ニャンニャカクエスト -青葉君の冒険-
小さな子供たちに読んでもらいたくて書きました。『命って大切だよ』『大人が、いろいろ言うのは、君たちのためなんだよ』わかりやすく書いたつもりです。一人でも、小さな子供たちに命の大切さを、わかってもらえたら嬉しいです。
ある日 僕が、眠っていると、うちの猫のスズちゃんとタマちゃんが、僕の肩を ふみふみして起こしに来た。僕が起きて お布団に座ると、タマちゃんが、
「青葉くん 僕たちのニャンニャカ王国が、悪いモンスターに 襲われてて大変なんです。」
「どうか 僕たちと一緒に来て、悪いモンスターをやってけてください。」
って言った。
「それは、大変!悪いモンスターをやっつけないと!」
僕は、タマちゃんとスズちゃんと、ニャンニャカ王国に行くことにした。でも スズちゃんとタマちゃんは、去年遠いところに二匹で、もらわれていったって、ママが言ってたんだけど、そこが ニャンニャカ王国だったのかな?だけどそこから家に帰ってきたんだね。僕は、その方が嬉しいから良かった。
タマちゃんは、僕に金色の小さな鈴をくれた。この鈴があると、猫の国ニャンニャカ王国に入れるんだって…
僕は、金色の鈴を首に巻いてニャンニャカ王国に行く準備をした。青葉くん5才…
ママと離れるのは、ちょっとさみしいけど 大好きなタマちゃんとスズちゃんが、困っているから 助けてあげないとね…
隣の部屋で寝ているママに『いってきます』って心の中で呟いて出発した。
ニャンニャカ王国は、押し入れの中に入り口があるんだって…
僕とタマちゃんスズちゃんは、押し入れのふすまを開けた。スズちゃんが、王国の入り口を開ける呪文を教えてくれた。僕、タマちゃん、スズちゃんで一緒に呪文を唱えた。『ニャンニャカ・ニャンニャカ・ニャンニャンニャン』
すると 押し入れの奥の壁に小さな、猫が通れるぐらいの扉が現れた。僕は、扉を押して開けてを中に入った。
僕が、押し入れから出てきたのは、大きな森の中だった。僕たちは、今 大きな木の下にいる。
「ようこそ ニャンニャカ王国へ…」
タマちゃんがいった。着いてすぐに、スズちゃんは、僕に赤い長靴を用意してくれた。
「ニャンニャカ王国では、皆、長靴を履くんだよ。」
「初代国王が、決めたからね…」
長靴をはいた猫だ。
僕の大好きなお話だ。さっそく僕も、赤い長靴をはいてみた。
長靴を履いて顔を上げると、羽の生えた小さな人が飛んでいた。
「あっ 妖精さんだ。」
「でも ママにそっくりだね ママなんでしょ?」
ぼくは、ママに会えて、嬉しくて 手を叩いて喜んだんだけど、違う人だったみたい。
妖精さんは、不思議そうな顔をして
「あなたが、この王国を救ってくれる勇者さんですか?」
って 僕たちに聞いてきたんだけど、僕は、わからなかったので、
「僕って勇者なの?」
隣のタマちゃんとスズちゃんに聞いてみた。するとスズちゃんが、
「そうだよ だって、王様に、金の鈴を青葉くんに渡して、助けてくれるように頼んでみてくださいって言われたんだ。」
「それで、僕たち青葉くんのところに行ったんだからね。」
「そうなんだ 僕勇者なんだね…」
「カッコいい。」
僕は、すごく嬉しかった。だって勇者ってお話の中のかっこいい人のことだもんね。
「えっへん!僕、勇者青葉です。」
「小さなママさん。」
するとママそっくりの妖精さんが、
「ママ? 私は、ママではないですよ…」
「ここに住んでる妖精のマムです…」
「勇者が、悪いモンスターをやっつけるお手伝いをするように、王様に頼まれました… 」
「どうぞ これから お願いします。」
くるっと回って、頭を下げたので、僕も
「お願いします。」
ってご挨拶した。だってママが、いつもご挨拶は、ちゃんとしないとダメって言ってるからね。
でも、勇者って言われたけど、どうすればいいのかな?お話の勇者って、もっと大人の人だし、僕、剣とか?盾とか?持ってないし、魔法も使えないし…
そこで、みんなに聞いたんだ。
「僕、剣も盾もないし魔法も使えないけど、どうしたらいいの?」
するとマムが、にっこり笑って魔法をかけてくれた。
「ニャンニャカニャン」
すると僕は、赤いマントと赤い剣を持った、お話の勇者の格好になった。すごい!これで、いつでも戦えるね。ちょっと ほこらしくなった。
でも どこで?だれを?やっつけるのか まだわからないんだけど…
困っていると、マムが、カードをくれたんだ。カードには、ニャンニャカ王国の地図が、描かれていて 5つの場所に丸が、付いてた。
「これなーに?」
僕が聞くと、マムが
「その丸に、モンスターがいて みんなを困らせてるの… 」
「そこにいるモンスターをやっつけて欲しいの。」
「お願いできる?」
マムにお願いされちゃった。僕頑張る。
最初に行くのは、ここから一番近いところ。今いる森の出口から、町に向かう道に丸がついてた。そこに決定!
僕たちは、森の出口まで歩いて行った。そこには、大きなサビネコがいた。僕たちの方を見て、
「ここを通りたかったら、俺と戦って勝つことだな…」
そう言って大声で笑った。いよいよ戦いだ。頑張らないと…と
僕が思って剣を抜いたら、サビネコが、
「お前、なんで剣なんて危ないものを抜くんだ…」
「けがをしたらどうするんだ!」って怒り出した。
「エッ?戦いって言ったから…」僕が、困った顔で言うと、
サビネコが
「何を、言ってるんだ?普通勝負と言ったら ピーマン早食い競争だろう」
って答えた。
ピーマンって僕の一番嫌いな食べ物…
今日の朝食べないで、ママに叱られたのに、ここでも、またピーマンを食べるの?
