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第一幕 自由の時代、平成

何故僕らは、嘗て名を馳せた文豪たちの作品を超えられる作品を作ることができないのか。いや、作られているのかもしれないが、僕ら現代人の目にとまることはない。文学において最も傑作した作品を捜索した人に与えられるノーベル文学賞は、かれこれ30年は日本人作家の名前が挙がっていない。

日本人がこれほどまでに文学に対しての興味が乏しくなり、日本文学が衰退の一途をたどることになる理由はなんでだろうか。

一番の理由は、この世の日本が先進国として世界に認められ、独自に開発するものが増えてきた、所謂、”現代化”が原因だろう。

勿論、文を書くなんてことをしなかったのは大いにある。手紙の風習だって消え去り、今ではそんなことをしている方が馬鹿にされるだろう。

しかし、本質はそんな簡単なことではない。

奈良時代に幕を開けた日本文学の全盛期は、言わずもがな明治・大正・昭和だが、何故その時が全盛期だったのか。それは簡単なことだ。日本が受け入れる側だったということ、それだけだ。明治時代の文明開化、これは西洋の文化を

” 受け入れた”ことで発起した。その後もそうだ。政治的にも軍事的にも、ほかの国に劣っていた日本は、受け入れることで文明を発祥させてきた。新しい考え方、風潮、人々の生活、目紛しいくらいに日本文化という世界は変わっていった。日本文学も古来の文学から派生して、沢山の考え方や書き方が生まれた。生まれた分だけ、人々はその作品たちを読み、批評し、愛した。

それがなくなった現代はどうだろう。

もともと人間とは、ないものねだりで今ないものを求め、模索する。

今現代の日本は謂わば、人の欲望によって枯れた水源。ここから生み出されるものは何もなく、出来るものは今あるもののリメイクくらいだろう。

その結果、何も創造できなくなった人間の想像力は低下する。低下すればするほど、余計に何も生まれなくなる。負の連鎖ということだ。

人間は1つ欲しいものを手に入れると、その分の欲求がなくなる。人間はこの世が便利になればなるほど、欲への執着心、好奇心が薄れていく。そんな中で世界に通用する作品を作ろうとも、日本人の心にすら届かないのである。

今現代の人間が、面白い作品を書けなくなった。それだけが、日本文学が終幕に近づく理由ではないことは理解していただけただろうか。

本当の理由は、どんなに面白い作品を作ったとしても、それを読む力、所謂読解力、想像力が欠けた、便利社会に浸る現代人しか残っていないからだ。



こんな世界に産み落とされた 併せて5人の子供たち

彼らは時までも超えていき 日本文学を取り戻す

始まるは彼らの冒険譚 とくと御覧いただこう



ーーーーこの世界はつまらない----

俺にはこの世界がつまらなすぎる。誰も苦労しないで頭の中に教科書がインプットされる時代、平成時代も令和時代も教科書でいうと半分くらいのページにまでいくほど昔だ。令和時代以前、高校に行く際に支払っていたのは学費、つまり知識を学ぶための金だが、今は挿入費、つまり頭の中に知識を挿入する金を支払わなければならない。

努力もしないでエリートになれる。この便利社会では、昔流行っていたというYouTuberである彼の、”みんながロボットに見えた”という発言はあながち間違いではないのかもしれない。優秀な人材を増やしこの国を支える、今の日本国のスローガンだが、この国の御役人のほとんどは、挿入されただけの知識と親の金を振りかざすボンボンしかいない。だけど、それが正しいとインプットされているから誰も何も言わないのである。ではなぜその現代に生きる俺が、こんなことを思うのか、だって?

俺は貧乏な家に生まれて、義務教育すらまともに受けられなかった。俺にとってはそれが最大の吉、こんな無個性の奴らと同じになるくらいなら全然いい。

これだけは悔しいことがあって、勉強ができないことだ。でも、それ相応の知識はあると思う。俺は全廃棄が決定した紙の本を読み漁った。コピー用紙すら生産されなくなった今、紙ベースの本を読むものはいなくなり、電子書籍が主流になった。紙の暖かさ、重さに比例する経験が電子機械になり何も感じれなくなった。ずっと受け継がれてきた日本文化でさえも、これからの日本の発展に必要ないというのだ。特に、日本文学は外国人観光客に向けて金儲けができるわけがなく、日本人のみの娯楽ということで、政府から強い弾圧を受けた。

俺はこんな世界に嫌気がさした。日本文学こそが俺の知識そのもので、あれのおかげで俺は生きられているというのに、それがいらないものと言われるのは本当に腹が立った。だから俺は、この便利になった世界を逆手にとって、四人の仲間と一緒に日本文学を取り戻すー

あ、言ってなかったな。俺の名前は平井蒼太。

俺の先祖は平井太郎、そう江戸川乱歩さ!



ーーーギュイイイイイインーーー

「タイムマシンてこんなにうるさいわけ?行くたびにこんな音鳴らされたらバレちゃうっての。もっと他にないの!?」

「しょうがないだろ、行く方法はこれしかないんだから諦めろ。」

遥香は人のことを考えてるのか考えてないのか、大声出したら余計にバレるだろが。彼女の名前は津島遥香、太宰治の子孫だ。そしてそれを咎めるのが宮澤隆平、宮沢賢治の子孫だ。他の2人も与謝野風翔、夏目碧というように、与謝野晶子と夏目漱石の子孫だ。誰が言ったわけでもないが、今残った数少ない文豪の子孫の役目は、今現代の日本に本来の日本文学のあり方を取り戻すことだと全員考えている。俺たちは全員孤児で、本によって知識を得た。本当に感謝している。だから俺等は、この日本を文化的な世界に変えて日本文学を取り返す。

「蒼太くん何考え事してんの。また推理?」

「そんなんじゃないよ、碧。ただ、ついにこの日が来たんだと思ってね。」

「ぼーっとしてっと、お前だけタイムマシンから振り落とすぞ?操縦士は俺なんだからな。」

碧も風翔も俺をなんだと思ってんだ。今俺は決意を固めていたところなのに。

、、、まあいい、そろそろ出発の時間だ。俺たちは自分たちでは知識が足らなすぎる。だから、平成時代に行って俺たちの先祖が生きていた年を調べて、俺たちのじいちゃんやばあちゃんに会いに行く。

だから最初の目的地は、平成時代!



