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第8話 必要な力

昨日は、緊急事態宣言の影響で身辺がバタバタしていたため、投稿する余裕がありませんでした。

申し訳ございません。

決意を新たにしたはいいものの、俺は未だ無力だ。



まず力と言って、思い浮かべるのは単純な腕力・戦闘力だ。


この点は、かなり望み薄。

たださえ非力な乳幼児の身体。

ここにさらにパッシブで《敗北者》のクラス能力である〈どうあがいても敗北者〉の効果を受けて、基本最弱になる。


魔法の適性に恵まれていれば、やりようはあると思っている。

しかし、未だ何を持っているかが分からない。

何かしらあるということは分かっているだけに、歯痒い気持ちだ。


だが、全くもって何もできないというわけではない。

予め魔法関連の知識を蓄積させておくことぐらいはできる。

もう少し身体の自由が効くようになったら、屋敷を探索して、魔法関連の書物を手に入れよう。



次に力となると、権力が思い浮かぶ。

地位の高さや、コネクションの豊富さが該当する。

奴隷制度や封建制度といったバリバリの身分制社会であるこの国で最も重要な力と言えよう。


これに関しても、俺は脆弱なものしかない。


今の俺は肩書きで言えば、侯爵家次男だ。

一見すると、支配者層の貴族であり、権力を持っているように感じられる。

されど、所詮侯爵家の次男に過ぎない。

あくまでも侯爵という身分を持つ親から生まれた存在でしかないのだ。


ここでもし長男であったのなら、話は変わってくる。


この世界の文明レベルは中世である。

そのため、地球の同時代の相続法を基準に考えると、長子相続である可能性が極めて高い。

したがって、長男であれば嫡子となることがほぼ決まっているため、他の者達からの覚えも必然的に良くなる。


権力は正直子供のうちはどうしようもないな。

けど、最重要項目であるため、何もしないと言うわけにはいかない。

コネクションを作るぐらいはできそうだから、人との接触を増やしたい。



権力ほどではないが、財力もまたこの世界では求められる要素であろう。


何をするにも金は必要、もしくはあった方が生きていきやすいというのは、転生前の地球でも一緒だった。

だが、この世界はより強い力を持つ。


何故なら、この世界は人の命を金で容易に買えるのだ。


転生前は、少なくとも日本では、一般的な常識の範囲で自身売買は違法であり、罰則対象であった。

まあ、うちのグループはどうやら一部では平然と行っていたらしいが。


しかし、この世界では奴隷制度が依然として存在する。

奴隷、すなわち生きている人間を売買しているのが、日常的に見ることができる景色なのだ。

転生前の文学の知識でしかないが、奴隷になった経緯は様々、下は農民、上は元貴族だっていることだろう。

しかし、奴隷になった以上は皆等しく金銭で売買されてしまうのだ。


人の命さえ金で手に入れられる世界。

裏を返せば、金さえあれば手に入らないものなどほとんどない。


そして、財力こそが俺が最もつけやすい力であろう。


幸いにも、俺には《異世界人》のクラスがある。

その能力の1つである〈既存知識保護〉により、転生前の知識を活かした商売のアイディアは豊富にある。

食品によるチートを自称神様とやらに潰されたのは若干の痛手になったが、まだまだ商売ができそうなジャンルはあるのだ。


幼少という年齢のハンデはあるものの、そこは共同経営という形式なりでいくらでも解決ができる。

まあ、その人材をどうやって探すのか、という問題が新たに浮上してくるが。

それでも、他2つの力を手に入れるよりよっぽど容易で現実的だ。



今まであげた3つの力以外にも力は存在する。

しかし、それらは最終的に3つのうちのどれかを支える要素の1つになる。

だから、決めるべきは3つのうちのどの力を重視するかだ。


通常であれば悩むところではあるが、俺の場合は既に決まっている。

いや、この言い方だと語弊があるな。

1つの道しか残されていない。



それは、勿論――財力だ。



無論他2つを蔑ろにする気は毛頭ない。


しかし、努力すれば報われるなぞ詭弁に過ぎない。

できる者はでき、できない者はできないのが、世の常なのだ。


明らかに他2つのポテンシャルを感じられない現状で、やるべきことはそれらを改善することではない。

伸びしろがある、財力という力をひたすら伸ばすのが正解だ。

その方がいずれ他の力が追いついてくる可能性がある。


さてそうなると、財力の基盤を整えていかないとな。

どう手をつけていくべきか…




「「「ヴィクトルさま、お初にお目にかかります。」」」

「「……ぅます。」」


まず仲間集めから始めようとした矢先、俺はいきなり問題に直面した。


それは、圧倒的コネ不足!

