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食事の後は歯を磨こう。

 しみじみと思い出す勇者だった頃の記憶、それを考えると1食500円で美味しく食べられる現代日本の食生活。

(・・・そういえば日本の鳩とかカラスって、食べてもいい野鳥だったか?)


「アルシアさ・・ん、どうか致しましたの?名状し難い不思議なお顔ですけれど・・」

喜びと苦労と懐かしさ、憧憬とものの哀れをかき混ぜたような表情のアルシアを心配したルージュが私に気を使ってくれた。


「・・・名状し難い不思議な顔とはいったい・・・」


「そ、それよりもアルシアさん!このお料理の事なのですが、アルシアさんはお料理の技術をいったいどこで覚えたのですか」

 

 話しを変えようとしてくれているのでしょうね、凄く早口です。


「えっと・・・」

 1人暮らしで覚えた男飯、勇者だった頃に覚えたサバイバル技術・・・などとは言えないので「花嫁修行の一環でしょうか、料理の上手は家庭上手と言いますし」

 

「美味しいご飯を食べられるなら、お互い多少の欠点は目を瞑る事が出来るでしょう?」

 細かい事でイライラするより、『まっいいか』ってお家の方が気が休まるはず。

 ギスギスした空気の家庭なんか誰も特しませんから。


 一家団らん・夫婦仲良く・程々精神・お互い様、それが人と長く付き合う為には必要だと思いますから。


「アルシア様には欠点などありませんわ!それにっ・・ア、アルシア様の伴侶に相応しい方も欠点などあっては」

 私が許しませんわ、とか聞こえましたが、、、そこはスルーで。


「欠点の無い人間など居ません、それこそ・・・」神様であっても失敗はします、たぶん。


 人間みたいな欠陥動物、失敗作を世界に放り出して戦争・貧困・病気・盲信・詐称・差別・・・人間同士・親子・家族・同じ国の同じ民俗が怨み妬み殺し奪い合う、そんな生物に知性を与えた存在が完璧である筈が無いとおもいますが。


「欠点の無い、完璧な存在などあり得ないんです」

 自らが完璧だと勘違いした時点で、その存在は完璧では無くなる。そう思うのです。


「・・・でもそれは・・・私のような者からすれば・・・無い事と同じくらい小さいことで・・・」

「私はルージュの事、欠点があっても関係無いくらい好きですよ?

 欠点以上にその人の事を好きである気持ちが勝っていれば、それで良いじゃ無いですか」


「え!?」わっ私のことが!??

「さて、食後の歓談はここまでです。ハリー達がお腹を空かせて待ってますから、少し身体を温めたら狩りの時間ですよ」

「えっあのっ!もう一度、あの!」

「はいはい、お片付けしましょうね、食事は終わって食器をかたづけるまでがマナーですからね」

 食卓を散らかしたままで食事終了なんて、獣や野良犬と同じですから。

 

 ハリネズミの眼球がギラギラと充血して飢えた獣になってますし、そっちのペリカンも大口からヨダレが溢れ出しています。

 ヤツら、このまま放置していたら共食いするんじゃないかってくらいオーラ、飢えた獣のオーラ。


 こいつらが共食いし始めたら放置1択です。

 世界から邪悪な生物が1匹減る、それはとても良いこと。

(悪は悪同士、喰らい合って醜く滅びて下さい)私は止めませんから。


「ん?アルシア、ボクがこんなにお腹を減らしているのに、また何か邪悪な事を考えているよね?

アクッ・・マスコット動物は悪感情に敏感なんだから、隠したってって解るんだから!」


「ハイハイ、はらぺこで気が立っているのは解りますが、証拠も無く私を悪い人みたいに言わないで下さい、名誉毀損で訴えますよ?」

 全く、悪感情に反応するとか、どこの悪魔だ。


 ハリネズミの戯言を聞き流し、歯ブラシと歯磨き粉、マウスウォッシュを取り出す。


 こちらの世界に来た時に神様からもらった千の神器の一つ[宝具 “ネットショップ”]

