第9話 死
ポッケの中からおぼつかない手でスマホを取り出し、霞からのメールの内容を確認した。
『ニュース見た?委員長殺されたみたいだな。なんかヤバくね?末那雅は類の噂のことを信じてなかったけど、ここまで来ると真じるしかなくね?』
霞は既に類を犯人と確定させるような内容のメールだった。普段ならばもっと客観的に見る霞でさえも類が犯人だと確定させていた。
誤字をしているのを見ると、霞も相当焦っていることが文面だけで分かる。
しかしこの状況だからこそ、こんな普通のメールがありがたいと思える。
『ピンポン』
突然インターホンが鳴る。
宅急便かと思いテレビドアホンを確認すると、そこには誰もいない。映っているのはいつも見る家の外の光景だけだ。
ーー今時ピンポンダッシュか?
類のこともあり少し不安になりながらも、玄関のドアを開ける。
するとそこには無造作にダンボールが1つ置かれていた。ちょうどテレビドアホンの死角になる場所に置かれていた。
そこからは異様な臭いが漂っていて、少し下の方が赤黒くなっていた。
『カァカァ』
鴉がそのダンボール目がけて飛んでくる。
僕は急いでそのダンボールを持って家の中に入った。
家に入れて気づいたが、ダンボールには虫が湧いていた。
臭いも外で嗅いだ時よりも、充満したせいか臭く感じる。
ーーとても嫌な予感がする
僕は薄暗い玄関でそっとダンボールを開ける。
そこには末那雅の生首が入っていた。
一瞬、状況が読めなかった。
視覚で確認出来るものは親友の生首だ。臭いも血なまぐささの中に、微かに末永雅の匂いが感じられた。
数秒後、徐々に頭の処理が追いついてくる。
それと同時に、胃から何かが逆流してくる感じもする。
僕はその場で嘔吐し、泣き崩れた。
昼飯が姿を変えて、ドバドバと口から出ていく。
「お、おぇぇぇ」
一通り昼飯を出した後、おぇおぇ言いながらもう一度無理矢理吐こうとする。
すると無理矢理吐こうとしたからか、口からは血が出てくる。
吐き気も収まらなかったが、涙も全く収まる気配がない。
数分、いや数十分経ったのだろうか、それすら分からない状況で体がやっと落ち着きを戻す。
「ハァハァハァハァ」
呼吸も正常に戻る。涙も収まった。
体は取り乱していたが、心は全く取り乱していなかった。
逆に親友の末那雅を殺された怒りの感情と悲しみの感情が上手いぐあいにバランスをとり、冷静だった。
そんな自分に恐怖すらも感じていた。
ふとダンボールの方に目を向けると、ダンボールの中に紙が入っていることに気づく。
紙は血の色で染まっているが、読めない程ではなかった。
『警察に連絡したら、次は君を殺すよ』と書かれている。
ーー犯人がまだ近くで見ているかもしれない
僕は恐る恐る玄関のドアを開け外を確認する。
ダンボールを中に入れた時は夕焼けが出ていたが、その時は既に夜を迎えていた。
誰もいないことを確認し、そっとドアを閉める。
ーー警察が駄目なら、せめて霞には.......
僕は震える手で霞にメールを送った。