第28話 独り言
〈君は何の為に生きている?〉
昔言われたことを思い出す。
「.......分からない」
僕はそう呟く。
目の前には男の死体がある。
凛の家の玄関の壁には男の返り血が飛び散っている。
白い壁がその赤さをさらに強調している。
僕は抱き抱えていた凛を床に下ろす。
医療関係に興味があった僕は、軽い手当の仕方ぐらいなら心得ていた。
傷口は幸いにも浅かった。
手当が終わった凛をベットまで運んだ。
そしてまた玄関に戻る。
僕は男の死体の前に座る。
「なぁ霞。僕とお前って本当に友達だったのかな?」
勿論死体からは返事はない。
「お前が日常を代償にしてまでも辿り着きたかった未来はこれなのか?」
僕はそう言って、霞の顔面にナイフを突き刺す。
「最期くらい美しく.......。さようなら」
返り血が僕に飛ぶ。
僕は今自分の意思で人を殺めた。
今までは無意識のうちに人を殺していた。
だが、今回は違う。
自分の意思でハッキリと霞の顔面にナイフを刺した。
もう既に死んでいるかもしれないが死んでいても僕の意思で行動したことには変わらない。
「すごく綺麗だね.......」
見惚れた。
その死体の美しさに見惚れた。
今まで見た霞の中で1番美しい表情だった。
その表情からは死にたくないという感情が顕になっている。
僕はその表情を脳裏に焼き付け、霞の死体を黒いゴミ袋の中に入れた。
この世に永遠に美しい物はない。
逆に永遠に美しくないからこそ究極の美しさを生む。
「.......眠い」
どうやら疲れたらしい。
僕はその場で横になり、眠った。




