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第14話 魔法の見本

以前グリフィスに絡まれた庭はソフィアとイリジナの居住棟の間にある、所謂中庭であった。

今回はそこではなく、ソフィアの居住棟と森の間にある庭の方へとやって来た。


一面芝生が敷かれているものの、中庭と違って綺麗な花などは咲いていない。

遮蔽物らしきものはなく、魔法を実演するには持ってこいの場所であるようだ。



「ママはどんな魔法が使えるの?」


最早羞恥心はお暇を出して、旅に出した。

精神年齢的にキツいものはあるが、ソフィアの笑顔のためならいくらでも甘えた態度を取ってやる。

なんてたってアラフィフとの約束があるからな。


お、おい、リーラはこっち見るんじゃない。

マザコンとでも言いたげな眼差しだな。


「ふふふふ、ママはね水と風の魔法が使えるのよ。」


「すごーい、ママ!」


いや、本当すごいと思うぞ。

おそらく魔法関連のクラス保有者なんだろうな。

流石にクラスは教えてくれないだろうから、予想程度に留めておかなくては。


「じゃあまずは簡単なのからね。ママの指先を見ててくれる?」


俺とリーラは言われた通りにソフィアの近くまで寄り、1本だけ上げた人差し指を見る。


一応何か手品的な仕込みがないのか、目視で確認してみる。

だが、案の定そこには何もない。

ここ数年水仕事なんてしたことないのだろうと思ってしまうほど、綺麗な指があるだけだ。


「行くわよー、[ウォーターボール]。」 


「おお!」

「わあ!」


すると、ポンと音が聞こえてきそうな感じで、人差し指の5cmほど先にピンポン球サイズの水の玉が現れた。

兆候などは見て取れず、急に現れたように感じた。

無論何かトリックがあるようには見えなかった。


水の玉が重力などの自然の摂理に反して浮いている。

なんとも不思議な現象だ。

転生前の科学技術で再現しようにも、難しいのではないか?

魔法という存在に改めて驚かされる。


それと気づいたのだが、魔法の名前だけ唱えていた。

書物の知識から考えるに、おそらく詠唱破棄というやつだろう。

想像力があるのか、クラスのLv50超えているのかは分からないが、大したものだな。


「これはね、初級水魔法の[ウォーターボール]っていう魔法よ。水の玉をこうやって作れるの。今はこの大きさだけど、もっと大きくできるのよ。」


初級の水属性魔法、略して初級水魔法らしい。


この省略呼称も書庫で読んだ本に書いてあった。

水属性魔法とかいちいち言ってたら長ったらしいからな。


「じゃあ大きくするわね。」


指先にあったピンポン球大の水の塊がそこから離れ、10m先に移動した。

すると、徐々にだがその大きさは増し、バブルサッカーに使われている緩衝材ほどの大きさまでになった。


大きくなったおかげで水の玉の状態がよく分かる。

表面は凪のように穏やかな水面だ。

重力で引っ張られた様子もなく、完全な球体となっている。


ちなみにだが、ソフィアのやったことの理屈は本に記載もあったことなので理解している。


初級とは、本来体内にある魔素だけで足りるレベルの魔法である。

最低必要魔素量の定義的にそうなる。


だが、あくまでも最低必要魔素量は最低条件に過ぎず、それ以上の魔素を使って魔法を発動させることも可能だ。

今ソフィアがやったことがいい例である。

自分は魔法を使ったことがないので、あくまで推測の域を出ないが、中級程度の魔素でも水の玉に込めたのだろう。


それと、魔素量を増やしても出来ることの選択肢とういうものは決まっている。

魔素量を増やすというテクニックも万能ではないということだ。


本では初級火魔法の[ファイヤーボール]で例えられていた。

この魔法に対して魔素を必要量より注ぎ込んだ場合に出来ることは、火の玉の大きさの変更か火の玉を移動させるスピードの変更、あと若干であるが火の玉の温度の変更だ。

それ以外のこと、例えば火の玉の形を変えたりだとか、火の玉を分裂させたりだといったことはできないらしい。

どうやら[ファイヤーボール]という現象の領域を出るようなことは出来ないらしい。


ちなみに火の玉ではなく矢の形をした火を放つ魔法は[ファイヤーアロー]、複数個の火の玉を放つ魔法は[ファイヤーレイン]という魔法名称になる。


内面では知識の照らし合わせや、魔法の考察を立てたりしているものの、外面は無邪気に燥ぐ2歳児を演じている。

一緒にいるリーラの方を見るも、同様に燥いでいて、こいつの場合は素でテンションが上がっているだけのように思えた。


そんな俺達を見てソフィアも楽しそうだ。



「次は風魔法ね。[トルネード]。」


「なっ!」

「わあ!」


砂もないのに可視化可能な旋風が目の前に現れた。

色としては……薄緑色か?

これが風属性自体の色っぽいな。


ここで反応が2つに分かれた。

リーラは先ほど同様に魔法自体に魅了されている様子だ。


だが、俺は発動した魔法よりも違うことに驚いた。


ソフィアは何の気もなしに風魔法を使ったようだった。

しかし、先の水魔法は未だ発動している状態にある。

これは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになる。


これが示すのは、全く別の属性の魔法を同時並行で使いこなしているということだ。

そして、これは書物に記載があったテクニックである。

そのものずばり並列詠唱と呼ばれる高等技術で、別の属性を持つ魔法を2つないし複数同時に扱うというものだ。


普通の人間の脳の構造上、想像力では補いきれないため、クラス能力で身につけるしかない。

勿論魔法関連のクラスに限った話だ。

しかも、その必要とされるのがLv100と、一生のうちに到達できないものが多く、一握りの才を持つ者だけに許された領域だ。


それをケロッとした顔で、俺達を微笑ましく見ながら、行うソフィアの凄さよ。

人は見た目で判断してはいけないな。


ちなみにだが、同じ属性の魔法を同時並行で扱うテクニックもあり、これは多重詠唱と呼称されている。

これは魔法関連クラスのLv75で獲得できる能力で、並列詠唱よりかは獲得難易度が下がる。

それでも、常日頃から戦闘をこなさないと到達はできない。

並列詠唱ができたのだ、ソフィアは多重詠唱だって使えるはずだ。



その後も次々と魔法を俺達の目の前で披露してくれたソフィア。

安全のためか終始初級魔法しか使わなかったが、それでもそのバリエーションの多さに目を見張った。


書庫で魔法の知識をつけるだけであったはずが、思わぬ成果を上げた。

魔法の可能性に夢を見て、ソフィアの実力に驚愕する。


今日はよく眠れそうだ。

次回更新日は明日です。お見逃しなく…


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