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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
南の国篇
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第80話:色々とバレました

ーウィルス視点ー



「んー………んん?」




 ふっと目を開ければ目の前にはレントがいる。当たり前なんだけど、それが嬉しくて思わず「ふふっ」と笑ってしまう。眠りが深いからかいつもなら僅かな音でも起きて来そうなレントはピクリとも動いていない。

 えいっ、と普段では触らないだろう頬を触る。よく私のを触れて来るけど、レントは自分のを触らせてくれない。だから、寝ているこの間だけでも……と堪能することにした。




(………んーー。女性のとは違う感触……)




 レントのを触れながら、自分の頬とを触って違いを確かめる。レントはプニプニしてると褒めてくれるからそんな事はないと言いたいんだけど……。男性の頬はちょっと固いんだなぁと、初めての知った違いに驚くばかり。

 思わずナーク君はどうなんだろう?? と、思った。




「ん?」




 もう少しレントの傍に寄ろうとして、腰の辺りに誰かの腕がある事に気付く。レントは私の事を正面から抱きしめるようにしているから違うのが分かる。……では、誰だ? と思って首を必死で動かして見ると……ナーク君が寝ていた。


 腰を抱くようにして彼は私の事を抱きしめている。寝息が聞こえるから寝ているのが分かる。確かにナーク君の事は心配していた。普段から寝ている所も見せてないから、一体何処で寝ているのか? と常に疑問に思っていた。




「解決、なのかな………?」




 何だか私が思っていた事とは違うような、そんな感じだ。でも、ナーク君が寝ていると言うのが思いのほか安心感があった。あったのだが……それも最初の2、3分だけだ。

 2人はピクリとも動かず、規則正しい寝息に安心して良いのやらダメなのか……と、疑問に思ってしまう。




「あぅ。ダメだ……全然、解けない」




 当たり前だけど、レントは剣も扱うし騎士団の訓練にも出ているから体も鍛えている。それは……私の事を抱きしめている時に、強く分かるし顔に熱が集まる。

 ナーク君は細身だけど、やっぱり年下とは言え男の子だ。力では全く敵わない。どうにかこうにか、自分なりに奮闘するんだけど……ダメ、全然動かないし、起きる気配がない2人に流石に困る。




「………うぅ、リベリーさん、来てくれないかな」




 思わず出た人物の名前。バーナン様の護衛でもあるリベリーさん。私にも優しいし、頼れる万能お兄さん的な人。料理も上手で私に教えてくれる思わず頼ってしまう……そんな人。




「呼んだか、姫さん」

「うひゃっ!?」




 音もなく部屋に、ベッドの前に姿を現したリベリーさんに思わず悲鳴を上げてしまった。確かに呼んだけど、本当に来るとは思わなくて……そして、この現場を見られている事に今更ながら恥ずかしさが出てくるわけで。




「あーー………まーたか、この2人は」




 ガシガシと困ったように頭をかくリベリーさんは困り顔だ。思わず「また」と言う言葉には反応して良いんだよね?

 一体、いつの事だろう。え、いつ? 何処で?




「あ、姫さんは知らないのか。国を離れてからずっとこの2人、姫さんの傍に居たぜ?」

「えっ……」

「イーグって街とザーブナーって街でもそうだったぞ」

「ええっ!?」




 イーグでは屋敷で1泊止めて貰ったし、ザーブナーの……ローレックさんに借りた所でも寝ていた? この状況を?? しかも、ごく当然のように言っているリベリーさんに思わず、と言うかもしかして――と向ける。




「悪い……時々な」




 恥ずかしそうに視線を逸らしてきた事で、見られていた事にショックと言うか恥ずかしさで体に熱が集まる。うぅ、手で顔を覆って恥ずかしさから逃げていると不意に腰に抱き着いていたナーク君が離れていく。




