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エピソード3 鳩時計

作者: ネルカ

皆さんの家には必ずと言っていいほど時計があると思います。それは壁掛け時計でしょうか?置時計でしょうか?我が家には古ぼけた鳩時計が掛かっております。本日はこの鳩時計にまつわるお話をしましょう。

鳩時計をお持ちの方、ご自宅の鳩時計を眺めながら読んで頂ければ幸いです。

なぜって?それは……まぁ、話を聞いてからにしましょうか。


先程お話した、我が家の鳩時計ですが、実はこれ祖父から頂いたものでして。祖父が体調を崩し入院する際、がらんどうの家に置いておくのも寂しかろうと何故か我が家によこしたのです。この鳩時計は文字盤が真ん中にあり、鳩がでる窓は両開きの黒塗りの扉、いかにも鳩時計というような家の形をしています。振り子の部分はドングリの葉を模したような重りが付いていて、全体的に木でできた温かみのあるデザインです。もちろん、鳩時計ですから毎時ゼロ分に白い鳩が扉から飛び出し、ぽっぽー!と鳴きます。本当にどこにでもある鳩時計ですが、1つ怖いところがありました。それは古いからなのでしょうか、電池が無くなってくると飛び出す鳩の勢いがおち、鳴き声も低くなるのです。ぽっぽー!が

ぽっ……ぽーー……ぽっ……ぽーー

のようになってしまいとても気味が悪い。しかし何故か祖父はこの鳩時計が大のお気に入りで、がらんどうの家より、娘の家へ置こうとよこしたのでした。既に我が家には壁掛けの時計があったので、当時時計の無かった私の部屋に鳩時計をかけることにしました。私は内心少しだけ嫌でしたが、まぁ、時計が無いのは不便でしたので、使うことにしました。


ある冬のことです。家族は町内会の集会に出ていて、家には私ひとりでした。だいぶ鳩時計の電池が無くなってきていて、そろそろ替え時かなぁ?と思っていました。忘れもしません。夜の7時15分頃、外はからっと乾燥していてきりりと寒い夜のこと。星がよく見えていました。毎時ゼロ分になるはずの鳩時計が突然鳴き出したのです。それも電池が無くなりかけの低い声でゆっくりと鳴くのではなく、甲高く物凄い勢いで鳴きだしました。


ぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽー!!!


明らかに8回いや12回よりもおおく鳩は鳴き続けます。私は怖くなりました。こんなに鳴くなんておかしい!何とかして止めなければ!

私は急いで泣き喚く鳩時計を壁から外し単一電池を外しました。しかし、


ぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽー!!!


と鳩時計は電池が入っていないのに鳴き続けました。さらにあろうことか時計の針が物凄いスピードで回り出したのです。私はもう、鳩時計を持っていることはできず、床に置いて逃げ出しました。それでも背後から


ぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽーぽっぽー!!!


と鳩時計の声は聞こえ続けます。時計から抜き出した単一電池を握りしめ、私は急いで母親に電話をしようとしました。


プルルルルルルルルルルルルルル…


私が電話をかけるよりも少し早く電池がなりました。私はゴクリと息を飲み、電話の受信欄を見つめました。電話の相手は母でした。私はそれを確認するや否や、すぐに受話器をとり、母に助けを求めようとしました。しかし、電話の向こうの母は泣いていました。母は鼻を啜りながらこういいました。

「おじぃちゃん、ついさっき突然容態が悪くなって亡くなったって。私…間に合わなかった」


もう、鳩時計の声は聞こえませんでした。手の中の単一電池は冷たく、冬の寒さがきりりと私の周りを囲っているだけでした。


それ以来、不思議なことに鳩時計は鳴かなくなりました。時計は狂うことなく時を刻むのに。私は思うのです。鳩時計は大事にしてくれた祖父の異変を伝えたかっただけではないか?と。鳩時計をお持ちの方、是非大切にしてあげてください。何かの時に教えてくれるかもしれませんよ?


おしまい

いつものように誤字脱字に御容赦ください。

ちなみに、この鳩時計は実際のモデルがありますよ。

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