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日常の代償  作者: デスモスチルス大佐
第一章 日常
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第3話 夢


「.......あれ?」


 気がつくと僕は学校の屋上にいた。

 このまま全てがオレンジ色に染まってまうのではないかという位の美しい夕焼け空が僕の目に入った。


『ガチャッ』と扉の開く音が聞こえた。

 音の聞こえた方を向くとそこには類の姿があった。


「ありがとう」


 彼は屋上のフェンスを乗り越えそのまま飛び降りる。

 咄嗟の出来事に頭の処理が追いつかない。

 僕はただ呆然とその場で立ち尽くしていた。


 数秒後、『バァンッ』と大きな音が聞こえた。

 その大きな音でようやく状況を理解したのか、僕は急に下を見るのが怖くなった。

 しかし、怖い反面、好奇心が心の中で芽生えていることにも気づく。


 数秒葛藤した後、僕は下を確認することにした。

 フェンスを手で掴む。フェンスを掴んでいる手はプルプルと震えている。

 しかし、心の中ではワクワクしている自分がいる。

 僕は恐る恐るフェンスから顔を出し、下を確認する。


 しかしそこには類の死体はどこにも見当たらない。

 類の死体だけではなく、いつもなら部活中の生徒で賑わっているグラウンドにも、人の影すら見えない。


「.......は?」


 思わず声が漏れる。

 何回目を擦って確認しても視界に入るのは誰もいないグラウンドだけだ。

 

 僕は何か嫌な予感を感じ、今すぐにてでもここを離れようとする。

 しかし、僕の足はこの謎の状況に対応できずにいた。全く足が動かなかったのだ。


 僕は思わず空を見上げる。

 なぜ、空を見上げたのかは自分でも分からない。

 

「あれは、何だ?」


 僕が目にしたのはいつも見ている美しい夕焼け空ではなく、赤黒い、まるで血液のような色をした空だった。

 そして、自分にその夕焼け空?が近づいてくるのが分かる。


「吸い込まれてるのか.......?いや、僕があの夕焼け空を吸い込もうとしているのか.......?」


 独り言を言いながらも、それに対して何をすればいいのかも分からないまま、その状況を受け入れようとしている自分がいた。

 僕はそのまま静寂の中で赤黒い夕焼け空に呑まれた。



 おでこに強い衝撃がはしる。


「赤い.......チョーク.......?」


「『赤い.......チョーク.......?』じゃねぇよ。起きろ戒斗」


 いつものように生物の松垣(まつがき)先生に起こされる。

 どうやら1限の生物で思いっきり眠ってしまったらしい。しかし僕が授業中に居眠りをするのも、日常の一部でしかない。

 すると隣の席の照屋凛(てるや りん)が僕のおでこを心配してくれる。


「おでこ、大丈夫?」


「あぁ、大丈夫」


 何気ない日常会話を交わし、授業に戻る。

 そこには憂鬱な何気ない日常が繰り広げられている。







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