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第12話 グリフィスとの一幕

サブタイトルってつけた方がいいのでしょうか?

リーラの暴露話から数日、俺は初めて家から外に出た。


外に出たと言っても、領地にある街へ行ったりや王都を訪れたりしたわけではない。

文字通り、居住棟より出ただけで、屋敷にある庭に足を踏み入れたに過ぎない。


だが、それでも今生初めての外だ。

肉体年齢に感情が引っ張られてしまうせいか、否が応でもテンションが上がってしまう。


空はこの世界でも変わることなく、空色だ。

雲だって浮いているし、太陽らしきものもある。

窓越しに外を見ることはあったが、何も介さず直に目で見る初めての景色は実に趣深い。


庭には、転生前の本家の邸宅にあった庭園には及びはしないものの、彩り豊かな花々が咲き乱れる花壇があり、実に見応えがあった。

担当の仕事の腕がいいのだろう、生垣の剪定も見事なものだ。


今はとりあえず子供らしく振る舞おう。

俺は側に控えている使用人達に当たり障りのない質問をする。


「ねえ、あの上で光っている明るいのは何?」


「坊っちゃま、上に広がるのは空と呼ばれるものです。そして、光っている明るいものは太陽と呼ばれるものです。」


まじかよ、太陽だってさ。

ただ〈言語理解〉で勝手に翻訳されて聞こえている可能性もあるからな。

地面に字を書いてもらう。

……うん、この世界の文字でも太陽だわ。


そして、もう1つどうしても気になっていたことを聞く。


「ねえねえ、あの向こうにある細長いものって何?」


そう、転生前の空との大きな違い。

遠く離れた空に何か細長い物体が浮いているのだ。


一見すると雲のように思えなくもないが、それにしては雲特有のふわふわとした軽量感が見て取れない。

それに雲だとしても1つの雲としては、異常に長い。

ここからの目算になるが、全長10kmは超えている。


「ああ、あれは"天の慈龍"と呼ばれる神龍様です。慈龍様の下では、お空から恵みの雨と呼ばれる水が降って来るのですよ。その雨が降った後は、美味しいお野菜が育ちやすくなって、皆に喜ばれる存在なのです。」


リーラの話で存在そのものはスルーしてたが、やっぱりファンタジーな生物は存在するんだな。

転生前にされた説明で知識としては持っていたが、実際に目にすると感慨深い。

より異世界に来たという実感を得る。


というか、あの龍って言ってみれば前線だよね。

猛雨が降るわけじゃないから、分類するなら温暖前線か?

ともかく前線という自然現象が生き物になっているなんてビックリだ。



その後も、子供面して側にいる使用人達に次々に質問を繰り出す。

使用人達は微笑ましそうに俺を見ながら、懇切丁寧に質問に答える。

ほのぼのとした時間が過ぎていった。


しかし、そんな時間を壊すように、会いたくない人物が襲来した。


「おい!相変わらずだな、ヴィクトル!」


背後から話しかけられたが、振り返られずとも誰か分かった。

このままスルーできるならスルーしたいところだが、そんなことしようものなら更に面倒な状況になりそうであったので、嫌々振り返る。


「お久しぶりです、兄上。」


俺の兄である、グリフィス=ピアッシモンだ。


この世界の攻略対象の1人という話を聞いてからの初の対面である。

リーラの説明による補正のためか、言われてみれば、かなり女性受けしそうな容姿になりそうだ。

未だ4歳であるものの、将来イケメンになる片鱗が見て取れる。


まあ性格は残念でならない気がするが…

こんな奴が《賢者》のクラス持ちなんだよな。

正直言って、羨ましさしかない。


「ーーおい、聞いているのか!」


「ええ、聞いていましたよ。」


本当は聞いていなかったが。

十中八九嫌味とかだから聞く必要がないんだよな。


「相変わらず使用人どもに媚を打って情けない奴だ。いや、女々しいと言うべきか?」


4歳児かと疑いたくなるぐらい、既に性格が悪い。

下々の者は高貴な己に傅いて当然と言わんばかりの振る舞い。

罵詈雑言のレベルもかなり高め、大人顔負けの流暢さ。

イリジナ側の英才教育の賜物だろうな。


まあここで扱き下ろされるだけの立場に甘んじるなんてことしないけどな。


「兄上、皆と仲良くすることのどこがダメなの?」


「はっ、高貴な身分がわざわざ下々の者達と対等な関係を築こうとするなど、貴族の慣習に反している。使用人なぞ貴族の道具に過ぎない。」


「その慣習?決まり事だっけ?それを守るとどうなるの?」


「っ、格の違いというものを思い知らせることができる!」


「格の違いってやつを思い知らせてどうするの?」


「ぐっ…」


必殺・子供の純真。


子供らしくあらゆることに疑問を抱くように問いていけば、4歳児の理論武装など恐るるに足りない。

想定外の質問に答えるほどの知能は未だ得ることはできていないようだ。


まあ少しは同情しよう。

古臭い貴族の慣習とやらを最優先で知識として蓄えさせられたんだろうな。


だが、自分に仕える者を平気で見下すような行為は認められんな。

使用人がいるからこうやって生活ができるというのに、その存在を否定するとはな。

こればかりは、生来の性格というものも影響しているのだろう。


「兄上、それで満足ですか?」


「あ、ああ、僕は偉いんだ!皆は僕に平伏すべきなのだ!」


「はあ……」


グリフィス側の使用人達を見てみると、鉄仮面の無表情か憔悴し切った表情のどちらかに分かれていた。

少なくとも、その立場にいてポジティブな気持ちになれている使用人はいないようだ。


思わず溜息が出てしまう。

グリフィスに対して、侮蔑とほんのちょっぴりの同情を乗せた視線を向ける。


そんな俺の視線が堪えたのか、腹立たしそうな表情を浮かべる。


「ぐっ!もういい、帰るぞ!」


結局グリフィスは側に控えていた使用人達に当たり散らすようにして、去っていった。

グリフィスを追うようにして去る使用人達の背中はどこか小さく感じた。



楽しい外出になるはずだったのに、とんだ災難に見舞われたものだ。


だが、グリフィスに会ったおかげで思い出せることができた。

魔法関連の知識を身に付けようと考えていたんだったな。


誰かに話を聞くというのも1つの手であるが、やはり最初は書物がいい。

お目当てのものがありそうな書庫の位置は屋内探索のおかげで分かっている。


自分1人だと入れなさそうだから、次回リーラが来た時に彼女を利用して入るのがいいだろう。

次回更新日は明日です。お見逃しなく…


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