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11話 町へ行く前に

 2人が意気投合したその後が大変だった。

 師匠がお金を出すから、普段着を数着買おうと言い出し、マリーベルもそれに同意した。どうやらマリーベルはずっと私のドレスが質素だったことを気にしていたらしい。飾りっ気はないけど、生地はいいから着心地はいいのに。

 私はなんとか「ここではお料理をしたり作業するからこのままでいい。着飾っても城にいるわけじゃないから必要ない」と説得した。

 2人は渋々「新年祭のドレスは豪華にする」ということで納得した。


 師匠にどうお金を返すのかはまた考えることにして、その日の午後は習った魔術のことをまとめている内に寝てしまい、マリーベルに起こされた時にはもう夕食ができていた。


 くっ料理できなかった……!


 そんなこんなでその日は明日に備えて早く寝ることにした。



 翌朝、朝食を食べたらすぐに館の外へ出た。

 ちなみに今日は朝食を手伝えた。玉ねぎを切るのに再挑戦。……うん、また涙で前が見えなくなったよ。玉ねぎ難しい……


 玉ねぎとはいずれ仲良くなるとして、外に出た師匠は地面に、転移の魔術陣が描かれた布を広げた。師匠が寝転べるくらい大きい。そして掌に乗るサイズの蓋付きの鏡のような通信の魔道具を使って師匠のお兄様に連絡をすると、魔術陣が光ってすぐに木箱が現れた。これが師匠が頼んでいた荷物らしい。

 師匠のお兄様に少し挨拶させてもらった。通信の魔道具の鏡に師匠のお兄様が映っている。向こうには私の姿が映っているのだろう。師匠のお兄様は明るい茶色の髪に深緑の瞳の優しそうな雰囲気の人だった。優しげな雰囲気と髪や瞳の色彩も相まって師匠とは正反対の印象を受けた。

 今日は町に行く予定もあってゆっくり話せずまた今度……となった。

 


 師匠が館へ荷物を運んで、すぐに町へ出発することになった。

 今度は紙に描かれた魔術陣を師匠が地面に置いた。さっきの布の魔術陣より小さい。私たち3人が魔術陣の上に乗って少し余裕があるくらいの大きさだ。


「師匠、何で今度は紙の魔術陣なんですか?」

「布に描かれたものは何度でも利用できるが、紙に描かれたものは一度使ったら紙ごと消えるんだ」

「なるほど〜ここで転移の魔術陣を放り出して町に行かないために紙の魔術陣を使うんですね」


 私の答えに師匠は満足そうに「そういうことだ」と頷いた。


「……そうだ。町に行く前にこれを。これはメル。こっちはマリーのだ」


 そう言って師匠が黄色のような金色のような魔石のネックレスを差し出した。魔石にチェーンが通っているだけのシンプルなものだ。私のと言われたネックレスの魔石の方が、マリーベルの魔石よりも大きい。


「これは……?」

「結界の魔術陣を刻んだ魔石だ。攻撃から身を守ってくれる」

「えっもしかして昨日準備が必要って言ってたのこれですか!?」

「ああ。メルは狙われている可能性があるんだろう?」

「それは……」


 城から追い出すための建前だと思います、とは言えなかった。真剣に私の身を案じて、わざわざ魔石を準備してくれたのだ。

 殿下に命じられたからというのもあると思うけど、師匠ほどの魔術師であれば、そばに居れば護衛をするには十分だろう。それなのにここまでしてくれた。それは私のことを考えてしてくれたということで。マリーベル以外が私のことを思ってしてくれたというのが久しぶりで嬉しかった。


「ありがとう……ございます」


 私は心が温かくなり、喜びでニヤけた顔のまま師匠にお礼を伝えた。師匠は一瞬目を見張ると、すぐに視線を逸らした。少し顔が赤い気がしたけど、マリーベルが魔石をつけてくれると言ったため、師匠の様子はすぐに気にならなくなった。

 私もマリーベルにつけると言ったら、マリーベルが少し戸惑った。


「私までいただいてよろしいのですか?」

「ああ。お前に何かあればメルが落ち込むだろう」

「なるほど。姫様のためですね。そういうことでしたら、ありがたくいただきます」


 そう言ってさっさと自分でネックレスをつけてしまった。


「私がやりたかったのに……」

「姫様のお手を煩わせません」

「あ、そっか。師匠の方がよかったよね」

「「絶対いや」です」


 2人が同時に言った。


 えー……こんなに息ぴったりなのに?

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