「ねえ、ピーマンじゃなくて、クッキーの早食いにしない?」
僕は、サビネコに聞いてみたんだけど
「クッキーだ? 」
「そんなもの食べ物じゃねえ…」
「食べ物と言えば、やっぱりピーマン…」
「男は、黙ってピーマンで勝負。」
とか言われた。
じゃあ女の子なら ピーマンじゃなくて良かったのかな?とか思ったけど、僕は、男の子だから 諦めて、ピーマン早食い競争をすることにした。
サビネコが、指をパチンと鳴らすと、テーブルが現れ、大きなお皿山盛りのピーマンの炒め物が、乗っていた。これ全部食べるの?無理、絶対無理、タマちゃんとスズちゃんに助けを求めた。
するとタマちゃんが
「助けてあげたいけど、猫は、ピーマン食べられないんだよ…」
「あの サビ猫だけが、ピーマン食べられるんだけど それに気付いてないの。」
「それで、みんなピーマン食べないっておこってるの。」
「応援するから、青葉くん頑張ってよ…」
って言われちゃった。
そういえば、ねこは、カリカリのご飯と缶詰のご飯しか食べてなかった。ピーマン食べてる猫見たことないことに気づいた。そうやって、もたもたしてると、サビネコが、
「早くしろ!食べなかったら、俺の勝ちだから、ここは、通さないぞ」
って怒り出した。なんかすごく怒りっぽい猫で嫌になっちゃう。
諦めて、テーブルについたら、いきなり用意スタートって言われちゃった。僕は、いやいや一番端っこの一番小さいピーマンをつまんで、口に入れてみた。「にがーい いつものピーマンの100万倍苦い こんなの食べられない。」
って泣きそうになってたら、マムにに言われた。
「青葉くんは、いつもどうやって、ピーマンを食べてるの?」
って…
僕は、思い出してみた。
「そうだ ママがいつも ピーマンが、美味しくなる魔法の呪文をかけてくれてたんだ。」
僕は、にっこり笑って、魔法の呪文をかけた。
「おいしく、おいしく、おいしくなーれ」
マムも一緒に呪文をかけてくれた。
「これで大丈夫。ピーマン美味しくなったはずよ」
マムに言われて、一口食べてみた。うーん。美味しくはないけど、これなら食べられる。僕は、パクパク食べながら、隣のサビネコを見た。もう半分も食べ終わってる。急がなくっちゃ…
僕は、今までで、一番頑張ってピーマンを 口いっぱい!ほうばりはじめた。後少しのところまできて、隣のサビネコを見ると、口いっぱいほうばりすぎて、喉にピーマンを詰めていた。苦しんでる姿を見ると、かわいそうだったけど 僕だって勝つために必死なんだから ここは、チャンスとラストスパートしたんだ。最後の一口、口に入れて目を瞑って、カミカミゴックン!やっと口の中が、空っぽになって目を開けたら、サビネコは、まだ喉を詰めたまんま、目を白黒していた。
これは、大変!死んじゃうかも…
「マム お水を出してあげて…」
「かわいそうだから…」
するとマムは、魔法の呪文を「ニャンニャカニャン」と唱えて、コップに入ったお水を出してくれた。僕は、慌ててサビネコの口に、お水を持っていってあげた。サビネコは、すごい勢いでお水を飲んで、はぁーって息を吐いた。それでピーマンのテーブルを見て、ガックリと肩を落とした。
「負けたのか?」
「くそ〜今まで、ピーマン早食いで負けたことのない俺が…」
「まずは、助けてくれて、ありがとよ…」
「助かった」
「それから、俺の負けだから、この道は 通してやるよ。」
「じゃあな」
って言って サビネコは、くるっと回ったかと思うと、消えちゃった。
よかった!なんとか、サビネコをやっつけることができて、ほっとしてたら、パンパカパーン!なんでかファンファーレが、なった。すると、ニャンニャカ王国の地図が、光った。マムが、嬉しそうにその地図に、大きなハンコを押してくれた。さっきのサビネコそっくりのはんこを…
なんかこれ、見たことあるよ?ちょっと考えたら、思い出した。オリエンテーリングだ。前にパパとママと一緒にしたことがある。最初のポイント、クリアだね!やったー。タマちゃんもスズちゃんも喜んでくれた。僕も嬉しかった。
さて次は、どこかな?地図を見てみた。モンスターと言っても猫だったけど、やっつけたら、ハンコもらえるのは嬉しいよね。ご褒美もらった気分だもん。僕、次も頑張っちゃうよ。今度は、どんな相手かな?ホントのモンスターだったら、ちょっと怖いけど…
地図を見てみた。まっすぐ行ったところに、本のマークが、書いてあって そこに丸が付いてる。この本のマークは、何かな?行ったらわかるかな? とりあえず 行ってみよう。森の出口を抜けて、土の道の上をみんなで、まっすぐ まっすぐ、歩いて行った。
結構遠くて スズちゃんが、ゴネ出しちゃった。
「もう歩けないよ スズちゃん休憩する〜」
「しょうがないな…」
「急いでるんだから、ダメだよ…」
「ほら ちゃんと歩いて。」
僕が言ったけど、スズちゃんたら 丸くなってお昼寝始めちゃった。
「ダメだよ〜 スズちゃん」
僕の声などおかまいなしで すっかりお昼寝モードになっちゃった。
「猫だから仕方ないわね…」
「青葉くん抱っこして、連れていってくれる?」
マムに頼まれたので、スズちゃんを抱っこして歩き出した。いつもだったら ママとパパが、僕を抱っこしてくれるのに ここにママとパパが居ないのは、ちょっと寂しいな。それに抱っこして歩くのってしんどい…
今度から 僕も抱っこじゃなくて、自分で歩かないと…
パパもママもすごく大変だったんだ。パパ、ママいつも抱っこしてくれてありがとうね。心の中で お礼を言った。
スズちゃんを抱っこしたまま、なんとか 地図の本のマークの場所に着いた。看板みたいなものがあるのか?上を見上げたら 図書館だった。図書館は、ママとよく行ってるから知ってるんだ。たくさーん本があって、お家で本が読めるように貸し出しもしてくれる。僕も今 絵本を3冊借りてるんだ。また 返しに行かなくっちゃ。でも今は こっちの図書館だよね…
ここに どんなモンスターがいるのかな? ちょっと気になるけど入ってみよう。スズちゃんを起こして自分で歩いてもらうことにした。だって 何があるかわからないもの…
スズちゃん抱っこしたままだと戦えないし。
図書館の中の入ると、たくさんの本が そのまんま床いっぱいに散らばって どこになんの本があるのか?全然わからなかった。なんでこんなに、ちらがってるの?図書館は、いつもきれいに本が、棚に並べられていて、すぐに読みたい本が見つかるけど こんなに散らがってたらわかんないじゃない…
僕が そう思っていると 貸し出し受付のカウンターに メガネをかけたキジ猫がいた。タマちゃんは、キジ猫を見ると僕のマントの影に隠れちゃった。
「タマちゃん どうしたの?」
「あのキジ猫が、来てから 誰も図書館に入れないの…」
「ちゃんと片付けをしない者は、入ったらダメって、怒って追いかけてくるの…」
「えっと もしかして 二番目のモンスターってあのキジ猫のことかな?」
僕が聞くと、スズちゃんタマちゃんおまけにマムまで 思いっきり首を縦に振り続けていた。
「そっかぁ〜 確かに 怖そうな猫だけど 図書館で 見終わった本を片付けないといけないのは、お約束なんだけど、どうして散らがっちゃったのかな?」
するとタマちゃんが、
「だってネコの手って丸いのよ…」
「なんとかして 棚から 本を出せても片付けられないよ〜。」
って 半泣きで ネコの手を見せてくれた。
