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パリィ?いいえただの受け流しです。

「えっと・・・」

 切り払い・切り流し、これらの剣技は剣士にとっては基本の技。

 強い攻撃を剣で受けたら剣が痛む、刀身が曲がり刃こぼれし剣が使えなくなる、その為に普通の戦いでは戦士は盾を持って身を守る。


 だが日常・平時に敵が襲ってきたら?

 夜間、休憩中に魔物が襲ってきたら?

 盾を構えるヒマも無い場合、剣で打ち合い・剣で身を守る必要がある。


 その為に騎士や剣士は剣だけでも身を守る技を考え・そして技を磨いた。

 攻めの剣では無く、守りの剣。

 身を守る為の剣技、それが受け流しであり、切り払い。


「つまり・・パリィか!」

「・・ええ、まぁ、そうですね」

 全てパリィと呼ばれるのは心外ですが、まぁ正解でしょうか?


「戦う者はまず己の身を守る術を身に付けること、教練書に最初に書かれている言葉です」


 自分の身を守る事は仲間の身を守る事に繋がる。

 戦いの最中に仲間が倒れた場合、その仲間を守りながら戦う事の不利、仲間が死ぬ事で仲間を殺した敵が自分に向かって来る事で起る、数の不利。

 仲間が倒れる事で隊列が乱れ、戦術の効果が得られなる戦術の不利。


 戦場で強い敵とぶつかっても倒れない部隊、戦列を崩さない部隊、それこそが本当に強い部隊である。


 倒れず・退かず・崩れず・負けず、それこそが最強の兵士・兵隊。


「それに・・ダリウス様の剣は私を狙わず、私の剣のみを狙っていらしたので」

 私が先に、剣をはたき落とした事に対する意趣返しのつもりでしょうか?


「狙いが剣と解れば簡単に身を躱せますし、剣が狙いと解っていれば簡単に受け流せるんです」

 切っ先を軽く[いなす]だけの簡単な作業です。


「ははっ、バレていましたか」

 ダリウスは肩をすくめて驚く表情を作る。

 まだ余裕があるのか、それともハッタリで時間を稼ぎ、私の剣に対する対処法を考えているのでしょうか。


「ええ、バレバレです。ダリウス様の戦い方が剣だけでは無い事も含めて全部バレバレですわ」

 剣と蹴り、拳と頭突き、騎士とは違う、戦士の闘法でしょう?

 体当たり、柄での一撃、頭突き、なんでも使って戦う筋肉をしてますから。


「・・・参ったな、そこまで解っちまいましたか・・・」

 まだ余裕を持っていたダリウスの顔が変る。

 眼光が鋭く真剣な表情、声も低く男の声


 (ここから本番か?)


「どうしましょう?許可をいただけるなら、これ以上は無意味ですが」

 たぶんやれば勝てる、だが講師のプライドをへし折るのが目的では無いのですし。


「そうですね。。。

 ブラットリーお嬢様には既にバレてると思いますが、オレがお嬢様に許可を出す訳にはいかないんですよ。

 なもんでお嬢様、これからもうちっとだけ、本気を出しますからケガをする前に諦めて貰いませんか。

 もう本気の本気ってやつ。

 マジの真剣勝負になるんで、、、こっから先、本気の試合をお望みでしたら防具を着けて貰いますが、良いですか」


 真剣な表情で切っ先を石畳みに突き立て、目線を私に向けるダリウス。

 私、練習用の防具とか持ってません。


「困りました、、、私、防具の用意は」

「。!、だめですよお嬢様、試合前には防具の準備をして貰わないと」

 口元が上がるダリウス、そんな嬉しそうな顔をしなくも。


「じゃ、防具の用意をしていらっしゃらないなら、残念ですが今日はここまでですね。

 それじゃ、また日を改めてって事で!」シュバっ!


