第30話 告白
「.......ん」
寒さと尿意で目が覚める。
昼間だったはずの外はもう既に黄昏時を終えようとしている。
家の中も日中より冷たくなっている。
僕は急ぎ足でトイレに向かい、用を足す。
『ジャー』
トイレが流れる音が響く。
僕はそのままの足で洗面台に向かい手を洗う。
冬の水道水はとても冷たく、僕の手の感覚をどんどん奪っていく。
痛いという感覚から徐々に何も感じなくなる。
タオルで手を拭き、はぁーと暖かい息をかける。
すると徐々に手の感覚が戻っていくのを感じた。
僕は凛の部屋に向かう。
部屋に向かう途中、壁の血が目に映る。
昼間はすごく綺麗な赤色だったのに今は赤黒くなっている。
それは全く美しさの欠片もなかった。
凛の部屋に着く。
『ガチャッ』
ドアを開けて中に入る。
凛はまだ眠っていた。
寝ている凛もとても可愛い。
凛を眺めていると凛が起きる。
「.......ん?」
「あ、起こしちゃった?」
「いや、別に起こしてないけど.......それより私は何でここに.......それより霞君は?」
「.......僕が殺した」
「.......そう」
霞の死を聞いた凛は意外にも落ち着いていた。
「戒斗が決めたんだからいいんじゃない。そんなに落ち込まないで」
凛は僕の頭を撫でてくる。
凛は人を殺した僕でさえも慰めてくれる。
いつの間にか僕は泣いていた。
心のどこかでは無意識ではなく自分の意思で最後の一撃を入れたことに後悔していたのかもしれない。
これ以上人を殺したくない自分ともっともっと人を殺したい自分が心の中で混ざっている。
精神はもうとっくに崩壊していたのかもしれない。
「.......僕達がやろうとしている事って正しいのかな?」
言葉が漏れる。
「正しいか正しくないなんて私達には分からない。でも、私はあの時あの場所からあなたの味方になるって決めたの」
「.......え?」
「.......覚えてないよね。私が見せた絵本あったでしょ?」
「うん」
「あの主人公の女の子って私のことよ」
「.......」
理解が追いつかない。
しかし凛は話しを続ける。
「戒斗は覚えてないかもしれないけど、私とあなたは昔会ってるの。そして私を解放してくれた。私に恋を教えてくれた」
記憶にない。
多分僕のもう1つの人格がやったことだろう。
「その恋って.......」
「うん。私は10年間戒斗に片思いしてたの」
「.......」
言葉が出ない。
嬉しいすごく嬉しい。
胸の鼓動が速くなる。
僕の心を動かした2人目の人物だった。
「.......ごめん。返事は全てが終わってからでいいかな?」
「うん。ずっと待ってる。たとえ叶わない恋だとしても」
さっきまでの弱い自分は心から消えていた。
今あるのは強い自分だけ。
僕は改めて胸に《類を倒す》と刻み込んだ。




