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第22話 グリフィスの宣告の日

大変な事実に気付いてしまった俺達。

いや、むしろ今ここで気付けてよかったと考えれば、ラッキーだったと考えられるか。


とりあえずレイナリアが登場するイベントは、能動的に実行していく、ということになった。

当然、それをゲームの内容を知らないレイナ1人に委ねるというのは酷である。

そのため、俺達がアシストすることになった。


ただイベント自体は所謂学院パート、王都にある学校に入学することにより、始まるらしく今から身構える必要はないらしい。


ひとまず5歳になり、レイナのステータスプレートが確認することが最優先だ。

クラスがどうなっているかで今後の動きが変わってくる。

《誘惑者》ならゲームのストーリー通りの動きをすればいい。

だが、もし《魔導士》《結界師》のままだと、ハンデを背負った形でストーリーが進むように物語に介入する必要が出てきてしまう。

願わくば前者であって欲しいものだな。



それから時が経ち、夕餉の時間となった。

俺の3歳の誕生日を祝うことを目的としているため、食卓はかなり豪勢なものとなった。


俺の背丈と変わらない大きさのロブスターらしき料理が出てきた時は思わず驚いてしまった。

大きくなると大味になるとかいうが、全くそんなことがなくて2度驚いた。


ちなみに帰途は特にイベントが起こることなく、スムーズな道程であった。

まあ用心の為か、護衛が往路の倍の規模になってたから無理もないかもしれないな。



こうして、初めての外出はこうして幕を下ろした。

初めての魔物に、謎の襲撃イベント。

再び見えることができた愛しき人。 

個人的に非常に濃密な体験をできたと思う。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「――グリフィス=ピアッシモン様、どうぞ前へおいでください。」



