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今宵は、お姫様ベッドの上で

「ねぇ、どうして僕のこと好きになったの?」



いつも彼女が答えをはぐらかす質問。



僕たちが出会って恋を始めてから、5年の月日が経った。



今日こそは、本当に答えてもらえるかもしれない。だって今日は、いつもの僕らのベッドの上じゃない。彼女が憧れて夢見てた、天蓋付きのいわゆる『お姫様ベッド』の上。僕たちは、人生のピークともよく言われる幸せに包まれている。今日は、僕たちの新婚旅行先のバリ島のベッドの上。



ただ存在するだけ、ただ学内を歩くだけで「綺麗な人」と呼ばれていた彼女は、照れ笑いする時が一番可愛い。その笑顔に数メートル先から恋に落ちた僕は、当時どんな手を使ってでもまず彼女に存在を知ってもらう必要があった。数々の努力の結果、ここまでたどり着けた僕は本当に幸せものだ。



彼女は、時おり可愛いギャップで何度も僕を改めて夢中にさせた。ブラックで飲みそうなコーヒーは、甘いカフェラテしか飲めなかった。新婚旅行だって、ハワイのショッピングモールでブランド品でも買うイメージなのに、彼女が照れ笑いしながら要望したのは、このお姫様ベッド。そんなの可愛すぎる。僕は喜んで行き先をバリに決めて、彼女の夢をひとつ叶えた。



こんなにいいタイミング、この先そうそうないだろう。僕は期待に満ちた目で、腕まくらしてあげている眠そうな彼女に問いかける。



「ねぇ、どうして僕のこと好きになったの?」


「だから、それはヒミツだってば」



そう答えて、子どもをなだめるような優しいキスを一つくれて、疲れた彼女は眠りについてしまった。くそぅ、寝顔も可愛いんだよ、独り占めさせてくれてありがとうなんだよ。結局こんなに絶好の機会も逃してしまった僕は、ダメもとで彼女の寝顔にも小声で訊ねてみる。



「ねぇ、どうして僕のこと好きになったの?」

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