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第2話 彼女の価値


「助けて欲しいとおっしゃっておりましたが、詳しい内容をお聞きしても?」


別室に連れられ飲み物や菓子を出されて、落ち着くこと数分、

姿の見えない夢咲ノアと名乗る男は話を切り出す。


「身辺警護でしたら警察や警備会社の方がしっかりしていると思いますが・・・」


「故郷の警察では手に負えないと言いますか・・・」


黒森アリスは俯きながら小さく呟く。


「ふむ、私たち【EVERYTHING】は名前の通りどんな依頼でもお受けする何でも屋です。

様々人材が在席しておりまして、町の掃除から要人の護衛、果ては暗殺から世界平和までお客様がご依頼頂く内容によって、仕事にあった仲間が依頼をお受けします。」

「・・・中には暇つぶしで依頼を受ける人もいますけど、もちろん。ご希望の人選を指名することも出来ますよ。指名料金とか発生しますけど・・・。その他、依頼時に起こる負傷や保障については、後ほど説明を~~~」


仕事について語るノアを話半分でアリスは視ている。

(姿は見えないが声の質的に20代位だろうか?)

顔が見えない(※透明の上、白色の仮面)が気さくな感じで話しているノアは恐らく笑っているのだろうかと顔を想像する。

また本当にこんな所で自分が望む結果を得られるか考え込む。

そんな中、


「~~~リス様、アリス様?」


「!!?はい!」


「じっと私の顔を見ていたようですが、顔に何か付いておりますか?」


「い、いえ」


「ああ、この仮面が不気味等で嫌でしたらおっしゃって下さいね。早急に代わりのモノを用意しますので。」


ノアの発言には嫌悪感を感じさせず、純粋に思ったことをアリスに問う。


「い、いえ、そう言うわけで無く考え事をしてしまって、すいません。」


アリスは申し訳なさそうに呟く。


「いえいえ、身が危険な時に無神経で申し訳ございません。

マニュアル通り進めることが癖になっておりまして、

この際マニュアルは一旦置いておいて、

先に警察でも手に負えない状態を具体的にお聞きしましょう!」


そんなアリスを見てノアは態度を変えることなく会話を続ける。


「実は私、故郷では有名な家の出身で少し前までは幸せに暮らしていたんです。」

「小さいながら美しい領地、優しい両親、仲の良い友人、気さくな使用人の方々、

私なんかには、もったいない位に毎日が幸せでした。」

「ただ少し前に故郷に強盗が押し入って来て、私の全てを壊していきました。

両親は殺され、屋敷は燃やされ、友人は弄られて・・・」


その時の光景を思い出したのかアリスは震えていた。


「・・・それは、お悔やみ申し上げます。」


ノアは、先程までの気さくな感じは無くなり、哀しみと心配のこもった声で答える。


「いえ、お気遣い頂きありがとうございます。」


「不躾な質問をさせて頂きますが、そんな中どうやってここまで?」


「ノアさんは【遺産】についてはどれ位ごぞんじですか?」


アリスはノアの質問に質問で返す。


「【遺産】とは通称【神々の遺産】の事ですか?・・今より遥か昔の遺跡などから見つかるにも関わらず現代でも摩訶不思議な力を持っており、まさに神が作りし技術や物を指す名称。と言う認識ですが、間違ってないでしょうか?」


「はい。その通りです。私自身襲われた理由ですが私は昔大きな事故に会い、一度死にかけました。その時両親が【遺産】を必死に探してくれて生き永らえたんですが、どこからか【遺産】について情報を得た盗賊に目をつけられて。なんとか隙を見て逃げだし、逃走の道中でここの噂を聞きまして・・・」


「なるほど。【遺産】の内容についてはお聞きしてもよろしいでしょうか?」


確かめるかのようにアリスについて質問をする。


「・・・父から聞いた内容ですが、人体の細胞を大幅に活性化させ大抵の傷などは完治するというものです。。この遺産のおかげで助かりましたが、その所為で酷い目にも沢山あいました。」


アリスは自身の能力について詳しくは知らない様だった。

【遺産】については、現在数多く見つかっており指輪やブレスレットなど身につける物から、製造書や魔術書といった物まで幅広く存在している。

遺産によってもランクが存在し、一番低いランクでも売れば屋敷が建つ値段になる。それこそ高ランクの遺産など国を動かすどころか世界をも破壊しかねないレベルの物も過去に発見されている。

研究の対象や国による管理になる場合が多いが、一見では見分けがつき辛く、知らず知らず芸術品として展示されていたり、裏取引などで金持ちの嗜好品になっていたり、さまざまである。

ノアはアリスの発言から【神々の遺産】について思い出している。


「私自身、今はほとんどお金を持っていませんが、必ず支払います。どんな事をしてもお支払いしますので、あの盗賊どもに報いを。どうか。どうか・・・。」


今にも泣きそうな声で必死に告げるアリス。


「わかりました。貴女の依頼内容を整理させて頂くと、盗賊達の成敗、貴方自身の護衛、故郷の奪還の3点をメインにお受けさせて頂くで、よろしいでしょうか。」


業務的に答えるノアにアリスは自分の事など気にもしない答えをする。


「私の護衛も故郷の奪還も、あの盗賊に復讐出来るのであれば、必要ありません。」

「あいつ等は私自身を売る為に捕らえに来ている筈です。」


たしかに【遺産】は高値で売れる。恐らくアリス自身に技術が使われているのだろうが、治癒系の能力など、碌な未来は望めないことは容易に想像でき、それこそ寿命で命を終える瞬間まで永遠に実験対象にされる可能性もある。


「では当面は最低限、貴女を護衛しつつ、故郷を襲った盗賊たちの成敗で契約を進めましょう。」


だがノアはそんな事を気にする様子を無く、元の気さくな感じで話を進める。


「い、いいんですか!?」


唐突な話に驚き返事をするアリス。


「?何か契約の内容に問題がありますか?

あ、今回の依頼、勝手に私が受ける気でいるんですが駄目でしたか?」


「いえ、お金の問題とか・・・」


「ああ問題ないと思いますよ、当社の代表は綺麗な女性には寛容な方ですので。

少し位の延滞などは大目に見て頂けるかと。」


全く意に返さず契約書を作成するノアを見て呆気に取られたアリスは

「・・・ありがとうございます。」と呟いた。


「いえいえ、仕事をしているだけですので、当社の社訓にも「善悪の区別なく依頼人の要望には最低限答えろ、気に食わなければ完遂後ぶっ潰せ」とありますので」


ノアは気を気を使うことなく、ありのままを彼女に伝える。


そんな他愛のない会話をし、彼女は契約書にサインをした。

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