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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

僕の奴隷メイド

作者: しいたけ

「イヤーーッ! キャーーー!」

「坊ちゃまお許しを!!」


「坊ちゃま!! 奴隷をその様に扱われては困ります!!」


 切り立った丘の上に聳え立つ古屋敷に、甲高い女性の声が響く。いや、いつもの事だから気にしなくていいんだけどさ。


「……皆でクッキーを食べようとしただけじゃないか」

「それがいけないと言っているんです!」


 ガミガミと小言が多い奴隷長(奴隷長も奴隷)に今日も僕は怒られている。奴隷に怒られる主人って何なんだろうね。


「坊ちゃま踏んで下さいまし!」

「こちらも!」

「顔を踏んで下さいまし!」

「私は髪を!」

「手を!」

「扁平足を!」

「宝毛を!」


 沢山の奴隷メイド達が腹を見せる犬の様に地べたでご褒美を欲している。僕としてはそんな事はしたくないんだけど……。

 僕は靴を脱ぎ―――


「坊ちゃま!」


 僕は靴を履き、ペタリと優しくメイド達に足を付けた。


「ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

「ありがとごぜぇますだ!」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」


 メイド達が泣いて喜んでいる。良いのかなぁ?


「やっぱり僕、この仕事(奴隷の扱い)向いてないよ……」


 しゅんとした僕に対して奴隷長が肩を優しく抱いてくれた。


「大丈夫です。坊ちゃまなら出来ますよ♪」


  ―――ピンポーン


「あわわ! お客様かな!?」

「落ち着いて。大丈夫です」


 僕は慌てて玄関の扉を開けた。するとそこには太った汗塗れの男の人が立っていた。後ろには奴隷と思わしき清楚な女性も居る。


「ど、どうも……」

「彼女をお願いしたいのですが……」


 二人を応接室へと案内し、男の人が出した書類を拝見する。男の人の奴隷は終始静かだが目が虚ろで、その存在自体がまるで空気のようだった。彼女を別室へ案内させ、男の人と二人きりで話をする。



「奴隷症のレベル4ですか……ほぼ末期ですね。奴隷欲求が満たされずに生命力が衰えてます」


 僕の言葉に男の人は床に土下座をし始めた!


「お願いします! 彼女を助けてあげて下さい! 私の妻なんです! お願いします!」

「お、落ち着いて下さい!」


 頭を床に打ち付ける男の人を宥め、席に戻ってもらう。とりあえずキチンと説明しなくては……それが僕の仕事だ。



「えー、では説明を…………治療ですが、奴隷欲求を少しずつ満たしながら日常生活を送って貰います。その上で投薬治療と心理カウンセリングを行いまして奴隷症の根絶を目指します」


 さて、ここからが本題。そして奴隷症の恐ろしい所だ。僕は毎回この部分を説明するのが辛い。


「しかしながら、根絶とまで行かずに何かしらの奴隷症状が残る場合がございます……それが仕事欲求だったり、家事欲求だったり……時には性的な欲求だったりします。コレばかりは長い時間を掛けて治すか、諦めて欲求を満たしてあげるしかありません」



 ……

 …………

 ……………………



 男の人はとても困った顔をしている。今までの人と同じ反応だ。無理も無い、自分の大切な人が治療とは言え不埒な目に逢うかも知れないと思うとやり切れないだろう。


「ご安心下さい。当施設の奴隷症完治率は99.9%です。今まで一人を覗いて全ての奴隷症を治してきました。それに、もし()()()()事になりましたら、改めてご相談致します……」


 僕は同意書と治療計画書、そして概算見積書を渡した。男の人が書類に目を落とす。そして、同意書にサインをすると「宜しくお願いします」と頭を下げ屋敷を後にした。




「失礼します」


 奴隷長が患者用のメイド服と身の回りの道具を持って入ってきた。


「レベル4の子だ。大変な治療だと思うけど治してあげないと……」

「坊ちゃまなら大丈夫です! 頑張りましょう!」


「ありがとう。それじゃあ明日から治療するから色々と案内してあげて」

「分かりました」


 その日はそれ一件のみで新たな依頼も無く無事に終えることが出来た―――





 ―――日が落ちると、夜の屋敷は恐ろしい程に冷たい雰囲気となる。如何にもオバケの類が出そうだ。僕はランプの灯りを頼りに面倒な書類を書いている。


  ―――コン コン コン


「は~い」


  ―――ガチャ


「坊ちゃまお疲れ様です」

「奴隷長もお疲れ♪」


 僕は壁掛け時計に目をやると、時刻は11時を過ぎていた。いつの間にこんな時間に……どうやら少し真面目に仕事をし過ぎたようだ。書類を机にしまいカギを掛け席を立つ。


「ああ、ゴメンゴメン。遅くなっちゃったね」

「……いえ」


 僕は扉の前で佇む奴隷長へと歩み寄る。奴隷長はモジモジと扉の前で落ち着かなく動いている。

 奴隷長の頬へ、僕は大きく平手打ちをくれた。


  バチィィィン!!!!


 奴隷長の頬は赤く腫れ上がり、しかし痛みとは裏腹に嬉しそうな顔をしている。



「ここへ来て何年になる?」

「に、二十年です…………」



「だらしねぇ肉だな! メイド服がムチムチじゃねぇか!」

「ヒャャイ! しゅみましぇん!」



「おいおい! 酷え肉だなぁ!」

「しゅみましぇん! しゅみましぇん!」


「今年で幾つだっけ!?」

「さ、三十……五……でしゅ…………」


「嘘つくなよ!! 今年で三十七だろうが!!」



「ヒッ! おなか……捻らにゃいで~!!」

「未だに治らねえ奴が居るなんて信じられねえよ!!」



「う、うう……!」

「うるせぇ肉だな! さっさと地べたに這い蹲れよ!!」

「ひゃ……ひゃい…………」


「……で? どうして欲しい?」

「な、なでなでして下さい……」


「何処をどう撫でて欲しいんだ!?」

「わ、私のだらしない頭を命一杯撫でて下さい!!!!」


「ほらよ!!」


 なでなで


「坊ちゃまーーーーーー♡♡♡♡」






 カッ カッ ガチャ


 僕は倒れ込む様にベッドへと突っ伏した。


 もうこんな仕事なんか……辞めたい。

読んで頂きましてありがとうございます!


治療だからセーフ!

治療だからセーフ!

治療だからセーフ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 治療だからセーフ!の必死さがすごい。(爆笑) せ、攻めてますね…!いえ、治療内容の話ではなくて、投稿作品としての話です。
[良い点] 治療だからセーフ! 治療だからセーフ! 治療だからセーフ! の必死感w [一言] ギリギリを攻めてますね(笑)。 37歳のぽっちゃり目の女性というのは、個人的にストライクです(キメ顔)。 …
[一言] 勢いがいいですね! 37の女をあのように扱うとは……素晴らしい! 面白かったです!
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