第13話 悲鳴
「凛さんじゃなくて凛って呼んで欲しいな。戒斗君」
凛に話しかけられ、やっと自分が凛に見とれていたことに気づく。
さっきまでの不気味な教室の雰囲気が、彼女がいるおかげでだいぶ和らいだ気がした。
「私も松垣先生に用事があってさ、それで早く来たんだけど、教室には戒斗君しかいなかったんだよね」
僕は不思議だった。
彼女は目の前に広がっている松垣の死体に関して何も触れないのだ。
まるでこの教室には僕と凛以外誰もいなく、何もないかのように喋りかけてくる。
それが唯一僕を不安にさせる。
「フフっ。戒斗君ってやっぱ面白いね。いつも何考えているかわかんないよね」
彼女は微笑を混じえながら言ってくる。
すると突然、彼女の表情が一気に変わる。
「戒斗君、類君のこと追いかけてるよね?」
僕の顔にも緊張が走る。2人の間には少しの間沈黙が流れた。
『ゴクリ』
唾を飲む音がとても大きく感じた。唾の粘性は強く、緊張していることを表している。
ーー彼女はこの事件について何か重要な手掛かりを知っている。
そう踏んだ僕はカマをかける。
「そうだよ。でもそれはお互い様なんじゃない?」
凛は表情を一切変えずに、僕の適当に言ったことを頷きながら答えた。
「話が早そうだね」
1つのノートを渡される。
「あ、先に言っとくね。そのノートの中身は絶対に口外しないこと、もちろん、霞君にも」
そして立て続けに釘を刺してくる。
「もしその約束を破ったら、これで殺すからね」
懐から拳銃を取りだし僕の方に向ける。
僕の方に向けられた銃口が僕を威圧してくる。その威圧感はエアガンとは比べ物にならないほど強く僕を威圧してくる。
僕は疑問を抱えながらも、その条件をのみ、渡されたノートを見る。
そこには、霞が調べたものとは比べものにらないほどの様々な情報が記されていた。
その情報をじっくり見ようとした時、突然、凛に手を引っ張られる。
「ちょっとこっち来て」
強引にロッカーに入れられる。そのロッカーに凛も入ってきた。
ロッカーの中は狭く、彼女の体と僕の体がとても密着していた。
ーーロッカーの中が暗くて良かった
僕は顔を赤らめていると、廊下から足音が聞こえてくる。
その足音はこの教室に方に向かっているようだ。
そしてこの教室にその足音が入ってくる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
甲高い悲鳴が聞こえてくる。甲高い声から、その人が女子生徒ということはすぐに分かった。
すると『ドタドタ』と廊下を走ってくる音が聞こえ、この教室に入ってくる。
「どうした?う、こ、これは酷いな」
男の人の声が聞こえる。
その男はすぐに警察を呼び、悲鳴を上げた女子生徒を抱えどこかに行ってしまった。
ほとぼりが冷めると、凛と僕はロッカーから出る。
照れている僕とは違い、凛はとても落ち着いていた。
そして僕の方を向き、またあの眩しい笑顔を向ける。
またしても僕は、その笑顔に見とれてしまった。
そしてこの日は、この事件のせいで休校となった。