少女達のタケノコ狩り。
「あの・・そろそろよろしいでしょうか?」
少し離れた場所でマゴマゴしていた歩きタケノコの1体が、少し申しわけ無さそうにして声をかけてくる。優しい世界。
「お待ちいただき、ありがとうございます。こちらの準備はもう大丈夫ですわ」
ルージュはレイピアを構え、すでに臨戦態勢。
それにつられるように、アルシアも意識を切り替えるように彼らを見る。
数は6~8体、それらが4つの群れを作り最大で32体。
まだ彼らの背後にも順番待ちをしている可能性を考えると、32×3くらい。
「ルージュさん・・私だけまだ剣を、抜いていませんのに、、それにしてもこの数、まさに雨後の竹の子ですね」
「まったくです・・・」?なんでそんな形容詞が?
転移者達が残した文化や言葉がこの世界を浸蝕して、違和感がすごいです。
『べつに良いじゃ無いですか、ハンバーグが誕生日に出たって!
そう思いません?そんな私は現代知識に毒されているのでしょうか?』
ナレーさんが聞いてくる、まぁ別にいいんですけど。
「では参ります!」ルージュが剣を胸の前で握り、レイピアの切っ先を天に向ける。
FIRE![火炎]の魔法がルージュの前を赤く染め、歩きタケノコ達を炎の高熱が襲う。
味方の数より敵の数が多い場合、最初の範囲攻撃で数を敵の減らすのは戦闘の常識・教科書にも載っているセオリーです、が。
ばちっ!バチッ!ババチッ!!
炎の中で歩きタケノコの影が踊り、数体のタケノコが飛び跳ねた。
『おおっと?歩きタケコノは皮を脱いだ!』
ナレーさんの解説だ!
「えっ!・・私の魔法が、効いていませんの?!」
「そうなんです、歩きタケノコは炎の魔法に耐性があるんです。
他にも水・石・植物・雷・風・凍結・毒・麻痺にも強い耐性あるので、見た目と違い強敵なんです。
魔法は効かないと考えて下さい。
それと見ての通り、全身を竹の皮が何重にも被っていますので打撃・刺突・斬撃にも強いので」
『解説、[歩きタケノコ]植物モンスター・食用・格闘タイプ。
堅い皮で身を守り、初夏のタケコノはコリコリとして柔らかく、美味しい』
なるほどね・・って!
最後の方は味の解説になってますよナレーさん!
解説に少し関心する私。
その間も炎を飛び越えて来る歩きタケコノ、私はタケノコを蹴り飛ばして火の中に戻す。
「でも!でしたらどうすれば!もう周りを囲まれて!」
「そう恐がらないで、大丈夫です。私がいます。
それに先輩のエルデさんもいるのですから」
ね、そう言って顔を向けるとエルデさんもニッコリ、やっぱりね。
「アルシア様、そのお顔からサッすると、もしかしてご存じなのですか?」
「図書で一応の知識は」
[魔物学]魔物の生態や行動・使う魔法。
住処や特性を学ぶ学問では色々な魔物の弱点や、剥ぎ取る部位の中でも有用な部位を纏めた教本が存在する。
全てでは無いが魔物の弱点も、教本を読むだけで知る事ができるのです。
そして、その中には歩きタケノコの弱点も。
火が消えた瞬間を狙い、歩きタケノコの足をフォルシオンで「切る!」
『ノコ?!』
・・・小さく声を上げた歩きタケノコは石の床に転がり、、、、そして動かなくなった。
「歩きタケノコは足を切る。
そうすれば以外と簡単に倒せると本には書いていましたが、、、ここまで簡単に倒せるとは思いませんでした、ね」
「そうなんですよね、でもソレを知らずに戦うと先程の方達のように魔法を消費した上に、増援が現われてしまい逃げるしか無くなってしまうのです」
ブンッ!
エルデは持っていた長剣を体勢を低くして振り切り、歩きタケノコの短い足を切り離す。
『ノコッ!』
声を上げて転がる歩きタケノコ、彼らの攻撃は相手を囲んで叩くだけなので攻撃力は低い。
「では私も、秘剣・・・下段斬り[強]!」
スパァンー
しゃがみ強斬りで歩きタケノコを攻撃。
「ノコ?!」歩きタケノコが転がり、ただのタケノコに。
歩けないタケノコはただの竹の子だ。
下段斬り!下段斬り、下段切り!
しゃがみ強斬りからの~~~しゃがみ強斬り!
次々と転がる竹の子の山、貴様等は所詮、キノコの里には及ばないのだ!
竹皮の鎧で身を守れていた歩きタケノコは、まだ数の有利があると判断してか、私達に無防備に近づく。
「えっと、わたくしも!」
エイッ!細身剣・レイピアの素早い刃が歩きタケノコの足を右切った!
「ノ?・・・###!!!」
足を切られた歩きタケノコは片足で大地に立ち、自ら足を切った敵[レイピア]を睨むように怒気を上げた。
「あっ・・マズイ」かもしれない。
「あの、なにか様子がおかしいです、っ!」
ヒュンッ!
急いで残った足にレイピアで切りつけるが、迷宮の石床に根を張り始めたタケノコの足は硬く、
レイピアの刃をはじく!
歩きタケノコの進化が始まった、魔物が持つ未知の力[存在進化]だ。
タケノコを狩る時、私達もまた狩られる立場になり得るのです。
タケノコが進化すると・・・