確かに 本は持てないよね。
「それじゃ 片付け方を考えないと、キジ猫が、怒るの当たり前だよ。」
ぼくは、みんなに教えてあげた。何かいい方法ないかな?僕は、一生懸命考えたけどスズちゃんとタマちゃんは、すぐに考えるのに飽きて遊び出しちゃった。 僕は、頭にきて二匹に
「メッ ちゃんと考えて!」
「じゃないと、いつまでたっても図書館使えないよ。」
って怒ったけど、二匹は声を揃えて
「だって ネコだもん〜 」
「すぐ違うことしたくなっちゃう。」
って言って、本の上で鬼ごっこを始めっちゃった。図書館の本は、大切にしないといけないって ママがいつも言ってるのに、これはダメだよね。僕は、二匹を本から下ろしておとなしくしているようにお願いした。おとなしくするのに飽きた二匹が、本を読み始めた。床に落ちてる本を上手に、鼻の先を使ってページをめくってみている。そっかぁ 猫もちゃんと本が、読めるんだ。片付けられないだけなんだね。それなら、この本全部床に並べちゃえばいいんじゃないかな?そしたら 猫も本が読めるし、棚にしまわなくてもいいから散らがらない。僕って天才!でも 好きなとこで見たら、どこに置くかわかんなくなっちゃう。そしたら また散らがっちゃう。それじゃ今とおんなじになる。何かいい方法ないかな?僕は、お家のおもちゃ箱を思い出した。ママが 片付ける場所が、わからなくならないように カゴにおもちゃの写真を撮って、貼ってくれてる。僕は、その写真のおもちゃ箱に写真のおもちゃを片付けるように言われてる。『これだ』床に本の写真を貼っておけばいいんだ。そうすれば 違うとこで読んでも、片付ける場所わからなくならないよね。さっそく みんなに僕の考えを話してみた。スズちゃんもタマちゃんもそれからマムも『すごくいい考え』って褒めてくれた。えっへん!褒められると嬉しいよね。
さっそく取りかかろう。
図書館お片づけ作戦。まずは、マムに聞いてみた。ここにある本全部の表紙のところを、コピーできるかって?マムは、大きく頷いてコピー機のところに案内してくれた。助かっちゃう。ニャンニャカ王国にもちゃんとコピー機あったんだ。使い方は、前にパパが使ってるところを見たことあるから、なんとなくわかるんだ。さぁコピーに取りかかろう。僕一人で本を運んでくるのは、大変なのでみんなに手伝ってもらうことにした。タマちゃんに本を持ってきてもらって、僕が本をコピー機にセットマムが、コピー機のスイッチを押して、できたコピーをスズちゃんが並べる。みんなで協力すると早いよね。どんどん、どんどんコピーを仕上げていった。全部コピーを終わって何冊か傷んでる本が、あったのでそれもセロハンテープで、ペタペタ貼って修理してあげた。本は、大切にしないとね。ママが、いつも言ってるからね。次は、スズちゃんが並べてくれた表紙のコピーを 僕が全部テープで床に貼って行った。
「ふぅ〜全部貼れた」
「あとは、みんなで 表紙とおんなじコピー用紙のところに本を並べて行ったら 出来上がり。」
「もうひと頑張り、がんばろう。」
みんなで 本を並べて行った。きれいに並べ終わりメガネのキジ猫を見ると、『あれ?』普通の優しそうな猫になっている。
キジ猫が、僕たちに
「ありがとう きれいにしてくれて…」
「これでまた 図書館を開けることができるわ。」
とお礼を言ってきた。僕が、キジ猫を見て不思議そうにしていると、説明してくれた。
「わたしは、もともと この図書館の館長です。」
「でも、猫は、本を丁寧に見てくれないし、棚に自分で、片付けられない。」「そのうち どんどん どんどん 本が散らがっていって腹を立てているうちに モンスターのようになっちゃっていたの」
「青葉くんが、本をみんなが片付けやすく、きれいにしてくれたから 気持ちが落ち着いて、いつものわたしに戻れたの。」
「本当にありがとう。」
「そうかキジ猫さんは 怒っていただけだったんだね。」
「これからも 図書館のお仕事がんばってください。」
ぼくは、かっこよくいった。
ここで また ファンファーレが鳴った。僕のカードが光り出した。マムを見ると、またハンコを持っていた。きっと今度は、キジ猫のハンコだろうな?僕は、ワクワクしながらマムが、ハンコを押してくれるの待った。押されたハンコは、やっぱりメガネのキジ猫のハンコだった。二つ目クリア、今回は、みんなでがんばったから解決できた。よかったね。でもキジ猫さんが、図書館の本を片付けないから、怒ってモンスターになっちゃったんだったら、始めのサビ猫も何かあったのかな?ちょっと気になっちゃった。とにかく二つのポイントをクリア。三つ目に向けて 出発だね。
図書館から出て、地図を見てみる。二つのハンコが押されている。見るとちょっと誇らしい。『頑張ったな僕』みたいな、ちょっと偉くなった気がする。それで 次はどこかな?地図を見ると図書館から、少し歩いたところに丘があってそこを越えたあたりに丸が付いてる。でも図書館のような 本のマークはなくて、赤い屋根のお家に丸がはいってる。普通のお家なのかな?とりあえず 行ってみないと、何をしたらいいのかわかんないし、今まで一度も かっこよく剣で戦ってないけど、今度こそ 勇者青葉くんのカッコ良い剣での戦いが、みんなに見せられるといいな。 いつも保育園で、お友達と戦いごっこをして練習してるから、絶対強いはずだもん。早く挑戦してみたいな…
って思っていたら、マムが
「 さあ急ぎましょう」
って言った。もうちょっとだけいい気分に浸っていたい気もしたけど、困ってる人?えぇっと 猫かな?がいるから、急がないとね…
僕たちは、みんなで丘のほうに歩き始めた。
「そうそう 今度は、抱っこはないよ。」
スズちゃんの方を見て先に言っといた。スズちゃんは、残念そうにしていたけど、自分で歩いてもらわないと、僕も疲れちゃうからね…
みんなで、おしゃべりをしながら、丘を登って、頂上まで着いて、上から下を見ると、あれ?お家の前に 大きな湖があって、これじゃあ 歩いていけないね。どうしたらいいんだろう? 考えないとダメみたいだね。そこで みんなで相談タイム!ああでもない、こうでもない。やっぱり お水に浮かべるものって言ったら お舟だよね。マムに聞いてみた。
「お舟用意できない?」
「みんなで乗れる大きさのお舟」
マムは
「やってみるけど…」
困った顔をした。
「どんなお舟?」
「絵に描いて見てくれない?」
マムに言われて地面に、公園で乗ったことのあるボートの絵を描いてみた。マムは、ニコニコしながら描き上がるのを見ていた。描き上がると、ウンウンと頷いてまた魔法の呪文を唱えた。もう覚えちゃったよ。『ニャンニャカニャン』マムと一緒に唱えちゃった。マムは、ちょっとびっくりしてたけど、笑顔だったから怒ってないみたい。魔法の呪文を唱え終わると、湖に小さなボートが浮かんでいた。みんなで 乗り込んでみて気がついた。これ誰が、漕ぐの?タマちゃん?無理だよね〜じゃあスズちゃん?もやっぱり無理だよね〜マム?は小さいから もっと無理だった。ということは、やっぱり僕?大変そうなんだけど大丈夫かな?僕しかいないから、頑張らないとダメだよね。僕は、オールを持った。僕は、パパの見様見真似でオールをグルグル回してみた。思ったように出来なくて、バタバタしている鳥みたいになってたけど、ちょっとずつ前に進めるようになってきた。すると前に座っていたスズちゃんとタマちゃんも前足を水につけて漕ぐのを手伝ってくれた。『いっちに、いっちに』掛け声をかけて湖の向こう岸まで漕いで行った。どのくらいかかったかな?やっと向こう岸についてびっくりしちゃった。だってお水は、赤い屋根のお家の窓から、流れてきているんだもん。
