第11話 疑問
『硲類』と書かれたファイルの中を見てみると、誕生日や身長など様々な情報が載っていた。
「これはどうしたんだ?」
「お前が類のことを追っていることが何となく分かったから、1人で情報収集してたんだ」
声はとても掠れていた。
掠れた声から、霞の疲労が伝わってくる。
親友を失った悲しみ、怒り、自分の無力さなど色々なことを感じただろう。
霞は僕を凝視する。あまりにも僕が冷静だったからだろう。
「お前は末那雅が殺されて何も感じないのか?」
その言葉からは怒りを感じた。
「.......」
何も言えなかった。
なぜか、自分でも不思議なくらい冷静なのだ。
すると突然、霞が僕の胸ぐらを掴む。
「何で何も答えないんだよ。お前にとって末那雅はそれほどの人間だったのか?人が死んでも悲しくないのか?」
「自分でも分かんねぇんだよ」
お互い口調が荒くなる。
僕は胸ぐらにある手を無理やりどかす。
「ゴメン。言いすぎた。考える時間が欲しい」
僕は霞を無理矢理帰らせた。
霞がいなくなった部屋はとても広く感じた。
ーーこんなはずじゃなかったんだよ
自分の感情に腹が立った。冷静でいられる自分を恨んだ。
しかしいくら恨んでも失った人間は帰ってこない。
僕は静かな部屋の中で涙を流しながら眠りについた。
この涙が本当の涙なのか、嘘の涙なのかなんて自分にも分からなかった。涙は月明かりで照らされキラキラと光っていた。
疲れていたのか目をつぶるとすぐに睡魔が僕を飲み込んだ。
目を覚ますと、時計の針は午前2時を指そうとしていた。
父親はまだ帰ってきていない。
腹が空いているのを感じつつも、末那雅の生首を見たせいで何も喉を通りそうにない。
ファイルを見つつこれまでの出来事を振り返っていると、1つの疑問が浮かんできた。
ーーなぜ神野が殺された日、松垣は神野のことを休みって言ったんだ?
その時、既に神野は殺されていた。本来学校に来るはずの神野が学校に来ていないのだ。つまり学校側は1度神野家に確認をとらなければいけない。そこで初めて欠席かどうかが分かる。
自分のスマホでもう一度神野のニュースを見ると、家族全員が殺されているのが警察の調べで後からわかったことを知る。
ーーあれ?じゃあ誰が神野休みを伝えたんだ.......?
その瞬間、頭の中にあった点と点が繋がるような感覚になった。
ーー類の前にまず松垣だ
そう心の中で強く決心し、また眠りについた。