ーーチャンネル登録、高評価よろしく!ーー

平成時代に到着したことを告げたのは、数々の電子機器に映るYouTuberの姿だった。この職業は平成時代に始まり、令和時代を境に衰退していった職業だ。自由な時代、平成。それを代表する職業であるとも言えるだろう。

『好きなことで生きていく』をモットーにしたこの職業は、子供達の心を掴み、芸能人に憧れた子供達は、次第にYouTuberへと目線を変えるようになった。また急激な成長を遂げたこの時代は、電子機器が発達し、忌まわしき電子書籍もこの時代に発明された。俺は平成時代にいい印象はなかったが、その感情はある場所で覆されるのである。

俺たちは、先祖のことを調べるべく、この国最高の大学である『東京大学』へと向かった。俺等の時代ではタイムトラベル用の住所が用意されていて、手続きも難なくできた、、と思ったものの、また遥香がやらかしたようだ。まさかあいつ、住所忘れたんじゃないだろうな。そういう視線を彼女に送ると、

「蒼太くん!わたしに住所を見せたまえ!」

「いやだ。第一に忘れたのはお前なのになんでそんな言い方されないといけないんだよ。」

「ごめんなさい、住所を見せてください。」

これのせいで、俺と遥香は同棲していることになってしまった。最悪だ。

まあそんなこんなあって、無事に『東京大学総合図書館』に入館できた。

どうせ平成時代の図書館なんだから電子機器が置いてあってそれで本を読むみたいな制度なのかと思った。しかし、予想とは大幅に外れて、そこは本の山だった。俺たちにとっては宝物庫と変わらないくらいの価値があった。

俺たちは当初の目的を忘れ、本を読み耽った。いわば本の虫だ。

3冊ほど読み終えると、各々やるべきことを思い出したのか、設置されていたパソコンで自分の先祖について調べた。


【江戸川乱歩 本名平井太郎 明治27年に生まれ、大正12年にデビュー、

昭和38年に日本推理作家協会会長に就任、昭和40年に死去】


俺は知らなかった。いや、知ることができなかった。

日本文学が弾圧され、先祖のことを知るチャンスさえもらえなかった。

唯一知れたのは、親に言われた名前だけ。

俺は、彼がこんなにも素晴らしい人だと知らなかった。他のみんなもきっとそうだろう。俺たちの先祖は、俺たちが思っている以上に素晴らしく、頼もしい人たちなのかも知れない。会うのが前よりもずっと楽しみになった。


どうせだから観光しようと思い、今この時代にある流行りのものを調べることにした。出てくるのはスイーツなどの甘いものばかり、男にはどうも向かないが、女子は楽しそうだ。

「ねー碧!これめっちゃ美味しそう!パンケーキとタピオカだって!」

「遥香ちゃん、私チーズハットグの方が食べたい。」

いくところが決まったようだ。次の目的地は『新大久保』らしい。俺たち男は何処へでもついていきますよ、、、

東京から新大久保へは、およそ40分電車という乗り物でかかるらしい。

俺たちがいきていた時代には電車というものがない。この時代でいう、自動運転サポートがついた空飛ぶ自動車が開発されたからだ。この結果、各家庭の自動車普及率も95%を超え、陸海空全てに道路を作ることができるため、渋滞も改善された。よって、電車を使う意味がないのだ。

俺たちは初めて電車に乗る子供のように胸をときめかせていた。

窓から見える景色は瞬きするたびに移り変わり、揺れるつり革も、電車に乗る乗客もすべて真新しいものに見えた。

「すごいすごい。景色が映画みたいにころころ変わる…!」

「あぁ、素晴らしい。全員が全員スマートフォンを使っているのも面白い。スマートフォンは廃止になって結構経つから、こんな国民が全員スマートフォンを使っているなんて本当に面白い時代だ。」

ふふっと隆平が笑った。

碧は兎も角、隆平があんなに楽しそうにしているのを見るのは久しぶりだ。本当に面白いのだろう。こう見えて、クールな隆平が一番面白いことに目がないのだ。本当に意外すぎる。真顔で大爆笑していた時は物凄い鳥肌が立った。


ーー此処は新大久保〜お降りの方はご注意くださいーー

「ついたー!早くこないと置いてくからね!」

遥香は相変わらずというかバカなのかというか、周りの視線を少しは感じるべきだと思う。変なものを見るような冷たい視線。俺たちは他人のふりをしようとした。

「ちょっと、なんで誰も返事しないのよ!?バカじゃないの、返事くらいしなさいよ!返事もできないおバカさん達なの?」

キャハハとバカにしたような声で笑っているが、もっと視線が痛くなってしまった。本当にバカだ。バカすぎる。

「バカはお前だわ。まわりの人見てみい、冷たい目線はお前に集中しとるんや。気づかずに大声出しやがって。折角の新境地開拓のワクワクした気持ちが台無しだわ、ほんと。」

流石風翔、言うときは言う男。でも、流石に言い過ぎじゃないのか。いつも元気ぴんぴんの遥香が萎れてるぞ。シュンてなってるぞ!

遥香は反省したのか、

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