確かこのお家だよね地図の丸のついてるところ。なんでお家からお水出てるの? 水道の蛇口しめ忘れちゃったのかな?でもそうなら 早く閉めないと…
僕は、お家のドアを開けてみようとした。
するとマムが、「お水がたくさん出てきて流されるかもしれないから、上からいきましょう。」
ってアドバイスしてくれた。
僕一応、泳げるけど 幼稚園のプールで十メートルだから、こんなにいっぱいのお水だと溺れちゃうかもしれないね。またマムが呪文を唱えた。
「ニャンニャカニャン」
すると 僕の背中に マムと同じトンボの羽みたいな羽が生えた。スズちゃんやタマちゃんにも生えていた。
マムが
「動かしてみて…」
って言ったので
『動けって』念じてみた。するとふわっと地面から足が離れた。
「すごい!!!」
「ぼく飛んでる。」
生まれて初めて空を飛んじゃった。この気持ちは、一生忘れないで覚えておかないとダメだね。
「これで、大丈夫。二階から入れるわ。」
「さぁ なかにはいりましょう。」
マムが言った。どこから入るかな?危なくないように考えないと…
僕は、上を見た。窓がある。そこは、お水が出ていないから大丈夫みたい。そこから行こう。僕たちには、羽があるから 高いとこも平気だしね。
僕たちは、二階の窓のところまでやってきた。
窓をトントン叩いて
「こんにちは 誰かいませんか?」
声をかけてみた。
よそのお家だからね、勝手に入っちゃダメだから、ちゃんと声をかけてみた。すると子猫が一匹こっちをみて
「お兄ちゃん 何してるの?」
「その羽かっこいいね。」
って返事をしてくれた。僕は、入ってもいいか?聞いてみたら、子猫は、窓を開けてくれた。
「お客さん、久しぶりで 嬉しいな。」
「一緒に遊ぼう」
子猫に誘われちゃった。遊びたいのは、確かなんだけど、僕たちしないといけないことがあるから、まずは、それを片付けないとね。そこで聞いてみた。
「このお家から いっぱいお水出てて怖くないの?」
「早く逃げないと、あぶないよ。…」
すると「お水じゃないよ…ママの涙だよ」
「だから怖くないよ!」って返事が返ってきた。
「えっ 涙なの?泣いてるの?」
「うん…」
「お兄ちゃんが、迷子だけど お家に私がいるから、探しにいけないんだって…」
「ママは、ずっと窓のところでお兄ちゃんが帰ってこないか?顔を出して外を見てるの。」
「それで心配で泣いてたのか?」
お家の前に涙の湖ができちゃうぐらい心配してるんなら、なんとかしてあげたいね。
そこで、またまた相談タイム!どうするか考えたけど、
「子猫と一緒にお留守番」
これしかないよね。僕たち迷子のお兄ちゃんネコ見たことないし、僕たちが、子猫とお留守番している間に探しに行ってもらうのが一番だよね。それで、みんなでお留守番することにした。
僕は、子猫にママに合わせてもらうように頼んだ。子猫は、嬉しそうにママを迎えに行った。階段を登ってきたのは、きれいな白ネコだった。やっぱり今度のモンスターも猫だった。そしてまたまた 剣の出番もなさそうだ。僕は白猫に挨拶した。
「こんにちは ママ猫さん 二階から 勝手に入ってごめんなさい。」
「僕たち 子猫ちゃんから 理由を聞きました。」
「もし 僕たちでよかったらこの子猫ちゃんとお留守番しているので、お兄ちゃん猫さんを探しに行ってください。」
凄く上手に言えた。もしママがいたら 褒めてもらえたと思うな…
僕の言葉を聞いて、ずっと泣いていた白猫さんの顔が笑顔になった。
「ありがとう 助かります。」
「この子を残して 探しにいけなかったので困っていたんです。」
「本当に ありがとう あの子を見つけたらすぐに帰ります。」
「それまでこの子をお願いします。」
白猫さんは、きれいな声で、丁寧にお礼を言って、急いで 出かけて行った。さぁ 何をして お留守番しようかな? 子猫ちゃんを泣かさないようにしないとね…
僕は子猫に聞いた。
「ママが 帰ってくるまで 何して遊ぶ?」
「お母さんごっこ!」
まず最初は、リクエストに答えて みんなで お母さんごっこをすることになった。僕が、お父さん 子猫ちゃんがお母さん、タマちゃんとスズちゃんが子供でマムが赤ちゃんだって…
子猫ちゃんが、おままごと道具を出してきた。ちょっとの間は、子猫もご機嫌で遊んでいてくれたけど
突然
「ママ」
って泣き出した。僕たちが、どうしたらいいか、あたふたしていたら 探しに行くって外に出ようと靴を履き始めた。外は、湖になってるから 子猫が出ていくのは、危ない。絶対だめだよ。何か 面白いことを考えないと、お外に出ちゃう。
そこで とっさに
「宝探ししよう」
って言っちゃった。
子猫は、振り返りながら、
「宝探し?」
っ興味を示した。
「そうだよ 僕が、今からこのビー玉をお家の中に隠すから、それをタマちゃんとスズちゃんとマムと子猫ちゃんの誰が一番早く見つけるか競争するんだよ。」「楽しそう〜」
「うん 楽しいよ 一度やってみよう」
そう言って誘ってみたら
「うん。」
って言って、ニコニコしながら戻ってきた。
とりあえず 出ていくことは、あきらめてくれた。よかった。
「お兄ちゃん はやく…」
待ちきれなくなったみたいなので、宝探しを始めることにした。
「じゃ みんな十数えて…今から二階のこの部屋のどこかにビー玉隠すからね…目もつぶってね」
「用意スタート」
僕の掛け声で みんな目隠しして十数え始めた。さぁ どこに隠すかな? 難しいとこ考えないと…
一回目は、ベッドとお布団の間に隠した。
「もういいよ…」
僕の声にみんな目隠しをやめて 部屋中探し始めた。僕は、それをソワソワしながら 眺めていた。みんながいろんなところを探している。机の下、引き出しの中、ベッドの下『惜しい』違うとこを探してるのを見てると、おかしくて笑っちゃいそうになった。でも笑ったら、バレちゃうからじっと我慢してみてた。1十五分ぐらいかな?みんなめいめいで 思うとこ探してたけど、見つからず…
『ヒント』
をだすことになった。
僕は、部屋の真ん中あたりに立って右側を向き
「ここから 向こうにあるよ」
とさがす場所が、半分でいいことを教えてあげた。また 皆の搜索が始まった。なかなか見つからないもんだね…
みんな お布団の中は、探すけどお布団とベッドの間までは見ない。凄くいい隠し場所だったみたい。子猫ちゃんからギブアップの第二ヒントの要求があったので、思い切って
「ベッドのどこかに隠してるよ…」
そこまで 言ってあげちゃった。また 皆は、お布団の中やベッドの下を必死で探してる。皆 『惜しいよ』凄く近いとこまで来てる。もうちょい考えてみて…
僕は、励ましながら 様子を見ていた。最後の最後のヒント
「ベッドの上を子猫ちゃん歩いてごらん…」
僕は、声をかけた。子猫は、何事?って顔をして 言われた通りベッドの上を歩き出した。
それを見ながら僕は、
「もっと、すこーしずつ歩いてごらん」
すると子猫ちゃんは、すり足でちょっとずつ進んでいった。
「あっ!」
子猫の顔が一瞬で輝いた。ベッドから大慌てで飛び降りて、ふとんを持ち上げ始めた。
「あった〜!」
「ほら見つけたよ 私の勝ち…」
