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宿敵!

勇者がこの世の現れる時、魔王もまた復活する!

のかもしれない。

「と言う事があったのです」

 敗走した経緯を髪に木葉を着けて話す私、その正面では私の話を訝しむような顔のハリネズミが眉を顰めて腕を組んでいます。


「・・・それ、絶対嘘でしょ!なんで兜虫とキュアキュアが相撲で戦うのさ!

 森の王?巨大兜虫?ムシキングα?そんな事適当に言っても騙されないんだからね!」

 そうですよね、なんで私、虫と相撲で戦ってたのでしょう。。。

 日本人の性質、その場の空気に流されてしまったのでしょうか。

 とは言えそれを素直に言っても納得していただけないでしょうし・・・


「私!ムシキングαなんて言ってません!デラックス ムシキングEXです!」

 ここは言葉の揚げ足取りで反論します。


(自分がやられたら殴りたいほどむかつく反論方法ですが、それはそれ、これはこれです)

 あとムシキングαは、どこか製薬の殺虫剤の名前です。

 商標登録無断使用で訴えらても知りませんからね。


「そうですわ、キュアフォルシオンお姉様が嘘などおっしゃるはずがありませんわ!

 きっと、もっと深い理由があるのです。

 私達に言えないような深い何かが、そうですわよね?」

 髪の毛に絡まった木葉をとっていただけるのはありがたいですが、ルージュ様は私と同じ年齢だったはず。


「深い意味?~~~そんなの本当にあるの~~~???」

「あると思えはあるのかも知れませんし、ハリーが無いと思うのであれば無いのかもしれません」

 深い意味がありそうな言葉で誤魔化すアリシア、意味深な言葉には基本的に深い意味は無い。


「??、確かにキミのフォルシオンで魔物を殺したらその魔物肉はボクが食べる契約、ボク達あく・・・アニマルは契約違反があれば直ぐに解るんだ。

 だからフォルシオンを使って戦った訳じゃないんだろうけど・・・」


「あく?」

「アニマルだよアニマル!

 魔法の国、マジカルランドのファンシーアニマル!キュアキュアのパートナーの事だよ!」

 ときどき口を滑らせる魔界の悪魔、私こんなのと契約して本当に大丈夫なの?


「本当はキミ、ボクに隠れて美味しい物を食べてたんじゃないの?

知ってるんだよ、ボクはキミが隠している事をさ」

 怪しむように眼光を光らせる謎のハリネズミ、なんだぁ?てめえ?


「・・・何を知ってる?」

 神様から与えられた1000のEXGODスキルの一つ、[異世界ネットショップ]の事か?


 それとも私が元勇者で、この少女の身体に憑依してるって事か?それとも・・・

 素早くフォルシオンに手を伸ばし、一足一手の間合に詰める。

(知られたらマズイ情報、仕方がないがここで始末を・・・)


「ハリー、もう1度聞く、なにを知ってる?」下手に喋られる前に。Kill!

「さぁね、ボクはまじ・・マジカルランドの神様に誓ってキミの秘密は喋らない、。

だって『ボク達はパートナーなんだから』・ね?」


 くっ!・・・コイツ!なにがボク達はパートナーだ。

[脅迫の基本]自分が握ってる秘密を喋らない事で、相手に対し有利に立つ、心理戦を仕掛けて来ましたか。

 

(ここで私が切りつけてハリネズミを殺した場合、私の隠している秘密が相棒を殺すほどの重要性を持っていると自白するような物)

 ここで殺すべきか・・・悩みが剣を鈍らせる。


 迷った切っ先で剣を振り、コイツを逃がせば事態はより悪い方向に向く可能性が高い。


「・・ふぅ、乙女の秘密は誰にも喋らない事です、下手なお喋りは身を滅ぼしますよ?」

 ここは軽く流しておくことで、『お前の持つ情報は、私には脅しの材料にならない』

と示唆しておく方が良策。


?!・・・アレは!

