第22話 お泊まり
「日記の中身も気になるけどまずはご飯ね」
そう言って凛は、止めていた手を再び動かし始める。
『トントントン』とリズムよく僕の隣で野菜を切っている。
凛が切っている姿はどことなく母親を思い出させる。
「戒斗、嫌いな食べ物とかある?」
「え、あ、特にないよ」
「そう、分かったわ」
唐突の呼び捨てで戸惑ったが、凛は依然として料理を続けている。
ーー僕の気のせいかな……
変な事を考えながら野菜を切っていると、野菜ではない何かを切った感覚が包丁を持っている手に伝わる。
そしてもう片方の手の親指からは痛みを感じる。
脳が『痛い』という反応を送るのに少し時間がかかった。
「痛ったぁぁい」
叫び声が家中に響き渡る。
凛が慌てて救急箱を持ってきて手当てをしてくれた。
幸い傷は浅く大事には至らなかった。
「戒斗はもう席についてて、後は私1人でも大丈夫だから」
指を怪我したこともあり大人しく席につくことにした。
しかし人間、何かしてないと落ち着かないのが普通である。僕はずっと貧乏ゆすりをしながら待っていた。
すると台所から野菜炒めの美味しそうな香りが鼻に入ってくる。しかし待っている間はやることがなくとても暇だった。
「ふはあぁぁ」
大きなあくびを1つする。目には涙が少し浮かんで視界をぐにゃぐにゃにさせる。
数分後、料理が盛られた皿が運ばれてくる。
「美味しそう」
「ありがとう。そう言ってくれると嬉しい」
凛の家での夕食が始まる。
「いただきます」
口いっぱいに野菜炒めを頬張る。
キャベツのシャキシャキ感が程よく残っていて、塩味がとても白米と合うとても美味しい野菜炒めだった。
「美味い」
その一言しか出なかったが、凛は嬉しそうに僕が食べてる姿を見ていた。
味噌汁も豆腐とワカメのシンプルな具材だが、昆布と鰹節をベースとした出汁がより一層深みを出していて、とても美味しかった。
「ごちそうさまでした」
「お皿は私が洗っておくから先にお風呂入ってていいわよ」
「……あ、うん。でもいいの?一番風呂入っちゃって」
「……え?そんなこと考えてたの?バカじゃないの」
シンクに皿を運びながらそう笑われた。
「そこまで言うならお先に入らせていただきます」
脱衣所につくと、服を脱いで近くの洗濯機の中に入れ
る。
『ガラガラガラッ』
風呂場のドアを開け風呂に入る。
浴槽にはお湯が溜まっていなかったので、お湯を溜めている間に頭と体を洗うことにした。
凛の処置が上手かったのか、お湯が指にあたってもあまり痛くなかった。
『ジョボーーー』
『キュッ』
『シャーーー』
水を汲む音、蛇口を捻る音、シャワーを出す音、この3つの音だけが風呂場に響く。
頭と体を洗っているうちに浴槽にはお湯が溜まっていた。
『ポチャッン』
指を入れ湯加減を確かめ湯船に勢いよく入る。
とても熱かった。
しかしそれがとても気持ちよかった。
湯船に浸かっていると凛が脱衣場に入ってくる。
「バスタオルここに置いとくね」
「あぁ、ありがとう」
「気持ちよさそうね。私も一緒に入っていい?」
「うーん。まぁ凛がいいなら」
「やっぱやめるわ」
「まぁでしょうね」
内心は一緒に入りたかった。
数分後、のぼせてきた所で湯船から出て風呂場を出る。
冬のせいか、脱衣所は想像以上に寒かった。
体を拭き終わり、バスタオルと共に置いてあったパジャマに着替える。
凛のお父さんの物だろうか少し大きかった。
リビングに戻り、凛にお風呂が空いたことを伝える。
「お風呂どうぞ」
「ありがとう」
凛は風呂に行った。
ふと机の上に置いてある日記に目がいく。
そして僕は凛が風呂に入ってる間に類の日記を読むことにした。




