第45話 心
退屈な授業も一時的に終わりを迎える。
『キーンコーンカーンコーン』
4限の終わりを伝えるチャイムが鳴る。
僕は屋上に向かうために廊下を歩いている。
昼休みだからだろうか人がいっぱいいた。
「ねぇ犬塚さんどうしたのかな?」
「分かんない。でも、家にも帰ってないらしいよ」
「えぇ、それ本当?」
僕は女子グループの会話が耳に入る。
犬塚.......僕は大事なことを思い出した。
類に確認しなければならない事が一つだけあるのだ。
僕は屋上までダッシュで走る。
階段がいつもより長く感じる。
『ガチャ』
勢いよくドアを開けると、類が屋上からの景色を眺めていた。
「ハァハァ、類」
僕が息切れをしながら呼ぶと類は僕の方を向く。
「どうしたのそんなに急いで」
「いや、ちょっと聞いておきたい事があって」
「何?」
「お前、父親いるか?」
「いや、いないよ」
「あのなよく聞け、これはあくまで情報だ。事実ではない可能性もある。お前の父さんと俺の父さんは同じ人物かもしれない」
「.......」
類は黙っていたが、表情は一切変えることはない。
ただ静かに僕の話しを聞いている。
そしてゆっくりと口を開く。
「.......そうか」と一言呟くとそのまま屋上を後にしてしまった。
その時も類の表情は一切変わっていなかった。
僕は急いで類を追いかけて、呼び止めたが類は聞く耳を持たずに教室に帰っていった。
相当ショックだったのだろうか、しかし僕には彼の心の中までを知ることは出来ない。
彼がなんと思い、どう感じたのかは彼しか知らないのだ。
僕は屋上のドアの前で立ち尽くした。
僕は少し話したことを後悔していた。
僕達人間は一人一人が心を持っている。
心が弱い人がいれば心が強い人もいる。
しかし心は目に見えない。
僕がどれだけ普通なことを言っても、人によっては傷つく。
僕は最初から類の気持ちを考えていたのだろか.......
いや、事件を一刻も早く解決したいがために類の気持ちなんて考えてなかった。
少し自分に腹がたった。
類は今どんな気持ちなんだろうか、出来るなら知りたい。
類だけじゃなく他の人全員が知れたら.......
そんな妄想が頭に浮かぶ。
すると突然、僕の目の前のドアがギィーという音と共に開く。
僕は咄嗟のことで少し身構えた。
「あ、もしかしてここ来ちゃ行けない所ですか?」
少女の声だった。
少女も少し警戒したのか、ドアを完全には開けずにドア越しで話してきた。
しかし分かることは凛の声ではないということだ。
でもどこかで聞いたことのある声だった。
「あ、いやそんな来ちゃいけない所じゃないですよ」
「それなら良かったです」
そう言って少女は僕の前に姿を現した。




