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日常の代償  作者: デスモスチルス大佐
崩壊
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第47話 記憶

 僕が教室に入る頃には、既に授業は始まっていた。


「すいません。トイレ行ってました」


 適当な嘘をついてその場をやり過ごす。

 類はいつものように窓の外を眺めている。

 先生が何か言っていたような気がしたが僕には聞き取れなかった。いや、聞く気がなかった。

 

 僕が自分の席に座ると同時に、凛が小声で話してくる。


「ねぇねぇ、トイレに行ってたの嘘だよね。類君と屋上で話した後1人で何してたの?」


 僕はその質問を聞いた時、寒気を感じた。

 なぜならこの質問には2つの疑問点があるからだ。

 1つ目はなぜ凛が屋上にいることを知っていたのか、2つ目はなぜ楓花がいない事になっているのか。

 

 1つ目はまだ分かる。楓花のようにたまたま見えた可能性があるからだ。

 しかし2つ目に関しては訳が分からない。

 僕はその時1人でいるはずがない。楓花と話していたはずなのだ。

 

 ーーまた幻覚を見ているのか.......?


 僕の頭は混乱していた。もはや誰が幻覚で誰が実在している人物なのか分からない。

 もしかしたらこの世界自体が自分の幻覚なんかじゃないかと思ってしまう。


「だ、大丈夫.......?」


「あ、うん。少し考え事してた.......」


 僕は凛の質問に答えることも無く、そのまま机に倒れるように眠った。



「.......ん」


 目が覚める。そして瞬時にここがどこであるかが分かる。

 見た事のある教室。窓の外からは夕焼けの淡いオレンジ色が射し込んでいる


 ここは僕の心の中、正確には記憶を司っていた僕がいた教室だ。

 しかし彼がいなくなった今、ここはただの虚無の空間。全く意味をなさない。

 なぜ僕がまたここに呼ばれたのか検討もつかない。

 それにもう彼は存在していない。


 僕は不思議に思いながらも辺りを見渡す。

 前来た時と全く変わらない光景が目に映る。

 変わっているとすれば、彼の代わりにメモ書きが置いてある。


 ーーなんだこれは?


【・夜桜 ・蛍 ・彼岸花 ・雨】


 この4つの単語を見た瞬間に僕の記憶の奥底から記憶のような何かが湧き出てくる。

 蘇ってはいけない記憶。

 僕の体全てがそう感じている。

 これ以上足を突っ込むと戻れなくなるような気がする。

 教室に射し込んでいた夕焼けもいつの間にか夜になり、姿を消していた。

 さっきよりも暗くなった教室はまるで僕の記憶が蘇ることを止めているようだった。


 それでも僕は前に進む。

 僕自身の日常を歩む為に。


 そしてその記憶がビデオテープを再生するかのように脳内に流れ始めた。

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