じゃない方
『ガチャ』
故大島大五郎の部屋へと入る。
この部屋は副葬品として焼いたもの以外は、
ほぼ当時のままだ。
かのベッドでユウキが寝ている。
「ふふ、よく寝てる」
「ん⋯」
「あ、ごめん、起こしちゃったね」
「⋯⋯⋯シルファンじゃない」
「⋯」
「むにゃ」
ユウキはそう言い残して眠りについた。
き、効いた⋯。
『メグミちゃんだー!』って喜ばれるよりも先に、
他の人間の名前を出して落胆された⋯。
た、立ち直れない⋯。
「ふぅ」
皆は寝ると言ったが私は寝ない。
一人の時間を最大限活用し本を読む時間とする。
本を読むのは楽しい、
そして何より情報収集にもなる。
知は力、
その法則はこの世界でも変わらないだろう。
「ぅ⋯」
「?」
何かうめき声のようなものが聞こえて、
声のする方を振り向いたが、誰もいなかった。
「うううう」
「わっ!?」
メグミがソファーの
背もたれの影から這い出てきた。
「どどどどうしたんだい?」
「うぅ⋯⋯うぅ⋯」
涙声のような嗚咽のような
よく分からない声を出して、
ソファーにもたれかかっている。
「み、水飲むかい?」
自分用に用意した水のコップを手渡す。
「ゴクッゴクップハー⋯おかわり」
「えー⋯自分で「おかわり!」
「はい」
全く一体どうしたというんだ。
今までこういう泣き崩れる女を
沢山見てきたから分かる、
質問をしてもまず
まともに答えが返って来ないので、
泣き終わるまで待つしかないのだ。
「ゆうぎぐんがっ⋯うっうっ⋯
わだじのごど⋯うっうっ」
「うんうん」
そしてこのいたたまれない時間が、かなり苦手だ。
「どうおもう?」
「え?」
「アデーラざんはどうおもう!?」
「え〜」
出た、何を言っているかまだ
聞き取れていないのに、投げかけられる質問。
こういう時は毎度、
走馬灯のように今までの人生を振り返って
経験則から答えなきゃいけなくなる。
「確かに酷いねえ」
「やっばりぞう思いまずよね!!」
どうやら当たったみたいだ。
「それは災難だったねえ」との二択だったが、
外していたらどうなっていたことやら。
「ミルグもあげでおむづも替えでぎだのに、
あんまりだよぉ〜」
「うんうん⋯」
腹が軋んでくる。
早く泣き終わってほしい。
「ヒック⋯ウグッ⋯」
そろそろ泣き終わったか?。
「⋯」
ゆっくりと顔を覗き込む。
「スゥ⋯スヤァ⋯」
寝てる⋯だと。
これほど戦慄させておいてこの態度、
大物が過ぎる。
まだ朝は冷え込む、面倒だが寝室に運ばなければ。
「よっ⋯と」
戦線から退いて暫く鍛えてはいなかったが、
女一人運ぶのはまだ軽いみたいだ。
さてメグミの寝室はどこだったか。