「………んー」

「お、起きたか―――うおっ!?」




 リベリーさんがナーク君に話しかけたと同時に、蹴りが繰り出される。驚きながらも受け止めてる彼は、数歩下がればナーク君はそれを追って攻撃を繰り返す。




「バカ、寝ぼけるなっての!?」




 トンッ、と蹴りを受け止め流れるような動作でナーク君を投げ飛ばず。凄い勢いで飛ばされたナーク君に思わず「ナーク君!?」と叫んでしまった。その声に、ピクリと起きて来たのは寝ぼけて抱きしめてきたレントだ。




「う、痛い……」

「殆ど自分に返るようにしたからな。ダメージは大きいだろうよ」

「バカリベリー……」

「バカはどっちだよ。バカは」




 思わず駆け寄ろうとするも、レントから抱きしめる力は緩める事はない。目をこすりながら普通に起き上がるナーク君は、私が起きたのを見ると途端に目をパッチリとしていて――。




「主♪」

「わわっ」




 物凄いスピードで正面から抱きしめてきた。レントからは横に抱きにされて、ナーク君からはこの状態で抱きしめられて……思わずリベリーさんに助けを求めるようにして訴える。




「大丈夫か!? 凄い音したぞ!!」




 ドン、ドン、と激しく叩かれる音に思わずビックリする。エリンスが慌てたように、心配してくれているんだけど……どうしよう、これを見られるのはマズい気がする。




「…………ラーグレスとで引き剥がすか」

「うぅ………」




 何故だろうか。朝からこんな状況を……隣国のエリンスに見られるだけでなく、ラーグレスにまで……。ナーク君に離れるように言っても「ヤダ♪」と言われるだけになった。

 

 レント、お願いだから起きて!!!!!!! 



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「よく、眠れなかったのですか?」

「いえ……よく寝れました」




 迎えに来たアーサーさんは、私の顔色を窺いながら聞いて来た。えぇ、ぐっすりです。それはもう……自分でも凄いなと思う位に。でも、違うんです。今朝、色々と……そう、色々とあったんです。




「あの、無理はなさらないで大丈夫ですからね。まずはこの水晶に向けて手をかざ――」

「あ、あのっ。これを付けると魔力向上に繋がります!!!」

「こちらのブレスレットには、眠っている力を呼び起こす作用が――」

「この飲み物を飲めば魔力の流れを視覚化出来ます!!!」




 アーサーさんが突き飛ばされたかと思ったら、働いている人達から一斉に色んなものを進められた。ブレスレットだったり、ブローチだったり、コーヒーだったりとグイグイ来るように迫ってくる。

 戸惑う様にしてそれらを見ていると、すっと私の前に出て来たのはカーラス……じゃない、アッシュが出て来た。




「お止め下さい。まず上司を突き飛ばして謝りもしないのはおかしいですよ?」

「………。」

「あ、良いよ良いよ。いつもの事だし」




 気まずそうに顔を逸らす部下達。アッシュに怒られてシュンとなるので、試しに付けてみようと言えば途端に笑顔になっていく。何だか、呆れにも似たため気を吐かれたのはアッシュであり「あの、困っているなら別に良いんですよ」と言われてしまう。




「いえ。協力していただいているので、私も頑張ります!!」




 アーサーさんに言われた水晶を触れる前に、ブレスレットを付けブローチを付けてみる。するとアッシュにクスリと笑われてしまった。その時の、表情がいつもそばで見ているのと変わらずだったから……凄く安心した。




「えっと、水晶に手を……かざす……」




 意を決して、緊張したままアーサーさんが用意した水晶に触れる。

 触れた所から水晶の中心に淡い光が漏れ出てくる。それがうねり、渦を巻いている様を見ていると周りはその様子を食い入るようにして見ている。




「おぉ、珍しい。光なんですね」

「珍しい?」




 この水晶は自分が扱う魔法の特性が分かると言うものだ。炎なら赤い色、水は淡い青色、風なら緑色と言った感じに変化する。しかし、示した色が光だと言うのは珍しいと言うより、今までに例を見ない事だと説明をしてくれた。




