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少女、抜刀す!

 洞窟の壁面の石壁は削られ、床も凹凸の少ない石通路だった。

 通路は数mごとに魔石照明の光りが灯っていて、まるで・・・


「遊技場のようですか?解ります、私も最初そう思いましたから」

 テーマパークのアトラクション、『勇者の皆さん!用意された武器と道具で出口を目指そう!』

 そんな声さえ聞こえそうな迷宮だった。


「特に1階層は、騎士の皆さんが常に巡回して下さっているので安心安全です。

 この階層では、迷宮の雰囲気と空気を新人の皆さんに感じて貰う為の場所なのです。

 なので残念ですが、魔物さんは殆ど出ていらっしゃいません」


 魔物がいないのではハリーの餌が手に入らない、なのでこの階層は駆け足で移動しましょう。


「ですがお気を付け下さい、私達は三回生としてチームを組んでいますから」


 迷宮でのルールでは、下級生は上級生を襲って所持品や金品を奪っても良い事になっています。

 逆に上級生が下級生と戦う場合、手加減して戦う事になっていた。

 

 迷宮に現われる学生と情報を共有したり、友好的な学生とは戦わず、襲ってくる生徒とは戦って良いルール。

 そうする事で一回生達は先輩達と実戦的な戦闘を経験する事が出来、さらに武器や道具・お金を受け取り、より装備を充実させることが出来るルールか。

 

(貴族の遊びだな)

 年下の子にわざと負けて武器を貢いだりお金をあげたり、下級貴族の子供には戦って勝ち、自分の地位と力を見せ付けて後々で自分の手下として従えるよう脅す。

 そんな貴族達の遊び。


 迷路1階を走り、かんぬきを開け、汚れた倉庫から小さな鍵を拾う。


“立ち向かう者は西に行け、勇気ある者は東に進め”

 壁に書かれた落書きを確認して、私達は東に。

 地下4階まで一気に降りる事が出来るエレベーターがあった。

 ちなみに西の通路を進むと、階層を守る守護者[スライム]と戦う事になるらしい。


『~~友好的な生徒が現われた~~~』

 薄暗闇に浮かぶ人間の影、彼ら彼女らは剣を収めゆっくりと近づいて来る。


(ブッ殺そう!肉だ!肉が向こうからやって来た!)ハリネズミが騒ぐ。


(お黙りなさい!友好的な生徒を倒したら性格が[悪]になってしまうでしょうが!)

 

 影の中で騒ぐ悪のハリネズミ、私を性格[悪]の黒キュアに変身させるつもりですか!


「あっあの、ボク達は戦う気はありません。

 仲間が魔物に襲われて、キミ達も気を付けて下さい、1階にはいないはずの魔物がこの先に・・」


 武器をしまったままの彼らは震えながら背後を指差し、私達をすり抜けながら走って行った。


 迷宮では自分達が遭遇した魔物を、他のチームに押し付けて逃げることは良くある。

 そして、魔物との戦闘でケガしたチームを背後から襲ってくる事も。


 私はそいつらを纏めて打っ潰すのが楽しいのだ。

 卑怯者には、なにをやっても許されますから。


 (なのでまずは、その魔物とやらの強さ、見させて貰いましょう!)


 彼らが走り抜け通路が開くとわさわさと動きながら近づく影。

 敵影は6体と4体と6体、尖ったボディと短い手足・・コイツは・・・


「歩きタケノコです!歩きタケノコが!」

 歩くタケノコ、そのままの魔物だ!


「まぁ!大量です、どうします?歩きタケノコは食糧にできます、

 それに会話で仲魔にする事もできますよ」


 正し、歩きタケノコを仲魔にすると、歩きキノコと遭遇したら強制戦闘になる。

 キノコとタケノコ、二つを同時に仲魔にする事は出来ない。


「新鮮なタケノコは、皮を向いて湯がく事で美味しく戴けます。

 手早くあく抜きをすませば、生のお刺身でも食べられますよ」

 美味しんぼで読みました。


「そう・・なんですね、私、知りませんでした」

 魔物食を嫌がるのかと思いましたが、逆に関心されてしまった。

 歩きタケノコは食用としては一般的なのでしょうか。


「では!キュアっと!」

「待って下さい!・・まだ先程のチームが近くにいるかも知れません、変身はまだ駄目です」


 キュアキュアの変身を見て良いのは、同じキュアキュアか・・パートナー動物。

 後は悪い子[敵]だけ。


[日曜日の朝にちゃんと起きて待っている画面の前のお友達は別として]

 なので今は変身はせずに戦いましょう。


「フォルシオン、抜刀!」

 手首に結んだ虹色のリボンを解くように先を掴み、

 強く引っ張ると私の右手にリボンが巻き付いて輝く!


 七色の光りの粒子が長く鋭い形を作り、私の右手に曲刀フォルシオンが握られていた。


「出来ました、多分出来るかなとは思いましたが、やっぱりです」


「・・・」あ然!ハリネズミが口を開けて驚いてます。


「なんで!?どうしてさ?!ちゃんとキュアキュアに変身してよ!」

「ハリネズミは喋らない、良いじゃ無いですか、ちゃんと戦うんですから」

 私の周りを飛び跳ねて文句を言わないで下さい、刺しますよ?


「えっと・・レイピア、抜刀」

 ルージュも手首のリボンを指先で摘まむ・・・『すかっ』

 彼女の指ではリボンは解けず、リボンはピタリと左手首を守っていた。


「あ・・あの・・わたくし・・・」

「レイピア、剣だけの実体化は普通は出来ないのだ。

 キミは早く変身して戦うのだ」


「ペリカン、嘘はいけません。こんなのは・・・少し良いですか」

 ルージュさんの左手を優しく掴み、ゆっくりと赤いリボンを指で触る。


 柔らかくて、少し艶っぽく濡れたように赤い、薔薇の花のようなリボンの結び目をゆっくりと撫でながら、中指・人さし指を静かに優しく花の中心に押し入れ、

 そして・・その奥にある物が私の指先に触れた。


(集中・・魔力の流れを微調整して・・)

「ルージュ、貴女も手をここに」

 入れて、二人の指先をゆっくりと動かす。


「っ、アアッッ!!」「そう、そこです」

 形を成した魔力の塊を引き抜くように、掴み・引っ張り・そして握る。


「あっああっ!!っ、はぁはぁはぁはぁ・・・出来ました、レイピア、抜刀しました」


・・・・・・・

「えっと、アルシア様・・その・・わたくしも抜刀のお手伝いをしていただけると・・その」

エルデさんの顔が赤い。


(耳の先まで赤く染まって、、、先輩として抜刀の手伝いを、私に頼むのが恥ずかしいのでしょうね)

ではお手伝いさせていただきましょう。

 

「・・」ルージュさんの目が恐い、なぜz?

 手伝ってはいけないのでしょうか、解りませんけれども。


「すみません、あの・・私、ルージュ・・レイピアの魔力属性を見て、理解していたので手伝えたのですので、その」

 エルデの魔力属性・魔力特性を知らないまま手を突っ込むのは後が恐い。

 微調節のつもりで属性に手を出すと、魔力の流れ・特性が変化する可能性もあるので、今回は少しもったいないですが、様子見させていただきます。


(少し・本当に少しだけですが、もったい無い気はします。

 けれど、直ぐに手を出すのは無節操という物ですよね)


 魔力・魔性に手を出す時は常に慎重に、適度な距離を保ちながらゆっくりと、ね♡


変身!抜刀!

少女は歩きタケノコを切る!そんな話し。

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