「子猫ちゃんの勝ちだね〜」
僕は子猫の顔を見ながら 拍手してあげた。ビー玉を一番に見つけてすっかりご機嫌になった子猫は、もう一回とせがんでくる。ママを忘れて遊んでてくれるのなら、大助かり…
二回戦の準備に取り掛かった。また皆に、目をつむってもらい十まで数えてもらう。僕は、その間に次の隠し場所を探す。ちょっと面白いこと考えちゃった。隠し場所に僕のポケットとかいいよね〜
この部屋の中にあるし、まさか 僕が持ってると思ってないだろうからみつからないような気がする。でも隠したフリしないとすぐバレるよね。僕は、部屋の中をうろうろ歩いて隠してるフリをした。
「十…」
の声が聞こえたので
「もういいよ…」
僕は、返事した。皆は、また一斉に顔を上げてビー玉を探し始めた。そろそろ飽きてきた頃、玄関の辺りが騒がしくなった。
「ただいま〜」
「ママだ!」
子猫の声が一層弾んだ。大慌てで階段を降りていくのを慌てて追いかけた。「ママ〜」
嬉しそうにママ猫に飛びつく。ママも嬉しそうにギュッと子猫を抱きしめてスリスリしている。それから顔を上げて僕たちのほうに向き直り
「どうもありがとうございました。」
「おかげさまで、この子を見つけられました。」
そう言ってスカートの後ろにいた兄猫を紹介してくれた。
「この方達が、みこちゃんといてくれたから探しに行けたのよ…お礼を言いなさい。」
促されて兄猫は、小さな声で
「ありがとう」
って言ってくれた。ママ猫の涙は、すっかり乾いていて優しい笑顔になっていた。マムが、
「これで、外の湖もすぐに、干上がって元の広場になるでしょう。」
ニッコリ微笑みながらいった。
『パンパカパーン』またまた、もひとつおまけのまたファンファーレが鳴った。三つ目のポイントクリアだね。湖を作ったママ猫が泣き止んだので、しばらくしたら 湖は、消えて元に戻る。これで、ここも通れるようになるからよかったね。僕のカードが、ピカピカ光ってる。マムが 大きなハンコをどっかから出してきた。もちろん白猫のハンコだと思ったら、子猫ちゃんと兄猫ちゃんも映っていた。とってもかわいいハンコで嬉しい。白猫親子にお別れを告げて僕たちは、次を目指さないとだね…
さぁ 出発だ。そうそう忘れていた、僕のポケットのビー玉は子猫ちゃんにプレゼントしておいた。僕たちとの記念にね…
次の場所は、どこかな?ニャンニャか王国の地図を見てみた。今度は、ちょっと 遠そうだね…
ここから かなり離れたところに大きなお城がある。その前の通りとお城の両方に丸がついてる。マムの話だと、この大きなお城が,ニャンニャか王国の王様のお城なんだって…
お城の中にもモンスター?がいるのかな…
タマちゃんたちは、モンスターって言うけど、今まで出会ったのは、皆 猫さんだったんだけど…。
怒ってたり、悲しいことがあって、モンスターみたいになっちゃってただけだったみたい。今度のモンスターも、何か困ったことのある猫さんかな?それとも今度は、ホントのモンスターで、僕の剣の出番になるのかな?ちょっと怖いけど、楽しみだね。
「さぁ 頑張って歩くぞ!」
「タマちゃんもスズちゃんも頑張って歩こうね…」
「抱っこは、なしだからね。」
僕が、先に言っちゃったから、タマちゃんもスズちゃんも ガッカリしてる。その姿が、かわいくて笑っちゃった。どんどん どんどん 歩いて行こう。皆で歩いてたら、あっと言う間に着いちゃうよ。
僕たちが、頑張って歩いたので、思ったより随分早く、お城の前の道路に出た。そこで 僕は、びっくりしちゃった。だって車が、すごい勢いで走ってる。僕が、住んでるとこと一緒…
ニャンニャカ王国にも車が、走ってるなんて思わなかった。どうやって 猫が、運転するのか 見ていたら、上手に口にハンドルを咥えて、運転してた。僕が、びっくりしてたから、マムが、教えてくれた。ニャンニャカ王国のくるまは、魔法で動くので、ハンドル操作だけで、進むんだって…
あとは、魔法で、前に進んだり、停まったり、後ろに進んだりするらしい。ハンドルも魔法で 動かせば良いのにって思ったけど、ハンドルぐらいは、自分で動かさないと、運転してるる気がしないんだって…
なんか変なの。
でも 僕もパパみたいに車を運転したいから、手押し車のハンドルは、形だけだけど ちゃんと持って運転してる。それと一緒かな…
でも ここのどこにモンスターがいるんだろう?何もおかしなとこなさそうなんだけど…
するとスズちゃんが、
「この道渡れないの…」
って言った。
「何で。」
「おまわりさんが、交通ルールが守れないなら通っちゃダメって…」
「もしかして、今度は、そのおまわりさんが、モンスター?なの」
スズちゃんは、大きく首を縦にふった。でも 間違ってないよね。交通ルールは、守らないといけないんだけど…
僕は、も一度 道路を見た。スズちゃんの言っているお巡りさんは、お城の前に立っていた。とっても大きな黒猫だ。確かにお城の前の横断歩道は、誰も通っていない。僕たちは、おまわりさんがいる横断歩道の前まで、歩いて行った。そして僕たちが、横断歩道を渡ろうと一歩踏み出した途端、黒猫は、首からかけていた笛を吹き鳴らした。
『ピ、ピッー!』
すごい大きな音なので、びっくりして転びそうになっちゃった。笛を吹いた黒猫が、すごい勢いで、僕たちのところまで、走ってきた。
「横断歩道を渡るルールが、守られていません。」
「えっ 普通に渡ろうとしただけだけど、間違ってますか?」
僕が、おまわりさんに聞いた。するとおまわりさんから返事が、返ってきた。「もちろん、間違ってます。」
「横断歩道をわたるときは、右見て、左見て、も一度右見て手を上げて渡る。」「あなたたちは、ただ渡ってきただけですね。」
確かにそうだった。交通教室で習った通りだった。僕は、おまわりさんに謝っても一度ちゃんと言われた通りに渡ろうとしたら、また
『ピッ、ピー』
って笛が吹かれた。
「一度間違えた方は、私の出す問題に答えられないとお通しするわけにはいきませんね。」
「えっ それは大変。」
僕は、スズちゃんの方を見た。
「ここの問題が、解けなくてここ渡れないの?」
僕が、聞くとスズちゃんが
「うん、そうなの。」
悲しそうに下を向いて答えた。そういうことか、皆、問題が解けなくて渡れなくなったんだ。どんな問題が出るかわからないけど、挑戦しないといけないってことだね。つまり、この問題に答えておまわりさんに、ここを通してもらうことが、今回ののクエストだね。
「おまわりさん 僕たちどうしてもここを通りたいんだけど、通してもらえませんか?」
黒猫のおまわりさんは、
「君たち 交通ルールが守れないから、あぶなくてしかたない…
事故が起きるといけないので、このままじゃぁ、渡らせられないね。」
黒猫のお巡りさんは、首を傾げて考えてるみたいだった。何か閃いたみたいにポンと手を打って、
「今日の問題は三問です。」
「それに全部正解してください。」
「わかりました。」
「頑張って答えてみます。」
僕は、自信はないけど皆のためにも頑張ってみることにした。黒猫おまわりさんは、頬に手を当てて、そして ゆっくり大きくうなずいた後に
「じゃぁ 第一問 信号の色で、赤、黄、青のそれぞれの意味は何かな?」
僕は、ラッキーって思った。この問題は、いつも信号を渡るときに ママと確認しながら渡るからよく知ってる。よかった。知ってる問題で…
「赤は、止まれ 黄色は、注意 青は、進めです。」
