第2話 神の道楽
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『勝利よ、お前は統世グループを継ぐ器になるのだ。』
「?分かりました、おじいしゃま。ぼく、がんばりましゅ!」
『良い子だ……おい、執事長、もう3歳になったのだ。教育を開始する。明日からのスケジュールを作っておけ。』
『御意に。』
「ね、ねむいよ…ベッドにいかせてよ…」
『ダメです、今年のT大の入試問題で満点を取るまで許しません。』
「ううっ、ぐすっ…」
『泣いても現状は変わりません。無駄なことはご遠慮して下さい。』
『お前の婚約者が決まった。ラーゼンスグループのエリザベス嬢だ。後日、顔合わせする。』
「そんな、おじいさま。ぼくは、れいなちゃんと…」
『れいな、だと?菱宮の麗奈嬢のことか?ならん、ラーゼンスグループの方が格が上だ。
「そ、そんな…」
『鵬中グループのリンメイ嬢なら、考えなくもないが、5位の菱宮など許さん。』
『明日からお前には市井の生活を知るということで、独り暮らししてもらう。』
「はい、お爺様。かしこまりました。」
『うむ、いくつか課題を出す。それらを必ず達成するのだ。口答えは許さん。もし、課題を達成できなかったら分かっておるな?』
「はい、分かっております。この身命に変えても必ずや…」
『その息だ。ふん、どこぞの愚息とは大違いだな。お前の父親は失敗作だったからな。アレのようになるなよ。』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あっ、目が覚めた?まさかこんな早く起きる人がいるとは思わなかったな。何にせよ、君が1番最初だよ。」
ん、ここはどこだ?
それと何処かからか声が聞こえる。
頭が少しずきっと痛む。
一体何が起きたんだ…
徐々に覚醒していく頭。
そうか思い出してきたぞ。
教室の中に魔法陣が現れたかと思ったら、それが発動してしまったんだ。
ここで初めて周囲に目を向ける。
どこまでも広がっていて、真っ白い空間だ。
床の方には、同じ教室にいた皆が転がっていた。
一瞬死んでいるのかと思ったが、胸が一定間隔で動いているようで無事が確認できた。
そして、中でも異質な存在が1つ。
俺の眼前に淡く、それでいて他の何よりも明るいという矛盾を孕んだ光の玉があった。
光の玉でしかないはずなのに、時折幼い少女のような姿や豊かな髭を蓄えた老人の姿が垣間見えたりした。
この時点で理解の範疇にない存在であることが分かった。
「なに「ああ、そういうの他の皆が起きてからにしてね。とりあえず声を出せないようにするね。」」
なっ!
急に声が出せなくなった。
いつも通りの声帯の使い方をしようとするも叶わない。
やはりとんでもない存在だ。
「「ううっ…」」
「ああ、君以外にも起きる人がいるようだね。彼らの声も出せないようにしておくね。」
そして、次第に俺以外の皆が起き出した。
飛び起きるようにして立ち上がる人、怯えるようにちらちらと周りを見渡す人、現状が理解できずに頭を抱え出す人。
また、一様に声を出せないことに気づき、様々な表情変化を見せる。
最後に文学系少女の本清が起き、ひとまず皆の無事が確認できた。
だが、あくまでも現在無事はでしかない。
数秒後に命を落としていたとしても何もおかしくはない。
「やあ、皆目が覚めたようだね?」
謎の光の玉が再び言葉を発した。
その声もやはり男性か女性か全くもって分からない声質だ。
皆の視線も必然的に光の玉へと集まる。
特に、不良の男2人が食ってかかりそうな勢いで睨んでいる。
「……ん?ああ、声を出せないままにしてたね。ごめんごめん、はい解除っと。」
「てめえ、何者だ!ここはどこだ?一体何をした?」
雷山が解除されるなり怒鳴るように質問を投げつける。
いや、本人としてはただ威圧したかっただけなのかもしれないな。
他の人も言葉を発しようとしたが、雷山の勢いに押されて、口を噤んだ。
こればかりは雷山に感謝しないとな。
皆が思い思いのことを言い始めたら、状況が好転するわけないからな。
「質疑応答はしてあげるつもりだったけど、まさか3つも質問するなんて、君は欲張りだね。まあいいよ。全部答えてあげよう。」
雷山の勢いなど気にしないとばかりにマイペースに話す光の玉。
「僕は、うーん、端的に言えば、君達の中で言う神様みたいなものさ。何を司るとか言っても分からないだろうから、説明は省くね。あと、名前はまあここでしか会わないし、教えないよ。」
神か。
光の玉の正体が明かされたが、違和感なく受け入れられた。
まあ、今まで起こったことを考えれば何もおかしくはない。
……皆はかなり動揺しているようだが…
「ここはどこかだっけ?うーん、まあ僕のための空間というのが君達には分かりやすいかな。いや違うね、もっといい表現があった!所謂死後の世界ってやつだ。」
っ!
