ドラゴンメイドの咆哮、火炎。
感激を示す私の声が通路に響く!
給仕服を着た影は、私の大声に一瞬怯むような動きを見せて身体を止めた。
(正解か?それともただ驚いただけか?)
「まったく人間はおかしな生き物だ、こんなひらひらの格好がそんなに良いのか?
マスターを讃えられるのは悪い気はしないが、仕える者に必要なのは形・格好では無く、機能だと思うのだが、う~~~ん不可解」
影は首をかしげ、腕組みをして悩む感じ。
「いえいえ、違うんです!
メイド姿とは機能美と造形美、二つの美を兼ね備えられた素晴らしい物なのですわ!
良いですか>働くだけなら作業着を着ればよく、美しいだけならドレスやスーツがあります・・・が。 ですが!その二つを融合させる事は至難なのです!
機能と造形の両立!それは文明が生んだ、解く事の難しい超難問なのですわ!!
その答えの一つこそ・・・メイド服!そして可愛いメイドさんなのです!」
つまりメイドさんは素晴らしい!とても良い、と言う事なのです。
「お?・・おお??・・そうか?」
「そうなのです!」断言!
(すごく早口で話してまいました)ですが、私の想いは伝わったはず!
メイド服の素晴らしさ、可愛さ、美しさ、きっと解って貰えたはずですよね??!
「えっと、アルシア様?」「お姉ぇ様?」
「しっ!いまはワタクシに任せて下さいませ」
交渉では、最初は敵意が無い事を示す事が重要!
次ぎに、この交渉にメリットのある事を相手に理解してもらう事でしゅ。
相手の利益を先に伝え、その後に僅かな不利益[相手の大きな不利益は隠す]を示し、契約を結ぶ。
交渉の基本です。
(メイドさんが竜殺しなのか、竜の力を取り込んだのかは不明。
そんな相手を目の前にして、こちらは小声の相談とか絶対に怪しまれますから。
なのでここは、私の交渉術で戦闘を回避できれば。)
「もっとメイドさんの素晴らしさを語り続けたい所ですが、なにぶん私達は、その・・・今から出口に向かわなければなりません。
なので、申しわけございませんが、今日の所は先に行かせてはいただけ無いでしょうか」
押して参る、ってわけには行きません。
「ん~~ん、まぁいいか。
お前ら、敵ってわけでも無さそうだし・・・でも、う~~うん?そうだなぁ。
そこのお前!名前は?」
「私ですか?アルシア D ブラットリー、王国にある学園の生徒ですわ」
公爵家の者とかは言う必要は無いでしょう。
権力者の子息とか、普通に恨まれるか妬まれるか、敵視されるか・さらわれるかですから。
金持ちと権力者は面倒事に巻き込まれたくない、なので基本、社交界以外の場所では名前を言いふらしません。公爵とか子爵とか、一般の方達には『金持ちの貴族!』くらいの認識しかないのですから。
「D?・・お前、まさか!あの!?Dの血族なのか?!」
「えっと、、我が家の曾祖父が国王様から賜った家名[ダイアン]の頭文字です。
王国がブラットリー家の忠誠の証しとして与えて下さった、当時の国王様のお名前の一部を戴いたと聞かされておりますわ」
Dの血族、あのDとは別の物だと思いたい。
(この家に与えられたD、この[D]が、あの神様達の悪戯の一部で無ければ。
ですが・・・)
「そうか、よかった。
お前があのDなら、私は竜の本当の名に賭けて、お前と敵対しなければならなかったぞ」
良かった良かった。
(ん~~~私、ひょっとして結構ヤバイ家系の子?)
まさか・・・ねぇ?
ですが、今回はなんとか戦いは回避できた、みたいですよ。
「では私達、先に行かせて貰いますね」
「ああ、いいぞ。行ってヨシ!だ!」
不思議な動き[ヘルメット猫?のポーズ]で帰り道を指すメイドさん。
安全確認良し!って感じ。
(すごい笑顔の気配・・・笑顔でチラチラと見てますね、メイドさん)
私は突っ込みませんよ!
“あっ、と!ごめん言い忘れてた!”
「あ、マスターの声だ」
飛んで来た言霊に反応するメイドさん。
この声は、先ほどのダンジョンマスター?
“きみ、アルシア?私さ、メイドにお使いを頼んでるからダンジョンで・・”
「は・・ハッ・・ハクション!!!」
メイドさんのクシャミ!それはドラゴンの咆哮!
ダンジョンの通路が一瞬で赤く染まり、竜の吐く高熱の[ブレス]吐息が全てを焼き尽くす!!!
(え?!やばっ!)
EXゴットスキル![忍術、超!石畳み返し!]
視界が赤の閃光で染まる瞬間、アルシアは両手でダンジョンの床を叩き、石畳みを作る。
そして素早く、身を守る壁にします!
「二人ともこちらへ!早く!」反応が遅れた二人を壁に引き込んで、更に!!
[忍術 土遁!土かまくらの術]ダンジョンの石床にチャクラを通し、石でかまくらを作る。
ゴワッ!!!!
空気が燃え石壁の表面が溶け、沸騰した風が通路全ての水分を蒸発させ煙が上がった。
"・・・・・会っても戦わないでね、一応人型をしてるけど中身、ドラゴンだから”
炎が全てを燃やし尽くし、私達が土かまくらに隠れた直後、メイドさんと私達にダンジョンマスターの言霊が飛んで来きました。
(この声は、ダンジョンマスター??)遅いですよ!!
それに型をしたドラゴン?メイドさんですか???
私、ドラゴンとか神獣を人型[女の子]にして使役するの、良くないと思います。
ニンジャとドラゴン?
勇者とメイド?
二つの運命が、いま交差する!!!ような、そうで無いような話。