 素早く背中を向けて剣を片付け、全速力の走りで修練場から走り去って行った。

 歴戦の戦士は逃げ足が速い、生き残る為に鍛えた逃げ足は脱兎のよう。


「逃げられてしまいましたわ」

 それが戦士の強かさ、戦い続ける必須要件。

 認めましょう、彼は本物の一流の戦士です、ですけれど。。。


「・・そのよう、、ですねお姉ぇ様、許可印、どうしましょう」

 本当にどうしましょう。


 いまから追いかけて、掴まえて、男を無理矢理。

 って言うのは駄目でしょうし、本物のアルシアらしくない行動は避けるべき。


 ですがこのまま迷宮に入る許可が得られないと、飢えた獣が何をするか。

 巨大化して暴れ出す事も考えられます。


(う~~ん、私達に許可が降りないなら、既に許可を持っている方に同行させて頂く。

 それしかないでしょうけれど)

 

「そうですね、今日の所は日を改めるしか無さそうですね。

 他に許可を出して戴ける方を探しつつ、すでに許可をお持ちの方に協力して貰う事も考え無いと。

ですね」


「ハイ!、お姉ぇ様の技はダリウス様にも解っていただけたはず。

 ダリウス様がお認めになったお姉ぇ様になら、他の講師の方に許可を出して戴く事もできますでしょうから、今日は、お姉ぇ様・・その・・一緒に」


「ルージュ様、シャワーで汗を流す前に少し身体を動かしませんか?」

「え!?、ハイ!」

 ルージュから邪念を感じますので、少し手合わせして血抜きして差し上げましょう。


・・・・・・・・・・


 ルージュの邪心が真っ白に燃え尽きた頃、汗だくになった彼女と私は訓練場の端に用意されたシャワールームで汗を流す。

 シエラさんの持って来て戴いたタオルで身体を拭き、着替えを済ませ。


(私はメイドさんが居なければ、着替えもシャワーも出来ないんですね・・・)


 さらに、胸とか腰の所に感じる視線には目を瞑る。

 私はまだ彼女達に疑われているのかも知れない。


 鍛錬場に隣接されたシャワー室を出ると、私達以外の生徒達の鍛錬する姿が見えた。

 男子生徒の剣、それを指導する講師の声、別の場所では女の子達が剣の型を繰り返し練習している。


(・・・オレもガキの頃、カカシ相手に木の棒を振り回していたっけ)


 懐かしいな、それから直ぐに招集されて魔物相手に実戦と殺し合いの日々。

 殺意と悪意と敵意、仲間とされるヤツらからの裏切りと妬みと嫉妬とドロドロした憤怒の世界。

 本当に現実は糞、敵も味方も近づくヤツらは全部クソだった。


「お姉ぇ様!お待たせしました?」

「いえ、私も今・・少し皆さんの鍛錬をみていた所です」

 あの頃とは違う、多分この風景をみる為に私は戦っていたんだと思うと、

 少し頭を真っ白に、流れる雲のような何も考える事の無い情風が浮かぶ。


「お姉ぇ様?」心配そうな顔。

「少し、ほんの少しだけ、懐かしい、と思いました」

 空を見上げると白い雲が流れ、あの頃には見えなかった青空。


「は~~~」

(大空を見上げて吐息を出すなんてね。

 向こうで転生して平和だった頃、普通のガキだった時以来なので少し感傷的になっただけだから)


「そっ、そうなのですね、、、お姉ぇ様のお顔が少し寂しそうに見えましたので、、、その、お姉ぇ様には私がいますから、私がずっとそばにいますから!」


ふふっ「そう心配しなくても大丈夫、私は良い友人がそばにいてくれるので寂しさなんて有りませんから。

 では、とりあえず、許可を戴けそうな方を見つけてお願いしてみましょうか」

 これだけ講師の方がいるんです、誰かに頼めば2人くらいは許可をくれるでしょう。


身を守る技、戦いに負けても逃げ切る足、戦士が最初に学び必要とされる物なのです。

重要なのは、どんな状況でも生き残る事、格好悪くても生きてりゃ勝ちってね。

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