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蝴蝶の標本  作者: 夢の湖畔の海月
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少ない魔力を暴発させて死ぬタイプの一般人

 例えば、中の物を握りつぶして殺してしまえる少年が昼寝の為に張った結界の中に入った時。


ーー何故寝惚けて死んでしまうのではないかとは恐怖し(おもわ)ないのだろう?


例えば、魔法使いが箒で空を飛んで行くとき。


ーー何故あらぬ方向へ飛ばずに安全だと、落ちて死ぬとは怯え(おもわ)ないのだろう?


 きっと使いこなした人にとっては車や自転車を自由に運転してるような心算(もの)なのだろうけど。


 過去(ゆめ)の経験上、如何にも僕には到底真似でき(しんじられ)ない現象(もの)だった

ーーああ、遅刻する!


 今日は大学の入学式だというのに寝坊した!


 家から駅は近いはずなのに、駅の背中に住んでるせいで正面に回り込む為迂回する時間がもどかしい。


ーーいっそ、線路を飛び超えられれば早いのに。


 出来たら良いなと足に力を込めれば、思い通りに身体は舞い上がる。


 軽々しく目的地(はんたいがわ)について、調子に乗って駅前までも跳躍した。


 ふと、電話が鳴る。


 出てみればバイト先からで、今日は朝から仕事だという。


ーーおかしい、あんな暗黒企業(ばしょ)は辞めたはず


 シフトを確認したら、確かに毎朝予定が入っていた。


 これでは大学に通えない。


 何故こうなったのか、何方を優先すべきなのか判断がつかない。


 辞めたはずのバイト先は手伝いの約束があったきがしてきたし、行かなければきっと人手不足で困るだろう。


 今更舞い戻った所で、仕様が変わっていて何も出来ずに夢で(いつも)罵倒されてお荷物だけれど。


ーー? 何か今、引っかかったような?


 慌てて学校の()()()に向かうのはやめて、バイト先に行くべく人混みの上をいまきた電車に間に合わせようと跳躍する。


ーー力加減を間違えたらどうしよう?


 一瞬よぎった不安。立て直せば思い通りに跳べるなんてことは解りきっていりのに、心は不安に押し巻け、能力はそれに応じて暴走しだす。


 ホームへ着地しようと跳んだはずの身体は上空へと飛んでいき、大きな駅の屋根も見る間に点に点になっていき、身体は宇宙へと到達しーーそこで、暗転。


 気がついたならば羽のような身体の軽さはなく、押しつけられてるかのように重い体と薄暗い場所。


 顔を上げれば洋服箪笥。


 机上には貰った幼虫(むし)は籠もっていた殻を突き破り、羽を伸ばしていた。


 ベランダへ容器の蓋を開けて置く。


 この質量も、認識出来る観察日記の文書も現実世界の証明のようで安心する。


 夢では魔法が使えたとしてもいつも不安から暴走させて死んでしまうので、いっそのこと何も特殊能力のない現実(こちら)の方が安心安全性だ。


 前半の楽しさの代償が毎度命となるならば、全身全霊全力で楽しいと思えることがない代わりに危険のない世界を選んでしまうのは挑戦心のない臆病者(へたれ)だろうか?


 それよりも、高校1年からずっと専門学校狙いなのに大学と関わる夢だなんて自分は大学に憧れでもあっだろうか。


 行きたい専門学校は一目ぼれで、いろいろ見学はしても心は変わったことなどないというのにそこが一番個人的には引っかかる。


 いや、見た夢をのんびり思い出してる場合ではなかった。


 遅刻が恐くて他人より早めに行動するよう心がけているからまだ余裕があるとはいえ、朝の時間は誰かが時計を早めているのではと毎日疑うくらいにはあっという間に過ぎ去ってしまう。


 習慣化した順番通り、今日も朝の支度(こうどう)を開始した。

 物語中(ファンタジー)精神力(まりょく)といえば強いほど意のままに出来る主人公特権だというのに


自分が主人公(ゆめのなか)の世界ときたら明晰夢さえ儘ならない自分の魔力(それ)は、一般人(へいきんち)よりずっと低い。

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