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日常の代償  作者: デスモスチルス大佐
崩壊
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第42話 虚像

僕はその場で固まってしまった。

僕が固まっている間も彼女は僕の手を握り続ける。

「お取り込み中悪いんだが照屋、軽い自己紹介してくれないか?」

「あ、はい。ごめんなさい」

彼女は僕の手を離し黒板の方へ向かう。

そしてまだその日は誰も使っていない綺麗な黒板に大きく自分の名前を書く。

「照屋凛って言います。仲良くしてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします」

そしてニコッと笑う。

僕と類を除いた男子はにやけながら拍手をしている。

女子も一部を除いては凛の転校を歓迎していた。

「席は遠坂戒斗の隣だ。お前ら知り合いみたいだからよかったな」

凛は一直線で僕の方へ向かってくる。

「戒斗が隣でよかったよ。これからよろしくね」

「.......」

「何黙ってんの?あれ?もしかして私のこと覚えてない?」

「あ、いや考え事をしていて.......」

「ふーん」

そう言いながら、彼女はカバンから教材を取り出して机の中にしまう。

彼女が転校してきたことには驚いたが、それ以上に恐怖が心を支配していた。

姿はともかく、声、仕草、匂いまでもが僕が今まで接してきた凛と同じだったからだ。

今度は僕の幻覚なんかではない。

本物の照屋凛が目の前にいる。

すると突然何かにおでこを触られる。

「熱はないみたいだね」

その正体は凛だった。

体に鳥肌が立つ。

「なに?」

「あ、さっきから顔色悪かったから熱があるんじゃないかと.......」

いつもの凛からは考えられない弱々しい声だった。

いつもならビンタしてくる場面だ。

僕は本物の凛と虚像の凛が頭の中で重なってしまう。

消えない、消えない、消えない、消えろ。

頭の中で念じ続けてもあの僕が殺した凛の美しい姿は消えない。

いや、脳みそが消したくないと僕の意志と相反した行動をしている。

「だ、大丈夫.......?」

「あ、あぁ、あぁぁぁ」

狂いそうだった、いや、狂っていた。

僕はその場で頭を抱え込みながら倒れた。

痛い、痛い、痛い、会いたい。

頭の中で凛の思い出が蘇る。

「戒斗.......」

誰かが僕を呼んでいる。

僕はその声に導かれるように意識がなくなった。

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