大きな声で自信満々答えた。
「正解!良くできました。」
おまわりさんは、にこにこしながら、ほめてくれた。
「じゃあ 第2問 道の歩き方です…」
「車は、左、では、歩く人は…」
これも知ってる。右側通行ってママや先生に言われるものね…
今度も大きな声で答えた。
「人は、右側通行です。」
「よろしい!」
「なかなか良く知ってるね…」
「では 最後の問題です。」
「車道を猫が横切っていたら、左右の確認をしないで、飛び出してもいいか悪いかどちらかな?」
あれ?なんか今までの問題と全然違うんだけど、どうしたんだろう。もちろん飛び出し禁止だから、答えは、悪いなんだけど…
なんか 心がもやもやする。忘れていることを思い出せない時みたいな感じ…
どうしてこの問題の時にだけこんな気持ちになるんだろう…
僕が考え込んでいると、黒猫おまわりさんが
「どうしたのかな? 」
「最後の問題は、難しすぎたかな?」
僕の顔を覗き込みながらいった。僕は、はっとして
「大丈夫です。」
「わかります。」
「答えは、飛び出したら悪いです。」
黒猫おまわりさんが、顔がくちゃくちゃになるほど優しい笑顔になって、
「正解 三問共答えることができたのは、君が初めてだよ。」
「ほんとに嬉しいことだ。」
「君たちは、ここを通っても大丈夫だな。」
「事故の心配はないだろう。」
「ここの住民たちは、交通ルールを知らないので、事故に遭うものが多い。」
「そこで、事故が起こらないように、番をするのが日課になった。」
「でも私が、ここにいてもほんとに皆、ルールを守らない。」
「そのせいで 私は、交通ルールを注意ばかりしている怖いおまわりさんになってしまった。」
「初めて 交通ルールのわかる子が現れて、今までの自分が行き過ぎてたと気づいたよ。」
黒猫おまわりさんは、そう言って僕の頭をずっとなでなでしてくれた。でも僕は、最後の質問がまだ頭に引っかかってもやもやしたまんま…
黒猫おまわりさんが、頭を撫でてくれているのに難しい顔のまんまだった。それに気づいた黒猫おまわりさんが声をかけてくれた。
「全問正解で、ここを渡れるのに浮かない顔だね…」
「何か心配事かね?」
僕は、正直に最後の問題が心に引っかかって、もやもやしていることを話した。黒猫おまわりさんは、優しい顔で
「君に取って、大事な何かがあるんだろう。」
「頭が、忘れていても、心はちゃんと大切な何かがあることを覚えている。」
「そういうことなんだよ…」
「きっと」
「君は、それが、なんなのか良く考えないといけないんだよ…」
「そうすれば 君のもやもやも、なくなるだろう。」
「さぁ ここを渡りなさい。」
「君たちには、その資格があるんだからね。」
黒猫お巡りさんが、僕の背中を軽く押して、前に進むように促してくれた。僕は、一度振り返り、黒猫おまわりさんに大きくうなずいて、目の前にある横断歩道を一気に渡った。ちゃんと左右の確認と、手もピンと伸ばしてあげるのも忘れなかったよ。渡り終えて振り返ると黒猫お巡りさんが、かっこよく敬礼して見送ってくれていた。僕は、黒猫おまわりさんに手を振って別れを告げた。
すると思っていた通り、『パンパカパーン』ファンファーレが鳴った。今回のポイントも、なんとかクリアできたってことだね。よかった。マムが大きなハンコを持って待ち構えている。僕のカードは、今回もピカピカ光っている。マムが今、光っている、お城の前の横断歩道のところに、黒猫おまわりさんのハンコを押してくれた。いつもなら、すごく嬉しいけど今回は、僕の心がもやもやしたまんまで、素直に喜べない。黒猫おまわりさんの言った通り 僕が僕の心と相談して解決しないといけないんだろうね。心配そうに覗き込むスズちゃんやタマちゃんに、微笑み返して
「さぁ お城に向かおう。」
「ここが 最後のポイントだね。」
元気に言った。
僕は、お城の前で上を向いて、お城を眺めてみた。とっても大きい…
今まで いろいろあったけど やっとここまで来ることができた。サビ猫に、メガネのキジ猫、白猫ママに黒猫おまわりさん…
スズちゃんたちは、モンスターって言ってたけど、皆いい人?いい猫かな…ばかりだった。
ただ、ちょっと誤解があっただけのような気がする。その証拠に僕は、まだ一度も マムに用意してもらった剣で、戦ったりしていない。大事なことは、『ちゃんと何が正しいか考えること』そうすれば、どうしたらいいかわかって来る。ここに来る前の僕は、困った子だったんだなってわかった。ママやパパ保育園の先生の言うことをちゃんと聞いてこなかった。嫌だとか、やりたくないって、しないといけないことをしなかった。
それじゃぁ ダメだって…
わかってなかった。どうしてママやパパ先生が、僕に言うのかちゃんと考えないといけないんだってことがわかった。帰ったら、ちゃんと自分で考えるようにしていこう。そう思った。
さぁ もうすぐ 冒険も終わりになる。最後のクエストに出発しよう。僕は、お城の扉を開ける。一歩進んで、声をかける。
「こんにちは 僕、青葉です。」
「ここに来るように言われてきたんですが、どなたかいらっしゃいますか?」
すると 奥から誰か出てくる気配がした。暗くて良く見えなかったけど、側まできて驚いた。だってそこに居たのは、ピーマン大好きサビ猫だった。
「あなたが、ここの王様ですか?」
僕が、聞くと サビ猫は、お腹を抱えて笑いながら反対に聞いてきた。
「俺が王様に見えるか?」
「見えないけど…」
「ここにいるから…」
僕が、答えると、サビ猫は大きく頷いて
「俺は王様じゃない。」
「ここの管理を任されている執事みたいなもんだ。」
「それより お前ら 良くたどり着いたな…」
「見直したぞ。」
そう言って中に通してくれた。
「サビ猫さんは、ここの人なのに、どうしてあんなところでピーマン早食い競争なんてしてたの?」
「おかしいよ。」
僕は、不思議に思っていたことを尋ねてみた。
「あぁ あれか…」
「あれはな…」
「ここの奴らは、俺の作ったピーマン料理を 誰もちゃんと最後まで食べてくれない。」
「どうしたら ちゃんと食べてくれるか考えてたら、いつの間にか あんなとこで あんなことをしていた。」
「夕食の買い出しに行ったとこまでは、覚えていたんだがな…」
不思議そうにポツリと言った。
「あん時は、悪かったな…」
今度は明るい声になっていた。
やっぱり サビ猫は、他の猫が、サビ猫の作ったピーマン料理を最後まで食べないのは、食べないんじゃなくて食べられないんだって、気づいてなかったんだ。だから、教えてあげることにした。
「サビ猫さん 普通 猫は、ピーマン食べたりしないよ。」
「だから 皆残しちゃうんだよ。」
「なんだと…」
「 本当か 道理で皆食べないわけだ。」
そう言ってガックリと肩を落とした。
お城の長い廊下を歩きながら、僕たちは話をした。やがて サビ猫がある部屋の前に来て、部屋の鍵を開けた。
「ここで 待っていてくれ…」
「王様を呼んでくる。」
「自由にくつろいでいてくれていいからな…」