 上空を高速で飛ぶ黒い影、その強大な力と気配を私は知っていた。


・・・・・・・・・・・・・・


 冷たく暗い静寂の世界にソレは居た。

 人の世界を滅ぼし、魔物と獣、魔人と悪魔の世界に作り変える為に生まれた存在。

 星を埋め尽くした人間がその文明を暴走させ、自然を破壊し星を穢す物に堕ちた時、星と世界が産み出すと言われる存在[魔王]

 

 魔王は誕生したその瞬間からあらゆる魔物・魔族を従えさせ、君臨する[王]であった。


 魔王に勝てる魔物はいない、魔王に逆らえる魔族はいない[最強の魔]それが魔王。

 だが魔王は敗れた、その対となり生まれ出る存在[勇者]によって。


 この世界に現われた勇者は自称[勇者]・職業[勇者]・転生者・神造兵器[勇者]その他を含めると、その数は約数千人。


 異世界の知識と神の与えた武器、そして権能の一部であるスキルを与えられ勇者として名乗る勇者共。

 無数に現われる勇者に対し、魔王もまた宇宙の果て・星の中心・異世界・地獄・冥府・闇の世界からこの世界に現われる事になった。


 その中の1体、アルシアの中の人[勇飛]に倒された魔王は、自分の手に残る肉の感触を思い出していた。

(やつの心臓をつぶした確かな感覚がある、やったか?)


 勇者に倒され闇を彷徨っていた意識は、突如爆発するように輝く勇者の気配に目覚め、最後に残った力、魔王の執念とも言える魔力を使い勇者の心臓を握り潰した。

 その感触が残る手を何度も握り、勝利を・勇者の死を思い出していた。


 燃やしても首を刎ねても身体をバラバラにしても蘇る勇者、蘇る度に強く力を付けて魔王の前に何度でも現われる化け物、それが勇者だ。


(ヤツがたとえ何度蘇ろうと、何度でも殺してやる。

 ヤツに出来て魔王である自分に出来ない事など・・・)

 

 魔王は人類を滅ぼす存在、そして勇者は魔王を滅ぼす存在。

 人類が存在する限り魔王は現われ、魔王が現われる度に勇者が生まれる。


(・・・魔王は勇者に対する存在では無い・・・か)誰かが言った記憶。

 魔王は勇者など無視し、人類だけを攻撃し滅ぼすべきだったのだろう。


 魔王と勇者は相容れない存在、自分と同じ世界に勇者が存在するなど虫唾が走る、それが魔王の生分・宿業なのだ。


(いかんな、考える時間が有り過ぎた)


 虚無の闇の中、無限とも思える時間の中で目覚めた魔王は、確かな自我を持ち虚空を漂う存在になっていた。


(我はこのまま無限の闇に飲まれ消え、そしてまた人類と敵対する新たな魔王が生まれ、私の魔の力が次の魔王の糧になる、、、それが闇に生まれた魔王の宿命なのだ)


 魔王は闇に沈みながら自分の出生を理解し、その手に最後に残った感触を思い出していた。


(何度でも復活して現われる勇者、魔王である[私]も最後の最後でヤツの心臓を・・[私]?)

 

 消えゆく自我の中で[私]は何かを思い出し、そして自分の中に揺らぎ燃える何かに気付く。

(あの者は何度もしつこく復活して私に挑んできたが、魔王である[私]は1度倒されただけで死を受け入れている、、、)


ははははは!!!

「これでは!これでは魔王が勇者に勝てない訳だ、たった1度の死で敗北を認め死を受け入れ滅るなど、これが魔王か!魔王の姿か!」

 

 手の平に残る熱、爪と指に残る勇者の心臓の鼓動。

 ヤツはまだ生きている、心臓を潰したくらいで死ぬような勇者では無い。

 

 もう一度だ、もう一度[私]はヤツの前に立ちヤツを殺す。

 勇者が何度でも復活するなら、魔王である[私]が復活出来ないなど!


 最後の力で勇者の心臓を抉り、そして潰した魔王の身体を闇が覆い包み込む。

 

「無駄だ!私は魔王!闇の力では私は滅ぼせん!」

 死の世界で目を覚ました魔王は闇を取り込み、そして魔王の姿を取り戻す。


「出口はどこだ・・・?」

 魔王の目は広がる暗黒空間を見据え、そして遥か向こうの闇に消えゆく力を見つけ出す。


「ヤツも魔王か?死にかけているのか、」

 死んで直ぐの魔王なら、力を与えてやれば復活できる可能性もある。


「その力を逆に利用してオレが復活してやるぞ!」

 待っていろ私の宿敵!私はもう一度お前の前に立つ!


「お前を殺すのは私の役目だ!

 私がまた何度でもお前を殺してやるんだからね!」


 勇者の心臓を潰した感触が残る手を左手で包み、自分の心臓の近くに押し当てる。

 心臓の鼓動が熱を持ち、魔王に確かな力を与えてくる。

「待っていろ勇者!」声を出す度に力が涌く。


「勇者め、ヤツの驚く顔が目に浮かぶぞ!ヤツの顔が引きつり絶望する顔がな!」

 はぁはぁはぁはぁ・・・

「ハァ!!!」

 魔王は死に行く魔王に向かい飛んだ。  

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