第23話 真実
パラパラとページをめくっていると、だいたい1文や2文で終わっている類の日記に、少しいつもより文の量がある。
僕の目はそのページを捉える。
そこには【12月1日】と書かれていた。その日はちょうど鬼島が学校に来なくなった日の前日だった。
急に温度がぐっと下がった気がする。
湯冷めが原因なのか他に原因があるのか分からないが、僕の体全体に鳥肌が立った。
この事件の真実に近づけると思った僕は、そのページを読むことにした。
【12月1日(日)
今日は初めて人を殺した。
クラスメイトを殺すので、次の日皆がどんな反応をするのかとても楽しみ。
でも明日のことよりもあの時の戒斗君とまた出会えた。
そして一緒に人殺しが出来たことに、今でも興奮している。
またあの時のような関係に戻りたい】
「.......は?」
思わず声が漏れる。
そして脳内でビデオテープが再生されるかのように記憶が蘇る。
目の前には類がいる。
僕の視界はフードで遮られている。
僕の腕には鬼島を切りつけたであろう斧を手に持っている。
ーーじゃああの時見たフードの男って.......
その瞬間僕の脳は思考を停止する。
「ああああああああぁぁぁ」
僕は叫ぶ。
何度も何度も床を殴り続ける。
ーー僕じゃない、僕じゃない、僕じゃない、僕じゃない
手が痛くなっても殴り続ける。
喉が枯れても叫び続ける。
自然と涙が出てくる。
鬼島に対する涙ではなく、自分が今までしてきた事に涙を流す。
自分は自分がやった犯行を自分で捜査してきたのだ。
なんと身勝手な事だろうか.......
「はははっ、ははははは」
笑いが込み上げてくる。笑うしかなかった。
心の片隅ではその死体を美しいと思う僕がいた。
もう壊れている。いや、とっくに壊れていた。
僕はゆっくり立ち上がり、ふらふら歩きながら台所に向かう。
そして台所に置いてある包丁を手にする。包丁は洗ったばかりなのか水滴がぽたぽたと垂れている。
その包丁をゆっくりと首に近づける。
その手はぷるぷると震えている。
「僕が死ねばいいんだ.......」
僕が首を切ろうとした時、後ろから何か温かいものが僕の手を包み込む。
『カランッ』
手に持っていた包丁が床に落ちる。
感じたことのある温かさだ。
「そのままゆっくり目を閉じて」
凛の声がする。とても心地のいい声。
そのまま僕は温かいものを感じながら意識を失った。
「.......ん」
目が覚めると凛の部屋のベットに横たわっていた。
未だに理解が追いついていない。
目の前には凛が椅子に座りながら眠っていた。
時計の針は午前1時を刺している。
僕が起きたのに気づいたのか、凛が椅子から立ち上がる。
そして真っ直ぐに僕の所に向かってくる。
「もう、私がいなかったら死んでたわよ」
怒られるかと思ったが、凛はあまり怒っていない様子だった。
「でも、僕は死ぬべき存在だ。自分が事件の犯人のくせに『自分はあたかも友達を殺された被害者です』と主張をする自分が許せない」
「何も全てがあなたがやったわけでじゃないわ」
「そういう問題じゃない」
僕は声を荒らげる。
そしてベットを思いっきり殴る。
ここまで感情を露にしたのは久しぶりだった。
「じゃあ、貴方をずっと待ってた人はどうなるの?」
「え?それって.......」
「う、うるさい」
酷く取り乱した顔で凛は、数秒間顔を真っ赤に染めていた。
お互いに何と切り出せばよいか分からない。
「ねぇ、戒斗。貴方に見て欲しい物があるの」
そして凛は本棚から1冊の本を取り出した。




