第38話 興奮
「.......ん」
目が覚める。
そして時計を確認する。
時計の針は8時を指している。
隣ではまだ凛が眠っていた。
僕は凛が起きないように布団から出る。
極力音を出さないように努力したが、凛は起きてしまった。
「ごめん。起こしちゃった?」
「.......別に気にしてないわ」
まだ少し眠そうだった。
「ねぇ戒斗、お腹空いた」
「分かったよ。じゃあご飯作ってくるよ」
「私も手伝うわ」
そんな日常的な会話をしながらキッチンに向かう。
そこからの時間はとても楽しかった。
2人で料理を作った。
冷蔵庫の中にあった余り物で料理を作った。
とても美味しかった。
今まで食べたものの中で1番美味しかった。
そこからはずっと2人で喋った。
この世界には僕らしかいないじゃないか、そんな錯覚をする程話した。
とても楽しかった。
凛の笑顔は何よりも美しかった。
僕は凛だけを見つめた。
見つめて、見つめて、見つめ続けた。
そこに広がる日常を噛み締めながら。
僕はずっと見つめ続ける。
「綺麗だよ、凛」
僕は独り言を言いながら凛の顔を撫でる。
凛の頬を撫でると、血の跡がつく。
鮮やかな赤。
赤、赤、赤。
床、壁、自分全てが凛の血で染る。
その姿は僕に今まで感じさせたことの無い興奮を与える。
いや、二度目。
一度目はもう既に体感していた。
ただ幼すぎて記憶が曖昧になっていただけ。
母を自我で殺した時。
僕は一度この感覚を味わっている。
この雷が落ちるような感覚を。
もう既に僕の頭は人間を辞めているのかもしれないが、目の前にある死体を見ると、その考えも吹き飛ぶ。
とても綺麗な死体。
いや、自分が心から愛したから美しい。
凛の死体は笑っている。
凛は笑ったまま死んだ。
まるで僕に殺されるのが本望のように。
僕はその夜は寝れなかった。
僕は凛の死体と共に夜を過ごした。
夜の間も興奮は収まらなかった。
狂い、狂い、狂い。
気づけば朝日が昇っていた。
僕は軽い朝食を済ませ、学校の準備をする。
「行ってきます」
人がいない空間にそう言い放ち僕は玄関を開けた。




