーの布製の小さめの斜めがけ鞄も購入。これで私も自分で硬貨を持てる。買ったお店で部屋を借りて着替えた。ピンクと白のチェックの可愛い服に気分が上がる。マリーベルは濃い緑の落ち着いた雰囲気のワンピースだ。

 私の服と鞄がそれぞれ小銀貨1枚、マリーベルが小銀貨3枚だったけど、いつの間にか師匠が自分の服と一緒に払っていた。払うと言っても受け取ってもらえなかった。


 ……むぅ。ポケットにでもこっそり入れとこうかな。


 そう思っても師匠にそんな隙はないので、どうするか本気で考えなくては。新年祭のドレスも控えているし……


 先のことを考えたら、ちょっと気が遠くなりそうだったから取り敢えず放っておいて、買い物を楽しむことにする。せっかく町にいるのに、楽しくないこと考えるの勿体無いもんね。


 ということで、周囲の視線も落ち着いたし、買い物続行だ。

 今は仕立て屋にいる。新年祭用の衣装の注文のためだ。新年祭は冬の1の月の1の日に開催される。10歳以上の国中の貴族は特別な理由がない限り全員王城に集まり、新年を祝う宴だ。もうすぐ春の2の月になるとはいえ、春の3の月、夏の1から3の月、秋の1から3の月とまだまだ時間はあるが、師匠とマリーベルが何故か張り切っていて、私のドレスに十分時間を取って欲しいから自分たちは前倒しで作ってもらおうということになったのだ。


 私は2人の勢いについて行けないよ……


 ちょっと遠い目になってソファに座っていると、仕立て屋の奥さんが恐る恐るお茶を運んできてくれた。ちなみに師匠とマリーベルは採寸のため、それぞれ別の部屋に行ってしまった。

 奥さんは40代くらいで、暗めの金髪を後ろで1つにまとめている。師匠は館に住むようになってからこの仕立て屋で服を作ってもらっているそうだ。

 ……その際、当然外出するには王族の誰かがいるわけだが、大体殿下が来ていたようで、「早くしろ」と怒鳴ったり、「お茶が不味い」と言ったりそれはもう態度が悪かったみたいで、師匠と一緒に来た私とマリーベルに怯えていた。


 ……怖い思いさせてしまってごめんなさい。


 魔力が多くても私より殿下のほうが恥なんじゃない?と思いつつ、心の中で奥さんに謝るのだった。

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