仲間集めしようにも、声をかけられるような相手がいないのだ。


俺は、今まで家族もしくはそれに仕える使用人にしか会ったことない。

かと言って、彼等に声を掛けることは憚られる。


家族に商売やりたいと言うのは、身内の魔の手から己が身を守るためという前提に反してしまう。

使用人の場合は、彼等は既に使用人という手に職をつけた状態、もしくは侯爵家が所有する奴隷であるという点がマイナスに働く。

もし俺が何か始めようものなら、レオンハルトをはじめとする身内に報告されてしまう。

となると、家族に言わずとも同じ結果になってしまう。


それで悩むこと、およそ1年。


気づけば、身体の自由が効くようになり、会話することにも支障をきたすことが少なくなってきた。

最近では簡単な絵本を読むことができるようになり、バレないようにしているものの、ある程度の文字は読めるようになってきた。

いい加減この世界の知識が書かれた書物を読みたいところだが、そんなことすれば目立って騒動になりかねないから自重している。

ちなみに、未だに母親のソフィアがべったりとしてくるが、悪い気はしないのでそのままにしている。


そして、2歳の誕生日を迎えようとした時に転機が訪れた。


ソフィアが未だ俺に同世代の知り合いがいないことに気にしたのか、使用人の子供達を招いたのだ。

そして、友達作りを兼ねた交流会を開くことになった。


ただ同世代と言っても、俺が貴族という身分であるため礼儀作法云々を理解していないといけないため、基本的に大体が6歳前後もしくはそれより年上であった。

それでも、やはり若い子は親に失言しないよう言いつけられているためか、そこまで積極的に口を開いてくれない。


何とか皆と意思疎通を図り、名前や年齢などの基本的な個人情報を聞くことができた。

中には、クラスまで教えてくれる者までいた。


皆とコンタクトを取った結果、気になったのが1人いた。


「……はじめまして、リーラです。」


依然より気になっていた、乳母であるアマンダの娘である。

アマンダの遺伝を受けた蓬色の髪をポニーテールで纏めており、エルフの特徴が若干確認できる少し尖った耳を持った女の子だ。

今回招かれた子供の中で唯一俺と同い年と、招かれる基準と照らし合わせてみるが、明らかに大人びていて2歳児の言動には見られなかった。


自己紹介は非常にあっさりしたもので名前しか教えてくれなかった。

自分語りをしたくなる年頃なはずなのに、必要最低限のことしか言葉を発さなかった。


そして、特に気になった点のは、一度行方をくらましるということだ。


他の者と話をしている際、リーラのことが気になって、そちらに目を向けようとした。

しかし、部屋中見渡せど見つからない。


その部屋は、飲食物を置くための最低限のテーブルだけ用意されているというレイアウトだった。

遮蔽物が極力排除されているこの空間内で隠れることなどできるはずがない。


なのに、忽然と姿を消したのだ。

だが、他の者に気にする様子の者はおらず、また騒ぎになることはなかった。

こうなると、お小水のために部屋から出で行ったという線が濃くなる。

そのため、俺も一度リーラのことを思考の隅へと追いやり、他の者との交流に力を入れた。


それから1時間弱経ち、再びリーラのことを思い出し探そうとしたところで、部屋の扉が開いた。

入ってきたのは、件のリーラだった。

トイレと考えるには明らかに時間がかかりすぎている。

また、部屋に戻ってきた時に浮かべていた表情がどこか落ち込んだようなものだったのだ。


明らかに不審な行動。

その理由を直接を問おうと動こうとしたのだが、突然使用人が扉から入ってきて、そのタイミングでお開きとなった。


あまりにも急だったこともあり、誰かがその理由を問いた。

すると、その使用人曰く、イリジナの方の居住棟に侵入者が現れ、屋敷全体でその対処をするためだと。

付け加える形で、依然犯人は捜索中だとも。


理由が理由だけに交流会は中止になり、皆急いで保護者と帰っていった。

そのため、リーラと話すことが叶わず、俺の疑問はしばらく放置されることになった。



後日聞いたところによると、不審者騒動は、結局犯人が見つからず捜索打ち切りとなったようだ。

被害が、グリフィスのことを窓越しにジッと見られただけ、という大きな損害があったわけでないこと

も捜索打ち切りの理由らしい。

次回更新日は明日です。お見逃しなく…


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