そう言って部屋を出て行った。僕たちが通された部屋は、すごく広くて 正面にピカピカ光っている立派な椅子が置いてあった。誰が見ても王様が座るんだろうってわかる椅子だったので、さすがに座るのは、ちょっと遠慮した。部屋の中央には、ながーいテーブルがあって、椅子がたくさん置いてあったので、僕たちは、そこに座らせてもらった。良くテレビで見るながーいテーブルで、 そこに座って待っていると、足音が聞こえてきた。やっと王様が、来られたのかな?そう思うと緊張してきた。王様って今まで出会ったことがないから、どうしていいのかわからなかったけど、とりあえず、お行儀良く座り直した。僕たちのいる部屋の前で、やっぱり足音は止まった。するとドアをノックする音がした。
僕は、
「はい!」
って返事した。
返事を聞いて、始めに入ってきたのは、ピーマン大好きサビ猫だったけど、黒のスーツに着替えていた。首には、カッコいい赤い蝶ネクタイをしていた。
「王様が、来られた。」
「粗相のないように…」
そう言ってドアを押さえたまま後ろに下がった。僕たちは、椅子から立って、サビ猫がしているように頭を下げた。本当は、どうしたらいいのかわからなかったから、真似をしただけだけど…
王様が僕たちの前をゆっくり歩いてピカピカの椅子に座った。その後ろにサビ猫が付き従っていた。
「ご苦労…」
「顔を上げて、座ってくれ。」
どこかで聞いたことのある声が聞こえた。僕が、顔を上げて王様を見てびっくりした。だって王様は、茶トラの猫だったけど顔が、僕そっくりだった。そこでわかった。さっき聞いたことがあるような気がした王様の声は、僕の声にそっくりだと言うことに…
「どうして…」
僕が、戸惑って つい声を出してしまったら、すかさずサビ猫に叱られた。
「王様の前で、そのような物言いは、失礼である。」
「控えよ…」
「ごめんなさい」
僕が謝ると王様は、
「良い いつも通りで構わん…」
「彼らは、このニャンニャカ王国を救ってくれた勇者だからな…」
「ここまで たどり着いたと言うことは、四匹のモンスターを既に退治してくれたと言うことだ。」
「礼を言わねばならん。」
「助かった、ありがとう。」
「いえ モンスターなんていませんでした。」
「皆 ただ 困っていただけでした。」
僕が答えた。
「ほう そうなのか… 」
「でも 我々では、どうしようもなかった。」
「助けてもらったことには変わりない…」
「さて 褒美も兼ねて お茶でもご馳走しよう。」
「サビ 用意をするように…」
そう言ってサビ猫の方を向いた。サビ猫は頭を下げて
「かしこまりました。」
と言って出て行った。僕は、気になって仕方ないことを聞いてみた。
「王様 良かったら教えいただけませんか?」
「どうして王様は、僕と同じ顔と声をしているのですか?」
王様は、僕の方を見て
「その話は、お茶を飲みながら ゆっくり話そう。」
そう言って黙ってしまった。
ほんのちょっとのことだったけど、サビ猫がお茶の支度をして戻ってくるまで、王様の前だし、緊張しておしゃべりもできず、じっと下を向いて静かにしているしかなかった。サビ猫が、みんなの前に お茶とお菓子を置いていく。お茶は、紅茶みたいで、お菓子は、僕の好きなクッキーだった。並べ終わると一礼して、後ろに下がった。それを見届けて王様が言った。
「さぁ ささやかだが、始めてくれ…」
僕たちは、お茶とお菓子に手を伸ばした。お茶を飲んで、少し気分がほぐれた頃に 僕たちの座っている前の壁にスクリーンが降りてきた。
「今から 一本動画を用意しているので それを見てくれ…」
「どうして 私と青葉が似ているのかもわかるはずだ。」
王様の言葉が終わると映像が流れ始めた。そこに映し出されたのは、僕だった。
映像は、僕が来る前の日から始まっていた。朝 僕が、目を覚ますと既に朝ご飯の用意ができていた。朝ご飯は、トーストの上に、チーズとハムと玉ねぎとピーマンが乗ったピザトーストとヨーグルトに牛乳だった。でも 僕はピザは大好きだけど、ピーマンは大嫌いなのでお皿の端っこに置いて、ご馳走様をした。やっぱりママに見つかって、すごく叱られた。食事に出されたものは、身体を作るために大事なものだから残さず食べなさい…
いつも言われている。僕は、ママにスプーンに乗せて口元まで持ってこられたピーマンを、口に入れられないようにしっかり口を閉じて抵抗した。そしたらママは、悲しそうな顔をしておまじないをかけてくれた。
「おいしく、おいしく、おいしくなーれ。」
ママは、ピーマンを半分食べてくれて
「これだけは頑張って…」
最後の一口を僕の口に運んできた。仕方ないので、いやいやピーマンを食べた。朝ご飯がおわって僕は、図書館から借りてきた絵本を見ていた。途中で飽きちゃったので、借りてきた絵本で積み木みたいにお家を作ってみた。そこにお部屋の掃除をしにきたママが入ってきて、また叱られちゃった。
「借りたものは、自分のものでないから大事にしないとダメでしょ…」
せっかく楽しく遊んでいたのに…
いやいやお片付けをした。
でも僕は、ぷんぷん怒ったままだったけど…
ママにこれ以上叱られたくないので お庭に出てみた。お庭には、ママが植えたお花がきれいに咲いていた。一つ一つ見ているとお庭の端っこに茶色の小さな何かが見えた。何かな?側に近づいてみると茶トラの子猫だった。
「かわいい…」
僕は、茶トラ猫を触ってみたくて そっと手を伸ばした。茶トラ猫は、
「フッー」
って怒った。尻尾も大きくなってるし 体も丸くなって威嚇している。しばらく話しかけてみたけど、茶トラ猫は、怒ったまんま、クルッと向きを変えて表へ走って行った。僕は、まだ茶トラ猫と一緒にいたかったので、後を追いかけた。お家の前の道路で茶トラ猫に追いついた。抱っこしようと座りこんだところで
『プップー』
クラクションが鳴って振り返ると青い車が僕の目の前に来ていた。僕は、茶トラ猫を抱えたまま動けないで目を瞑った。青い車の急ブレーキの音が響いた。『キキッー』途端に、ガシャーン聞いたことのないような大きな音がして、僕は茶トラ猫を抱えたまま車に轢かれていた。その音を聞いて驚いたママが、裸足で外に出てきている。血だらけの僕を抱えて泣きながら必死に呼びかけている。
「青葉 しっかりして…」
たくさんの人が集まってきている。青い車の運転手さんが、ガクガク震えながら、僕たちをみている。誰か知らない人が叫んだ
「子供が、轢かれたぞ、救急車…」
「誰か急いで電話しろ」
すごく慌しくみんな動いている。ママは、あいかわらず 僕の名前を呼びながら僕を抱えて泣き叫んでいる。やがて救急車が到着して、僕がタンカに乗せられて運ばれる。ママが 僕の手を握って一緒に救急車に乗る。救急車は、すごいスピードで進み始めた。
「うそ…」
僕は、ガタガタ震えていた。心配したスズちゃが僕の膝に乗って僕の顔をみている。タマちゃんは、僕の足元まで来て僕の手をなめてくれている。マムの心配そうな顔が目に入る。
「うそじゃない… 」
「それに まだ終わっていないぞ。」
王様の冷めた声が聞こえた。映像は、続いているけど、内容が頭に入ってこない。気付いたらスクリーンに、頭を包帯でぐるぐる巻きにされて、いろんな機械に繋がれている僕が映っていた。泣きながら僕に話しかけているママ。僕の手をさすり続けているママの姿…
僕は、泣きながら
「ママ 泣かないで…」
「心配かけてごめんなさい。」
「悪い子でごめんなさい。」
いっぱい、いっぱい謝った。僕は、少しずつ思い出していた。スクリーンに映っていたのは、ここに来る前の出来事…
そう 僕は、茶トラ猫を追いかけて道路に飛び出し、車に轢かれちゃったんだ…
黒猫おまわりさんの問題で、心がモヤモヤしていた理由もわかった。王様の声が聞こえてきた。
