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蝴蝶の標本  作者: 夢の湖畔の海月
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虚構の過去

水中の泡というのは夢に似ている。


綺麗で、せわしく動く姿も。


浮上して外界に溶けてしまう姿も。

 目の前にはオオカミの群れ。


 どんなに逃げても、どこに居ても彼らはやって来る。


 前にもこんな目に遭った気がする。


 そうだ、そのときは確かトロールが数体混じっていて、廃屋の屋根の上に逃げたのに棍棒で容赦なく建物を破壊しだして絶望したのだと思い出した。


 あのときは怖くて必死に他の残った建物に飛び移ったりしていたーーいや、今も結構必死に電動自転車と表示されるマップを頼りに逃げているのだが。


 いくら走っても知ってる道にはつかない。


 いや、知ってる道に出たと思ったのに知らない道に居ると言えば良いのか、それとも、いつの間にか知らない道へ飛ばされているようで狐に化かされてる状態こそ本質に近いのかもしれない。


ふと、目の前には壁のように狼やトロールの大群がいて、身の回りは迎え撃つ気らしい人間に囲まれていた。


 戦えば勝てるという謎の自信と闘気の湧き上がる中、こんだけいたら前の人は確実に犠牲にはなるが勝てるという確信に満ちる。


 謎に魔物達を煽り、いざ闘いが始まると僕はくるりと背を向けて逃げ出した。


 高揚感と確信した勝利感に自分だけは怪我をしたくないという小心者の恐怖心が勝ったのだ。


 怖くて、もみくちゃになって、走って、抜けて。


(ごめんなさい!)


 犠牲になる人達への罪悪感でいっぱいになり、押しつぶされそうになっても怖くて、逃げ続ける。


 煽って開戦の切欠を作ったのは自分だというのに最低過ぎる。


 罪悪感に押しつぶされたところで暗転、世界が変わり、自分の体勢や見える景色と急に負荷の増えた重力に訳が解らなくてショートしかける。


 薄暗い部屋、襖の隙間のまぶしい日光。


 ここは何処だったかと考えて、だんだんと頭がはっきりしてきて目に映る箪笥にここは自室なのだと思い出した。


 自分の人間性を疑う最低な夢が現実じゃなかった安堵感と、極限状態の自分の性格に絶望を覚える。


 それにしても夢の中の過去の記憶に覚えがない。


 続き物の夢で過去にそんな夢を見たのか、夢の世界で急遽捏造された記憶だったのか…夢日記は良い噂を聞かずに怖くてつけてないので真相は闇の中だ。


 時計の時間と虫籠と観察日記を確認して、ここが現実で出立までの時間がそう無いことを認識して今日も支度を始めることにした。

見えなくても確かに存在し、


存在している間は強烈で印象に残るのも、


見えなくなって解らなくなるところも。


そして大きな空気は時に海月を容赦なく傷つけるのだ。

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