 こちらの世界の通貨や貴金属・鉱石・宝石・物品を消費して、異世界[現代世界]の物品を購入出来る神器、それを使って手に入れた日用品の一つ。

 他にも色々ありますが紹介は後ほど。


 食後には歯を磨く、現代社会に染まってしまった私には、食後の歯磨きは無くせない習慣になっていた。

 それにこの世界、異世界で虫歯になんかになれば基本治療は[抜歯]

 歯を抜いたあと、お金のある人間は治癒魔法・[再生の奇跡]を掛けて歯を再生させる事が出来る。

 再生の奇跡は高位の治癒魔法で、本来は眼球や利き腕を欠損した時にのみ使う、現代医療でも不可能な本物の魔法・奇跡で当然治療費は高い。


(歯の欠損だけでも金貨数枚、日本の貨幣価値で30~40万くらい?)

 相場にもよるし、治療術士の経験年数や考え方にもよるけれど、最も安い場合[新人治療士の臨床実験]でも銀貨数枚は取られる。

 これは高級料理コース一食分くらいだ、その上、奥歯が犬歯になったり前歯の所に歪な臼歯が生えてきても文句は言えない。

 そんなことになるくらいなら普通は歯を磨くだろう、ですがこの異世界には歯ブラシという物が無い。

 歯を磨く為のブラシの換わりに、木の枝を噛んでブラシ状にして使う、そんなので虫歯を予防するなど無理!笑止千万なの!


『虫歯を舐めるな!』と私は言いたい。

 と言う訳で懸命に歯を磨く。


 歯磨き粉は虫歯予防と白い歯を保つ[日本医師会推薦]のちょっと高めのヤツ。

 歯を磨き水で口を濯いだ後はマウスウォッシュで口内除菌。

 今日も歯がピカピカで気持ち良い。


「あっ、あの・・・」

「自分で磨かないと練習になりませんよ、頑張って下さい」

 こちらの世界に無い歯ブラシを使い、歯を磨いていた私を見て「自分も使いたい」と言ってくれたルージュ、彼女に予備の歯ブラシを渡し、彼女にその使い方を教えたのですが。


・・・なぜか私に歯を磨いて欲しそうな顔でじっと見てくるんです。


 まぁ最初ですから、彼女を膝に寝かせて口を開いてコシコシして、舌の裏とか奥歯とかもごしごしして、口の中を全部、丁寧に優しくコシコシしましたが、それは赤ちゃんとか幼児に歯磨きを教えるようなもの、やましい事など何も無かったはずです。


 歯ブラシを口に入れた瞬間、彼女の身体は緊張で強張り、「大丈夫ですよ~」ってリラックスさせながら歯を1本1本丁寧に磨く私。


 その度に彼女・ルージュはくすぐったそうに身体をよじって足をモジモジしてました。

 前歯の後を擦ると彼女の可愛い顔が上を向き、下の前歯を磨くと口元から歯磨き粉の混じった白いヨダレが口元を垂れ、優しく口元を拭いてあげると恥ずかしそうに目をとろんとして顔を赤らめてましたが、それも子供に歯磨きを教えるようなもの、決して私に下心などありませでした。


「でも、まだ私、上手く出来なくて・・・」

「大丈夫です、私がみてますから。それでもし、磨き残しがあったら私がお手伝いしますから」

 

「はい!」目を輝かせて歯磨きを始めるルージュ、そう言えば私、産まれてからずっと女の子の歯磨きをジッと見た事がありません、、、

 なんでしょうこの感じ、生活感と言うか・・・家族感?妹の歯磨きを見ているような感覚。


(同調感覚?集団で同じ物を食べ、同じ行動を取っていると仲間意識が生まれるアレか?)

 猿や人間、集団行動を取る動物はこうやって仲間と他を認識してコロニー・群れ・家族を作って行くらしいですが。

 

 まぁ、『集団に溶け込み、仲間になりたければ周りのマネをしろ』って言うし。

 って事で今日も彼女・ルージュの頭を膝に乗せてコシコシと歯を磨き、悶えるルージュの顔に笑顔するアルシアこと私なのでした。



神様から与えられた1000の神器の一つ、ネットショップでお買い物。

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