第1話 硲類
僕の目の前ではいつもと変わらない日常が広がっている。
僕もその日常の一部であり、いつもと変わらず大きなあくびをしながら退屈な授業を受けていた。
そんな何の変哲もない日常にも他の人とは違った日常も存在している。
僕はふと窓の方を見る。
ーー今日もか......
その日も硲類は憂鬱そうに窓の外を眺めていた。
とても人間とは思えない程、酷く冷たい目で今日も窓の外を眺めている。
しかしその姿には何かとても惹かれるものを感じる。
傍から見ればおかしな人だ。
しかし類の存在は僕の日常のごく一部にすぎない。
もう5限も終わりに近づいてきている頃、先生が「この問題を類、答えなさい」と類を指名した。
その時、教科書も開いてなかった類は答えを即答し、また窓の外を眺め始めた。
『キーンコーンカーンコーン』とチャイムが鳴り号令の合図がかかる。
その時でも類はずっと外を眺めていた。
空が青空ならまだしも、豪雨の時もどす黒い曇り空の日でもずっと外を眺めている。
僕はそんな類に少し興味が湧き、声をかけてみた。
「なぁ類、お前なんでいっつも外眺めてんの?」
「分からない」
類は僕の突然の質問に驚きもせずに、窓の外を見ながら素っ気ない返事をしてきた。
分かんないわけないだろと思いながらも、「そうなんだ」と返事をする。そして別のことについて話そうとした時、 突然クラスメイトの末那雅に呼ばれた。
「戒斗、お前やめとけって、あいつにはあいつのしたいことがあんだよ」
しかし、言ってることは建前で本当はあいつには関わらないほうがいいという合図だろう。
なぜなら、類には変な噂があるからだ。
その噂とは、類が人殺しをしたという噂だ。




