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9話 魔術講義(土地の属性について)

普通のペンじゃ魔術陣って書けないの?私の疑問にすぐに師匠が答えをくれた。


 「魔術陣を描くために、魔力を細かく調整しなければならない。だから自分の属性に合った魔術ペンが必要なんだ……そうだな。そりゃ魔術ペンもないよな」


 後半は独り言のようで、師匠は呟くように言うと鞄から緑、赤、黄、白、黒の魔石を1つずつ取り出した。


「緑は木、赤は火、黄色は土、白は金、黒は水の魔石だ。マリーは木、土、金の魔石を1つずつ握って魔力を注いでみてくれ。どれが一番注ぎやすい?」


 そう言われたマリーベルは木の魔石から順番に1つずつゆっくり握っていった。


「……金の魔石が一番注ぎやすいです」

「じゃあマリーは一番、金の属性が強いんだな。他2つに比べて扱いやすいはずだから、金の魔術陣から描く方が感覚を掴みやすいかもしれない」


 強い属性とかあるんだと思っていた私に、師匠が水色の目を向ける。


「メルはどの属性が強いか知ってるか?」

「知りません」


 師匠の質問に首を横に振りながら答えた私に、師匠は5つの魔石に同じように魔力を注ぐように言った。言われた通り、1つずつ手にして魔力を注いでみる。全部魔力を注いだが、違いがよくわからず首を傾げる。


「師匠……全部同じような感じがします。……もしかしてそれもわからない劣等生ですか?」


 どうしよう。あり得る。ズーンと気持ちが沈む。

 

「いや、多分メルは全て同じくらいの強さなんだろう」


 よかった。劣等生じゃなくて安心した。少し考えていた師匠が「そうだな……不器用でなければ、メルは細工師に向いているかもしれない」と言った。

 

「細工師?金属や宝石を加工して装飾品を作る方たちですか?」

「メルの場合は金属や宝石ではなく、魔石だ」

「魔石?」


 師匠が説明してくれた内容をまとめると、属性にはそれぞれ弱点があるようだ。木は火に弱い、火は水に弱い……とか。そして魔石を原石から宝飾品に加工する時に、弱点になる属性の魔力を少しずつ注いで形を整えるそうだ。例えば木の魔石を削るには火の魔力を注ぎながら削る。その時に上級魔術師だと魔力を注ぎすぎて魔石を削りすぎたりして綺麗に加工するのが難しいらしい。

 でも下級貴族だと属性数が少ないため、1人が加工できる魔石の種類が1、2種類だが、私は全ての魔石が加工できるということだ。


 今までやったことないことは、とりあえず興味がある。


「やってみたいです!」


 私があまりにもワクワクしてるからか、師匠は苦笑しながら、今度準備しておくと言ってくれた。


「魔術ペンも作っておく。今日はこのまま属性の話をするか。土地に属性があることは知っているな?うちの国の属性は?」


 これは常識なので、私もマリーベルも当然知っている。マリーベルと顔を見合わせて、代表して私が答える。


「土と金です」

「そうだ。じゃあなぜうちが他国から狙われているか知っているか?」

「土も金も豊かな土地だからです。土の土地は季節に関係なく農作物がよく育ち、飢えることはありません。金の土地は金、銀、銅、鉄、宝石、魔石などがよく採れるため金銭的に豊かだからです」


 私の答えに師匠が満足そうに頷いた。


「そうだ。木の土地はともかく、火と水の土地は農作物が育ちにくい」


 火の土地は火山があって、土地は痩せて乾燥している。水の土地は、大きな湖のような土地で、街は水上の上にあり、殆ど陸地がない。この2つの属性の土地は、他の属性の土地から食糧の輸入をせざるを得ない。

 加えて人は強欲だ。金の土地は他の属性の土地から真っ先に狙われた。もうこの大陸には金の土地はうちの国以外、大国に取り込まれてしまった。

 うちは今でこそ師匠の結界で安全になったが、私が生まれる頃までは度々他国から攻め込まれて、国は疲弊していたらしい。


「今の平和はフレデリック様のおかげですよね」


 マリーベルがしみじみと呟いた。なんと生活に使う魔道具はここ10年くらいで発達したらしい。それまでは国を守ることや、攻撃に関する魔術の開発が優先されて、日常生活で魔術を使うなんて考えられなかったそうだ。

 私は物心ついた頃から生活で魔道具を使うことは当たり前だったので、驚きだ。


 本当に本当に師匠の功績すごくない……?


 それに今も1人で結界を張ってくれている。そんな彼に王族はなんて仕打ちをしているのだろう。私にできることは殆どないと思うけど、もし何かあれば師匠の力になろうと決意して椅子から立ち上がり、気持ちを言葉にする。


「師匠!私、師匠のすごさをわかっていませんでした。私が安全に快適に生活できるのは師匠のおかげです。ありがとうございます」


 一度言葉を切って師匠に向かって頭を下げる。感謝と謝罪を込めて。しばらくその体勢のままでいた。そしてゆっくりと頭を上げて、続きの言葉を口にする。


 「これだけ国に貢献してくださったのに、このような扱いをして大変申し訳ございません。私にできることがあれば、師匠の幸せのために微力ながら尽力いたします」


 師匠の水色の瞳をしっかりと見据える。師匠は呆然としていた。少し経って師匠が小さな声で答えた。


「……勿体無い……お言葉です」


 ……あれ?敬語に戻ってるよ?師匠。

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