暴走する黄金スライム!
「あてて見なさい」
脱力して躱すフォルシオンは一差し指で、くぃっと自分の顔を指し余裕の笑みを浮かべ、逆に強化された黄金スライムがいきり立つ。
「!!きみ、ふざけてる?殺されたいの?」
ぐっぐぐっ・・・鞭のように身体をしならせた黄金スライム。
スライムの流動する体に力を溜めきり、直後、空気を裂くほどの速度で拳が疾る!
パァァンン!!空気を打ち抜く衝撃波、
大気の壁を叩き貫く音速の拳!
パシィィィ!!
フォルシオンの身体が真後ろに吹き飛び、高速で回転しながら空を舞う。
「フォルシオン!」
「死んだか?死んだよな?・・オレをなめやがったバカが!死にやがったぞ!!」
石床を激しく転がる少女を見下ろし、黄金スライムの顔が歪む。
「っ!」吹き飛んだフォルシオンと入れ替わるように走るレイピア!
疾走した速度と全身のバネを込めた最速の突き!
ん?「次に死ぬのはキミか?」
レイピアの鋭い先端を軽く摘まみ止める黄金スライム、ニヤ着いた顔が勝利を確信したように笑う。
「このすばらしい世界じゃ、スライムが雑魚だと勘違いしている人間は寿命が短いよ」
ドスッ!レイピアを止められ、動け無いキュアの身体に拳が刺さる。
「お止めなさい!」スライムの後頭部にフランベルジュを振り下ろす、その刃に青い魔力を加えた大岩をも断つ流水の斬撃!
「おっと」
キュアレイピアを盾にして斬撃を止めるスライム。
「な!?」
「ははっ、隙だらけだ」動きを止めたフランベルジュの腹を黄金の蹴りが打ち飛ばした。
うぐっぅッッ!
「ははははっ!!最強だ!スライムこそ最強の魔物!オレが新世界の神だ!」
頭を掴んでいたキュアレイピアをブン投げた黄金スライム、黄金のオーラが更に増す。
「なにが新世界の神ですか」スライム如きが!隙だらけはお前の方だ。
吹き飛ばされていたフォルシオンは不意伐ちでその心臓を貫く!
「ぐがっ!き、貴様!オレの拳をまともに受けて!」
「自分で後に跳んで速度を殺したんですよ」
音速の壁を打った音で気がつきませんでしたか?
たとえ拳が音速でも、拳と同じ方向に跳べば拳の威力は下がる。
さらに拳が肌にあたった瞬間、自分で身体を回転させて威力を逃がしてダメージは1/100。
「私達を倒したと思って油断しましたね、その隙を狙わせていただきました」
スライムの核、黄金スライムの心臓を1突きした宝剣をグリグリと動かし、心筋を切り刻む。
スライムの核が頭にあろうと心臓にあろうと、心臓ほど重要な臓器であればとりあえずは潰す。
コレだけで死ななくても、弱体化できれば。
「っ・・くははははは!!お前、お前こそ、いまオレを殺せたと思ったか?
油断したのはお前の方だ!
殴った時の手応えが変だと、気付かないオレだと思ったのか!!」
黄金のスライムが爆発した!
スライムが爆発するように全身を黄金の触手に変え、私を包む。
スライムがぬるぬると金の身体を光らせ、キュアフォルシオンを飲み込んだ。
「重っ!なにこの!」
数千のスライムがのし掛り、私の全身を舐め回す感覚。
(このぅっ!)
全身を舐めながら色々と消化するスライム。
「服を!この、くっ!私の下着の中に!」
スライムは卑怯でスケベ、スライム汚い、やっぱりスライムはきたない生き物ですわ!!
「拳を避けるお前を捕える為に、わざわざ下らない演技をしてやったんだ。
じわじわと体中なめ回し、服を溶かして全身を嬲ってから、ゆっくりと食ってやる」
「このぉ!スケベ!エッチスライム!」わざわざ私の服を溶かしながら!
「フォルシオンを放しなさい!」「お姉ぇ様!」
炎の突きと青の斬撃!
「無駄だ!」
二つの魔力は、黄金スライムの肌に触れると溶けて消えた。
「おれの[捕食]は絶対だ!どんな物でも捕えて喰らう!
お前の力も魔力も知識も!全て丸裸にして喰わせてもらう!!!」
ぬるぬるのスライムローションで私の身体を舐め回すスライム、私を溶かしるとか・・
「・・・多分そんなことだと思ってました」
[喰らう者]なんでも喰らい、なんでも取り込む、吐き出す事の出来ない暴食の化け物め。
予想道理です、なので先程の剣に少し仕掛けをさせていただきました。
神器[デバッグ&コード]魔力・生命力・命を使い、道具や魔物を上位の物に変化させ、迷宮を作り変え、物質を自由に変化させる神器。
剣に塗り込めた物は[毒]この異世界に存在しない猛毒[ダイオキシン]
生物の細胞を癌化させ、細胞の分裂を暴走させる[猛毒]。
スライムの集合体であり、多くのスライムを喰った黄金スライム。
心臓を潰しても再生するのは単一細胞のスライムとは異なる、多細胞生物の証拠。
「な?!」ボコボコと身体が膨れ上がる黄金スライム。
ヤツの身体の中で他のスライムが[毒だ!][毒が廻る!][逃げろ]と恐怖し混乱し、分離しようと暴れだす。
「貴方は元々、別々の意思を持つスライムですよね。
仲間を喰らって無理に融合したのなら、分離させるのは簡単です」
(黒い精〇でも細胞を癌化させる毒なら効くはず、そう思って作ってみましたが)
それも石油製品を燃やすだけで作れるほど製造が簡単、作らない方がおかしいです。
「くっ・・・身体が!スライム共が分離する!ちくしょぉぉぉ!!逃げるな!オレに従え!くそっ!
そこの女!オレを助けろ!オレに力を別けてくれ」
歪な分裂を始めた黄金スライムが「力を別けろ」と叫ぶ。
暴走状態のスライム、いまのヤツは何をするか・次ぎにどう動くか解らない。
暴れる狂犬に不用意に手を出て、無駄に手を噛まれるのはアホのする事。
(今は身を守り様子を見るのが定石、、、ですが。
これ以上強くなられると、少し厄介ですね)
追加の神器・EXゴッドスキルで勝てるでしょうけれど、、、殺すだけなら今のうちにやるべきか??
「・・・あぁ?テメエ、力を別けろだと?そいつはオレに言ってんのか?
スライム如きがオレに命令するとか、てめぇは何様のつもりだ??」
迷うフォルシオンより先に、プリティアックスが吠えた、恐い。
「オレは黄金スライム様だ!
お前の力が有れば!
お前の力でオレを強化すれば、世界中のスライムと合体融合すれば、最強のプラチナムスライムになれるんだ!力を!オレに力を寄こせ!!」
顔が膨らみ、目玉が飛び出し、腹が脹れ足が肥大化する黄金スライム。
黄金の化け物が暴走しながら、いま、本物の怪物に変ろうとしていた。
死んだふりからの不意打ち、急所を突いて毒をもる。
う~~ん勇者っぽい。