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城下町、そして。

 巨人に立てさせたような巨大で真っ白な柱、単純にすごいなと思った。

 私は分厚い壁のような城門を見上げ、古代建築の思いもよらない技法を想像する。

 絶賛!現実逃避中の私、アルシアは私が生きていた時代の面影を探す。

 

「ブラットリー公爵様、こちらです」

 元勇者は護衛の傭兵達に護られ、城の衛兵達の案内で城門を抜けた。


(私はもう公爵家の人間では無いのですが・・・)

 なんであんなに巨大な門を作ってるんでしょうね、本当に必要なのでしょうか。


 嫌な事を忘れるよう別の事を考える私、

 10mほどの高さの門、さらにその上は20?30mほどもある高さの城壁。

 籠城するには少し低い壁ですが、外から敵が侵入するには少し厄介、と。


 15m程の城壁のトンネルを抜けた先で、街の光りが馬車に眩しく差し込むとようやく馬車の中の空気が変った。


「到着!無事入る事ができましたよ、お嬢様がた」

 馬車の中で私達を守っていた傭兵のお姉さんが微笑む。


 安全と安心、城下の街中で襲って来る野盗はまずいない。

 城門での高い関税と身分の照合、鍛えられた衛兵達の監視を抜けて入り込める賊はいない。

 万一入り込んだとしても街の刑吏に捕まれば、厳しい罰が待っている。

 さらに入り込んだ賊が逃げようとしても、こんどは街を守る城門が賊を逃がさない檻に変る。

 余程の者で無い限り、凶賊が襲って来る事は無い。


(貴族に雇われた一流の暗殺者とかなら別ですが、この安定した時代・この王城の街でそんなバカをする貴族はいないでしょう・・・一応、気配探知を)


 周囲の護衛が油断する中、一人身体の動きを停止させ自然に襲撃に備えるアルシア。

 老執事の目には彼女はただ目を瞑り、肩に頭を乗せるルージュと仲良く座っているように見えた。


(敵意の反応は無し、ですね)

 街の空気、人々の声、商人達の店構え、裏路地の胡散臭さを除けば平和そのもの。

 活気があって良い街です、あの国王の子供がこんな街を、とは思いますが。


 国中から集められたスキル持ちの子供を魔族との戦場に送りこみ、生き残った子供を勇者認定し、さらに激戦地に送って戦わせていた国王。


 数度にかけて国中から集められた子供は2~3千人、異世界から召還された人間も含めたら5~6千人以上、そして生き残った子供は魔神殺しの勇飛を含めても3~6人と聞いている。

 

 勇者どうしでもチートスキルや神器の奪い合い、支える貴族や王族の権力争いで殺し合う。

 勇者同士で殺し合う中、魔王や魔族とも戦い、殺される勇者。

 その中で生き残ったのは、心も能力もぶっ壊れた本物の化け物ばかり。


(何人かは元の世界に返る為に神域に向かった。とか、魔術・魔法の根源を求め地底深くにある神の迷宮に挑んで帰って来なくなったとルージュさんに聞きました) 

 自分の中にあるアルシアの記憶、アルシアの知識にはそう有りました。


 勇者として生きていた時代、事実何度もユウヒ達のチームも襲われ、そして撃退して来た記憶がある。


(魔王殺しは勇者殺し、本当に嫌な時代だった)

 いつ他の勇者から背中を狙われるかも知れない、そんな状態のオレ達を笑う魔王もいたっけ。


 本当にぎりぎりの戦場を生き延びて、手に入れた平和で平穏なあっちの世界での生活もけっこうギリギリ、どこの世界も人間が生きるには厳しい世界。


 成人し、社会出て解る、搾取の社会。


 弱い者・物を知らない者・立場の低い者は搾取の対象。

 こっちの世界は殺し合い、あっちの世界は死なない程度に労力と寿命を奪われる。

 ストレスと栄養不足・寝不足で若い身体はもうボロボロ、そんな正しく平和な世界。


 異世界と現代の世界、二つの世界で育ち、見てきた元勇者は疲弊した笑顔でルージュの手を握る。

(彼女を守れるなら、ね・・・)


 魔王を殺す使命はもう無い、今度は平和な世界で誰かを守れるように。。。


「お嬢様、着きました」馬車が停止し、しばらくして馬車の扉が開かれた。


 老執事の手を取ってまずは客のアルシアが先に降り、主人であるルージュがその後に続く。

 長時間馬車に揺らされ、グラグラと揺れた平衡感覚は足が大地に立つ事で正常に戻り、馬車の密室でストレスを受けていた肺に外の空気が入り込む。


・・・(・・?)

 馬車を降りた私を見る複数の視線、オルフェルク侯爵のメイドさん達の視線ですが、、、感涙の表情で私を見て口元を押えて。


「生きて・・また生きてお嬢様にお合いできるとは、、、本当に良かった」

「お怪我は!アルシア様!身体に痛む所はございませんか!もう大丈夫です!何も心配ございません!」

「お嬢様・・お嬢様・・・」


(?誰??・・・・)どなたでしょう???

 アルシアの記憶を探り、彼女達の事を思い出す。


 眼鏡のメイド長、メロー

 褐色メイド キャス

 涙顔で震えてるメイド ホリーと涙と笑顔のクシャクシャな顔で彼女の肩を抱いて笑う シエラ。


 アルシアが公爵家にいた頃、お付きだったメイドさん達だった。


「オルフェルク候・息女ルージュ様、お嬢様の保護ありがとうございました。正式な感謝とご挨拶は後ほど致します。

・・・アルシアお嬢様、お体のご無事お喜び致します。

 お嬢様、こちらをお受け取り下さい。」

 ブラットリー公爵の押印で封がされてある手紙を差し出すメロー、彼女はアルシアが屋敷を追放された事を知っているはずですが。


「エバンス様からアルシア様への手紙です。

 我々もその内容も既に聞かされております・・・アルシア様、本当に、、本当にご無事で!

 メローは心配で心配で・・なぜ自分がお屋敷にいなかったのか、、なぜお守りできなかったのかと・・・本当に本当に心配で心配で!!!」

 両腕で強く抱き締められるアルシア、彼女の記憶では厳しくも優しい姉のような存在だった。


「メイド長、感動の再会なのは解るけど、まずはする事があるだろ?

 アルシア様は私が預かるから。

 後ほど、とかじゃなくてメイド長は侯爵様のお嬢様とそのお付きの方々に、説明と公爵様からの感謝を伝えないと」

 褐色メイドさんに腕を取られ、メローさんから引き剥がされるアルシア、料理メイドのキャスさんは確か・・・猪殺し、野性の猪を短剣1本で倒し捌く猛者、その腕は太くて堅かった。


「じゃ、アタシ等は馬車旅で疲れるお嬢を風呂に入れてるから後はよろしく!」


(ん?)


 ズルズルと引き摺られながら女子寮に連れて行かれるアルシア、そのうしろについて来るホリーさんとシエラ、とりあえず家無き子は回避出来たようですが、それ以上に前途多難な毎日がまっていそうな予感!

 

 ああっでも、でも、ですが私も、あの国で風呂好き民俗の洗礼を受けた身、一ヶ月のあいだ小川で汗を流すしか出来なかった身体が温かなお風呂に心を浮かせない訳がありません!


 全身を温かな御湯にひたして『は~~~』って、リラックスしたい!

・・・そう言えばこの国のお風呂って、蒸し風呂?それともサウナで垢すりなのでしょうか?

 まぁ良いですよね、全身を温めて『ほげ~~~』っていたるのも良いものですから。

 


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