「わかったかい?」
「君は この世で一番いけない罪を犯したんだよ…」
「自分の命を大切にしなかった。」
「そのせいでママをいっぱい、いっぱい泣かせた。」
「好き嫌いをしたり、物を大切にしなかったり、いろんなことをしているけど、そんなことはたいしたことじゃない。」
「ママやパパより寿命でもなく、先に死んじゃうこと、それが一番いけないことなんだよ…」
「君は、まだ 死ぬはずじゃなかったんだよ…」
「わかるかい?」
「うん…ママ パパ ほんとにごめんなさい。」
もう一度心からママとパパに謝った。その様子を見ていた王様がマムに聞いた。
「神様…」
「 青葉くんは、もうわかったみたいですよ…」
「ちゃんと ごめんなさいが言えたようだし…」
「これで 最後のクエストもクリアですね…」
そういうと王様は、空に浮かんで、僕が追いかけて、一緒に轢かれた茶トラ猫になった。
「そう 僕は、あの時の猫だよ…」
「でも ここでは、あの時のことを 君が思い出しやすいように、君の姿を 神様から与えられた。」
「もし 君が、ここまで辿り着いても、心からママとパパに謝れなかったら、ここで君は、死んじゃうところだったんだ。」
「その時は、僕が死神になって君を連れて行く。」
「そういうことになってたんだ。」
「でも 君は、ちゃんと自分の間違いに気づけたから、僕も猫に戻れた。」
「ありがとう…」
「それに お疲れ様。」
そう言って 微笑んだ。
「あとは、神様お願いします。」
茶トラ猫が、頭を下げると、マムがうなずいた。うなずいた途端にぐんぐん大きくなって、見上げても顔がわからないぐらい大きくなった。
「今回のことは、私も 迷いました。」
「あなたは まだ死ぬはずじゃなかったから…」
「でも あなたは、自分の間違いに気づいていないし…」
「元に戻しても、いつかまた 同じことが、起きるでしょう…」
「だけど、一生懸命あなたを看病しているママを見ていたらかわいそうで、もう一度あなたが、戻るチャンスを与えてみようと思いました。」
「そこで このクエストを思いついたのです。」
「もし あなたが、すべてのクエストをクリアできたら、その時は、ママの元に返してあげようと思いました。」
「そしてあなたは、やり遂げた。」
「おめでとう…」
「ママのところに戻れますよ。」
「私も 一緒に旅ができて、あなたの成長を、この目で見ることができて安心しました。」
『パンパカパーン』
マムが話し終わるとファンファーレが鳴った。
「さぁ 最後のハンコを押しましょう…」
「クリアおめでとう…」
僕のカードが、光っている。マムに差し出すとマムが、カードにハンコを押してくれた。僕にそっくりの茶トラ猫の王様のハンコを…
すべてのハンコが押されたカードがくるくる回り始めた。クエストのクリアのご褒美は、ママのところに元気になって戻れること…
「さぁ 帰る準備をしましょう。」
「ママが 待ってますよ」
「はい…」
「マム、それに 皆もありがとう。」
マムに出してもらった剣とマントは、必要なかったけど僕の姿は、ここに来る前の姿に戻っていた。僕は、ずっと気になって仕方なかったことを最後に聞いてみた。
「でも ひとつだけ 聞いてもいいですか?」
「マムは なぜ ママそっくりなんですか?」
「あなたの側で あなたの成長を確かめるために一緒に旅をすることにしました。」
「そこで あなたが、親しみやすくなるように、あなたのママの姿を借りました。」
「さぁ もう時間がありませんよ…」
「この世界は、あなたがママのところに戻れるか?確かめるために私が作った世界です。」
「役割を終えた この世界は、すぐに閉じてしまいます。」
「閉じてしまうと帰れなくなりますよ。」
「さぁ早くおかえりなさい…」
「わかりました。」
「いろいろお世話になりました。」
「さぁ スズちゃんと タマちゃん行こう…」
僕が呼びかけると、スズちゃんも タマちゃんも悲しそうな顔をした。
「青葉くん 僕たち一緒に行けないんだ…」
「もう 死んじゃってるから…」
下を向いて、タマちゃんが話した。僕は、びっくりしてスズちゃんの方を見ると、スズちゃんも悲しそうな顔のまま頷いた。
「えっ だって、ここにいるじゃない…」
「ママは スズちゃんとタマちゃんは、遠くにもらわれたって言ってたし…」
僕の言葉の途中だったけど、タマちゃんが教えてくれた。
「青葉くんが、まだ小さかったから ママが君にショックを与えないように遠くに行ったって言ったんだよ。」
「僕たち どうしても 青葉くんの手助けがしたくて、神様にお願いして一緒に行けるようにしてもらったんだ。」
「君と一緒に旅ができて、楽しかったよ…」
「さよなら 青葉くん」
マムが 魔法をかけ始めた。僕の姿が 薄くなる。
「でも きっと いつかまた会えるよ…」
「その時まで さよなら…」
スズちゃんとタマちゃんの声が小さくなる。僕は、マムの魔法でこの世界から 消えていった。
「さよなら 皆 ありがとう…」
消えてなくなるまで僕は、皆に手を振った。
次に気がついたのは、病院のベッドの上だった。映像で見た時よりもずっと時間はたっていた。ママは、お花の水をかえていた。
「ママ 心配かけてごめんなさい。」
僕の声に振り向いたママの目から いっぱい涙がこぼれた。
「青葉…」
ママが、僕の首に飛びついてきた。
「よかった…」
「ずっと 心配で心配で…」
そこからは、声になってなかった。2人で抱き合ってずっと泣いた。
何日かして 僕は退院することができた。お医者さん達は、「奇跡だ」って口々に騒いでいたみたいだけど ママとパパだけは、絶対元気に治るって信じていたって教えてくれた。久しぶりにおうちに帰ると、スズちゃんとタマちゃんそっくりの子猫が、ソファーで寝そべっていた。
「あっ スズちゃん タマちゃん」
僕は、二匹を抱き上げた。
「そっくりでしょ…」
「 パパの会社の人のお家で産まれた子猫のうちの二匹が、タマちゃんとスズちゃんそっくりだったので、いただいたの…」
「青葉くん 猫好きだしね…」
「かわいいでしょ?」
「うん かわいい…」
「名前は スズちゃんとタマちゃんでいいの?」
「ええ…」
「ママもパパも、その名前がいいと思うわ」
灰色猫のスズちゃんとミケ猫のタマちゃん、ほんとに また会えたね…
すると二匹がうれしそうに
『ニャー』
って鳴いた。僕が、二匹を撫でていると…
玄関で 声が聞こえた。
「ただいまぁ」
パパが 帰ってきた。僕は、急いで玄関に迎えにいった。パパの手の中には、茶トラの子猫が眠っていた。ひと目で王様だってわかった。
「青葉くんが あの時抱っこしていた猫も元気になったよ。」
「これも何かの縁だからね…」
「うちで 飼うことにしたよ…。」
「やったー 」
「これからも 皆一緒だね。」
「さて 名前を どうしよう?」
パパが聞いた。
「王様!」
僕は答えた。
「えっ!王様?」
「そう この子は王様なの…」
パパとママは、変な顔をしていたけど
「青葉くんが、それでいいなら いいか。」
パパが笑いながら言った。
読んでくださってありがとうございました。青葉君は、五才にしてますが、もう少し大きな子供の行動ですね。子供のいるお宅の日常に照らし合わせたつもりです。こんなことある、あるって思いながら読んでもらえたら、嬉しいです。
ちなみに メンタル弱めです。ツッコミは、お手柔らかにお願いします。