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蝴蝶の標本  作者: 夢の湖畔の海月
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螺旋状の悪夢

 夢は終わり無い螺旋状の階段だ


 楽しかった天国の最上階からいつの間にか転がり落ちていく


 行き先は起きねば悪夢、起きれば現実。


 この世界は愚鈍な者や夢と知りつつ操れる強者以外は拒んで地獄へ落とすのだ。

 ふわふわとうつろな世界を漂い歩く


 痛いところなどどこにもなくて、触れば感触も鈍くある。


 しかし癇癪を起こせばこの未完成な世界は崩壊しだす。


 先ほどまで好きな方向に滑走出来た生首の自分は好きな方になどどこにも行けず、瞬く間のうちに場所も体も違って安定出来ずに来た他の世界で、癇癪のまま自傷したところで求めた痛みには到底鈍すぎた。


 何をしても釈然もすっきりもしないことが自分へのいら立ちとなって帰ってくる。


 今まで背で甘えてきた弟だと思っていた者は、昆虫のように皮と骨しかないような細くて長い手脚の顔のないのっぺらぼうだった事に、今までのリラックスした気持ちも吹っ飛び唐突に恐怖する。


 世界が代わるごとに先ほどまで起きてなかったはずの記憶を鮮明に持ち、先ほどまでいたはずの他の世界での出来事の記憶が違和感になる。


 おかしいのに、そう思っているのに、何がおかしいのかこの心理状態デジャヴは感じても認識は出来なかちた。


 いや、今感じてるデジャヴですら、この世界が急造したまがい物かもしれない。


 先ほどまでなかった記憶は何故か思い出した確かな記憶として認識され、異常な気がする状態も通常だったと上書きされていく。


 混乱し上手く動け無い体は、よくわからない化け物に殺されそうになって世界はまた変わりだした。


 次は目を開けるという動作が開幕必要で、先ほどまで目まぐるしく動いていた脳は急にかなりかすみがかって愚鈍になる。


 見慣れない襖と薄暗い部屋に状況が解らなすぎて混乱した。


 先ほどまで羽のように軽かったはずなのに、起き上がるのにかなり力を使う重い体を起こしながら、今の状況を認識しようとする。


 混乱する頭は先ほどまでどんなに世界が変わってもすぐに記憶を呼び起こして回転していた筈なのに、買い換え前のパソコンの動作ぐらい遅い。


 自分は何者で、仕事は何をしていて、今日は仕事の日ではないのか?


 焦る思考は答えを持たないかのように動きは鈍くて何もわからなかった。

 

 周りを見渡しながら今までの世界の身分を一つ一つ思い出して引っかかりや違和感を覚える者を探す。


 その内この部屋への見覚えと、ここに来た経緯を思い出した。


 ここは祖母の家であり、自分は大叔父さんの四十九日の為に泊まって居たのだ。


 そして今日は休日であり、多分寝過ぎて平日とかにはなってない、筈。


 実はもう平日で寝坊なのではとか、どうしようもなく不安が拭えず確認するが、朝の六時で休日だったことに安堵した。


 夢の世界の頭の回転の速さを思うと頭は鈍いのに、感情や感覚だけは夢の世界より鋭すぎて不安になる。


 起きるたびに現実を認識して馴染むまでがかかりすぎて、そろそろ自分は夢から帰れなくなるのではと真面目に思ってしまう。


 昔よりも起床時間は早く、夢の世界に舞い戻り難くはなっている気はするけれど。


 昔よりも現実の音を拾わなくなり、早めのアラームは今日も役目を果たしていなかった。


 この世界も先ほどまでのように創られ、記憶も虚構ではないだろうか。


 世界は起きる前に創っていたところであり、いまの世界は今までの夢と認識した世界より段違いに完成度が高いから現実だと認識してるだけである。


 いっそここが夢なら現実はどんなに完璧な世界が広がっていることか。


 そんな思考を片隅に追いやりながら、今日は用意してきた黒い衣服へと身を包み始めた。

 いつの間にか頁が変わるように世界も設定も記憶も思い出文字分の姿も変わっているのに違和感はあっても気づけない。


 それはまるで雑なグラデーションを見ているようで。


 それはまるで階層が変わった確信は持ててもいつから他の階居るかわからない螺旋階段をひたすら走らされて居るみたいだ。


 そして、夢の中では近すぎて解らなかったそれの全貌が解るのは、何時だって離れて現実世界から見ているときなのだ。

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