「よし、守りに強化出来るか理論を立てよう!!」

「治癒魔法よりも効果が高いのかも知れないな……」

「随分と強い光ですね。他にも特徴があるのか?」




 と、様々な意見をブツブツと言いながらすぐに自分の研究室へと閉じこもっていく。あまりにも早い動きにポカンとなって見送る。隣でアッシュから「すみません、その、彼等に悪意はないんです」と申し訳なさそうに言われてしまった。




「凄い研究熱心ですから、その……不快に思わないで下さいね」

「あ、いえ……仕事熱心なのは良い事ですから」




 そう答えつつ、アーサーさんの方へと歩み寄ると彼は起き上がり別部屋へと案内された。先程、触れた水晶よりも大きなものがあり不思議そうに見ているとアーサーさんから「今度はこれに魔力を込めて下さい」と説明を受ける。


 ここに手を当てて、魔力を留めると言う作業をして欲しいのだと言われ一気に緊張してきた。思えばナーク君を戻した時は必死で、とにかく元の姿に戻れるようにと強く願った。

 治癒をした時にも治る様にと込めていたので、あの要領で行えば良いのかと思い水晶に手を触れて深呼吸をする。




「留めると言うのはかなり難しいので、まずは自分の魔力の流れを見る事から始めましょうか」

「は、はい……」




 優しく教えてくれるアーサーさん。思っていたよりも緊張していたのか、水晶に触れるのが何だか怖く思えてきた。すると、私の手を上から重ねてきた人物がいたのだ。




「アッシュ……」

「失礼。大丈夫です。私も同じ事をして、得意な魔法を見て貰いましたから。氷と言う結果で、私自身驚いていますが……大丈夫、不安に思う事は無いですよ」

「………」




 言い方が、幼い私に魔法を見せて色々と教えてくれたカーラスと被る。本人、なのだろうけど……それが凄く私には嬉しくて、彼の言葉を信じようと思い水晶に手を乗せる。

 視覚化できると言われていたコーヒーを飲んだからか、淡い光がそのまま水晶へと導かれるようにして入り込んでいく。段々とその光が渦を巻くようにして集まりだし、留めようと力を込めた。

 水晶と同じように丸で魔力を固めようとイメージを固めていると、水晶から強い光が発せられた。




「わわっ……!!」




 あまりの光にアーサーさんが声をあげる。私も眩しくて目を瞑る。やがて光が止んだかと思えば、何だか周りの様子がおかしい。




「っ、あ、あれ……!!!」

「ウィ、ウィルス様!? あのっ、何処に居ますか!?」 




 物凄く焦ったような声が聞こえて来る。でも、私は別に……と思っているとなんだか、目線の高さが違っているように思える。巨大化? してるのかな、アーサーさんが動く度に地震なのかと思う程の振動を感じられる。




「ど、どうしよう!! ルベルト様に、いや、ギルダーツ様に叱られるだけでは済まない……!!! 首が飛ぶだけじゃ治まらない」




 泣きそうな声で慌てているアーサーさん。アッシュも何だか慌てている様子だったから、私はここだよ!!! と思って声に出す。




「ミャアアア!!!!」

「「えっ………」」




 えっ!? あ、れ……ま、まさか。

 そう思って、今度は小声で言ってみるも……「ニャア……」と鳴く声が聞こえて来る。水晶は鏡のようにキラリと光っており、それが魔法による加工かとも思い近付いてみると……。




「え、ね、猫……?」




 戸惑う声のアーサーさん。そして、私もビックリした。水晶が置いてある台にピョーンと飛び上がって着地。座って自分の姿を見ると……うん、白い毛並みの赤い瞳のカルラが写っている。

 ユラユラと尻尾を揺らしているのが、なんともカルラらしいマイペースな感じだなと思っていると。




「ど、どうしよう……」




 そう言って倒れるアーサーさん。驚いて近寄って見ると、何だか気絶しているようにも見え起きて欲しいからとパンチを繰り出す。




「ミャア、フミャミャ」

「………カル、ラ………?」




 倒れたアーサーさんを起こすのに必死で、私はアッシュが何か言っていた事には気付かないまま。起きてくれないアーサーさんに、思わず私はレントに助けを求めたのだった。 

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