これには先と違い、思わず動揺してしまう。
言葉通り解釈するなら、俺達は一度死んだ身ということか。
チラッと周りを見ると、何人かが顔を青ざめさせている。
「一体何をしたって質問にはちょっと答えづらいなあ。だって、まだしている最中なんだもの。律儀に答えてあげると、君達をここへ連れてきたってところだね。はい、じゃあ君の質問権終了ね!ほいっと!」
「っ!」
雷山はまた声を封じられたようだ。
それにしても、まだ神様とやらはまだやることがあるらしい。
なるべく悪い方向に進まなければいいな。
「じゃあ次は僕だ。これから僕達をどうするつもりだ?僕は宝城グループの跡取りなんだ。早く向こうに帰らなくてはならない。」
まあそうだよな。
俺も統世グループの跡取りだから帰らなくてはならない。
そうでないと、お爺様になんと言われるか…
「質問に答えようか。君達にはこれからとある異世界に転生してもらう。そこで好きに生きてくれ。」
「な、なにを…」
「ああ、理由とか目的とか聞かないでね。特に何もないから、強いて言うなら僕の戯れ、一種のゲームに付き合って欲しいんだ。プレイヤーは君達。僕はその様子を見て楽しむだけ。ちゃんとマナーは守るよ。転生後にちょっかい出したりするつもりはないからさ。」
「「「はっ?」」」
雷山以外の声を出せる者から呆気に取られたという声が出た。
無論俺も同じだ。
一体何を言っているんだ、こいつは?
「そうそう、質問じゃあなかったけどもう1つ教えてあげる。君達はもう元の世界に戻れないから。ああ、ごめん言い方が悪かったね。君達には元の世界など何もない。だって、君達が存在したという記録、記憶、情報その他諸々を全て消去したからね。」
「「「なっ!」」」
そして、神に対しての罵倒や怒号が飛ぶ。
ふざけるんじゃねえ、とか、セオリー違反だ、とか。
女性陣には泣き崩れている者までいる。
際立った反応を示してないのは、麗奈と本清ぐらいか。
だが、それも長くは続かなかった。
「はっはっはっ……それ以上ぴーちくぱーちく言うと殺すよ?」
不意に背筋に今までに体感したことのないような冷たいものが走った。
こんな殺気、地球にいたら味わないぞ。
立っていた不良やヲタクグループは腰を抜かしたのか、尻餅をついている。
「もう既にゲームの開始は止められない。君達のいた世界にある言葉だと、賽は投げられた、と言った方がいいかな?それでもまだ楯突こうというのなら、君たちはいらない。面倒臭いけど、新しいプレイヤーを用意すればいいだけだからね。ポイするよ。」
押し黙るしかなかった。
もう自分達の取れる選択肢は1つしかない。
だが、正直言うと、俺はどこか歓喜すら覚えていた。
何故なら、今まで統世グループの跡取りということで、敷かれたレール通りの自由のない過酷な生活を送ってきたのだ。
その生活から解放される。
それどころか新しい人生を送れる可能性すらあるのだ。
きっと今までよりも自由で明るい未来が…
そんな俺の心を読んでか、神様である光の玉がどこか笑ったような気がした。
次回更新日は明日です。お見逃しなく…
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