俺が3歳になったということは、必然的に2歳年上の兄が今年5歳になるということだ。

誕生日は実はかなり近く、僅かながらに俺の方が先であった。


そのため、フィアンソロフィー公爵領から戻ってくるやいなや、グリフィスの誕生日を迎えたのだった。



5歳の誕生日、それはこの世界において特別な意味を持つ。

転生前にも説明を受けたが、自分の持つクラスが分かる日なのである。

通称、宣告の日と呼ばれている。


一般的に5歳の誕生日を迎えた者は、教会へ赴き、その場で洗礼を受けることになる。

洗礼と言っても宗教に帰依する的なミーニングは薄い。


ちなみに教会は、ある程度の大きさの村以上の大きさになれば1つはあるらしい。


しかし、何事にも例外というものが存在する。

今回のグリフィスの場合はその例外が該当する。

ある程度高い身分の者は教会に赴かず、代わりに住んでいる屋敷で儀式を行うことになっている。


理由として、襲撃等の万が一に対する防犯のためとなっているが、それは最たるものではない。

昨今では、生家が所属する派閥を中心に招待客を招き、子供のクラスを内外へ発信するためという目的が主になっているようだ。


そのため、今日の我が家は他家より多くの来客者が来ている。

それぞれ身内が嫁いでいるフィアンソロフィー公爵家とポーリニア伯爵家は勿論のこと、情報収集のためか他公爵家より使者も来ていた。

俺はその様子をホスト側の席より見ていた。



「――主よ、この者に祝福を…」



儀式が始まったようで、教会から派遣されてきた聖職者が言霊を紡ぐ。

リーラに予め聞いた話によると、神官系統のクラスの初期能力で儀式を行えるらしい。

どうしてそんなことを知っているか聞いてみたところ、なんでもサブキャラの中に自分のクラスが分からないというキャラが出てきた時に知ったと言っていた。


グリフィスの前に光り輝く魔法陣のようなものが浮かび上がる。

大きさはバスケットボールぐらいで、文字のようなものが書かれているものの生憎知っている言語ではなかった。


すると、その魔法陣の中の景色が一瞬揺れたように見えた。

見間違いかと思いきやそんなことはなく、魔法陣の中より長方形状の物が前方へと出てきた。

間違いない、ステータスプレートだ。


「……失礼いたします。」


グリフィスがそのプレートを見ようと、手を伸ばす。

しかし、聖職者がそれよりも先に手に取った。

グリフィスが不服そうな表情を浮かべるが、この聖職者の行動は貴族向けの慣習だ。



「グリフィス=ピアッシモン殿、主が与えたもうは《賢者》のクラスなり!」



聖職者はグリフィスのステータスプレートを見た上で、声高に宣言した。

それまで静寂に包まれていた広間は、途端に歓声で包まれ、騒然とした状況へと変わる。

中には近くの者に指示のようなものを出している者もいる。


貴族の宣告の日は、このようにして行われる。

良くも悪くも発信の場になり、結果は瞬く間にも拡散されていく。

良い結果であるのなら、跡継ぎとして有力視され、縁を結ぶ為に婚約話が舞い込むようになる。

逆に悪かった場合は、跡目争いから脱落したとみなされ、他家より距離を置かれてしまう。


その理屈で言うならば、今回のグリフィスはまさに大成功だろう。

希少な《賢者》のクラスが出るとは、誰も予想だにしていなかったに違いない。

いや、我が子可愛さにイリジナ側は当然だとでも思っていそうだな。


今日からグリフィスの周辺は忙しくなること請け合いだ。

様々な貴族が後の便宜の為に、己の子息を使って接触を図ろうとするだろう。

その結果として、今後、グリフィスの周りに金魚の糞が如く幾人か侍ることになる。

俺に対するグリフィスのマウント取りの援護射撃が増えると考えると、気が重い。


正直俺としては、結果が分かりきっていただけに、さっさとこの場から去りたい。

やたらとポーリニア伯爵家側の面々がこちら側を見て、ニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべているからだ。

大方これで跡継ぎは決まったとでも考えているのだろう。


だが、そうもいかないのがこの身分社会。

面倒でしょうがないが、1アクションを踏まなくてはならないのだ。



俺はソフィアに連れ立たれて、グリフィスの側まで移動する。

グリフィスの周りにいるのは、当然の如くイリジナ、そしてレオンハルトだ。


「あら、ごきげんよう。」


満面の笑みを浮かべ、イリジナが声を掛けてくる。

嬉しくてしょうがないと言わんばかりだ。

そんな彼女の瞳に宿るは嘲りの感情。

グリフィス同様にいい性格してるわ。


「ええ、ごきげんよう。今日はとても良い日になりましたね。」


「本当にそう思いますわ。雲一つない澄み渡った空も今日という日を、そして愛息グリフィスのことを祝福してくれているのでしょう。」


家族の割に他人行儀な気がするが、これがデフォルトである。

実際、ソフィアとイリジナが顔を合わせるのは1ヶ月に1、2回なのだ。

同じ夫を持つ者という肩書さえなければ、顔見知りであるという程度の関係性だろう。


母親同士にレオンハルトが加わり話を始めたので、俺はグリフィスに話しかける。


「おめでとうございます、兄上。」


「ふん、これで俺が選ばれた者ということが分かったな。お前とは違うのだよ。」


「あまり滅多なことは言うものではないですよ。それに自分はまだ儀式を行っていません。」


「どうせたかが知れているクラスだろう。2年後が楽しみだな。」


どこが賢い者なのだろうか。

クラスが判明する前に比べても、性格の悪さがより増した気がする。

存在がクラスに負けているような返答され、辟易してしまう。


まあこんな性格だからこそ、過去イベントとやらで深い傷を負うんだろうな。

侯爵家の生まれという育ちの良さ、そして恵まれた《賢者》というクラス。

グリフィスという人間はこの2つの要素を屋台骨として構成されていくのだろう。

だが、クラスが変わってしまったことで自身の存在を高める主柱を失ってしまう。


唯我独尊でプライドが高く、それでいて打たれ弱い。

グリフィスというキャラは、そういう存在なのだろう。

俺様キャラと言われればそれまでだが、なんと自己中心的な思考であるか。



その後もグリフィスのマウンティングは止まることを知らなかった。

しかも、同じようなことの繰り返し。

相手が満足に言語機能が発達していない5歳児だと分かっていても、疲労感が蓄積してしまう。


早々に話を切り上げさせて、同様にイリジナからのマウンティングに愛想笑いを浮かべていたソフィアに話しかけ、その場を辞することにした。

ソフィアも同じように立ち去りたかったのか、部屋から出た後に撫でられ感謝された。

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