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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
南の国篇
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第65話:街中デート?

ーレント視点ー



 ザーブナーと言う南の国のディーデット国が治めている街の1つ。大国が治めているだけあって、周りは防御魔法で固めており、照り付ける日光のを適度の気温へと変換していく。


 聞いた話だと防御魔法を作る際に、熱すぎないようにとディーデット国の第2王子のルベルトが作ったからだと言う。




「ルベルト様は、幼い頃から才に溢れた人でね。ここ以外にも街にはそういった魔法を施している天才だ。まだ若いのに頼りになるわぁ」




 その自慢が始まって既に2時間は経つ。

 笑顔で固まる私を他所にウィルスはずっと「凄い~」と絶賛をするからまた話を弾んでしまう。まぁ、民の何でもない話は意外に役に立つと言う場面もある。


 とは言え、ねぇ。

 たまたま寄った野菜を売っている店に入り、ウィルスが珍しい物だからと眺めていたらそのまま雑談とは……。女性ってホント話し好きが多いね。




「もぅ、こんなに話したのは久しぶりよ♪ はい、これもおまけてあげるわね」

「えっ、で、でも………」



 気分のいいお店の店主である女性はウィルスに、次々と野菜を渡していく。持ちきれなくてワタワタしているのを、隣で見ていた私はひょいと持っておく。その時、ジャラリと手首の枷についた鎖がなびく。


 思わず、その場が固まる。時が止まったように。


 すぐに手を引っ込めたウィルスだが「どうしたんだい、それ」と不思議そうに見られなくなく事情を言う事になったのだが………。




「そうか、そうか。人攫いに付けられて、外せなくて困っているんだね」




 私が嘘を交えつつ、裏ギルドの者達を人攫いと言ったり特別製の枷だからディーデット国に行く事を目的にしていると話したら涙ながらに「辛かったわねぇ」と言いつつ、店内の奥へと招かれて長居している状態だ。

 良いのだろうか、と思いつつ店内を見るとご主人らしき人が代わりに店番をしつつ「妻は話し好きだから……」と、こんな場面は慣れているような雰囲気があった。




(タダで貰うとは思わなかったな)

「でも、ディーデット国には制限が掛けられているしギルドに依頼を出す訳にもいかないのかい?」

「えっと、詳しくは分からないのですけど……ギルドに頼むのにも、ランクのあるものらしくて……」

「手持ちのお金もないまま、慌てて来たから報酬として出す分はなくて……」




 私がそう話せば、ここに滞在しているのかと聞かれ一応知り合いが2人程いるからギルドに話をつけに行っていると嘘を言う。

 ウィルスは時々、顔をそらしているから表情を読ませないようにしているのが分かる。





「報酬を渡す分も考えると、知り合いに一時的にギルドに入って貰ってて転送魔法を扱えるランクまで上がって貰おうかと」

「え、腕に覚えがあるのかい?」

「これでも、剣には少し自信がありますよ。魔物も相手にしたことがありますから」

「まぁ!!! こんなカッコイイ男に守ってもらえるなんて、幸せ者だねぇ!!!」

「え、えへへへ」




 はにかんだように笑うウィルスに私も密かに笑みを零す。

 こうして笑っている姿を見るだけで私の心は洗われる様になる。ウィルスの事をじっと見ていたらニヤニヤとした視線を向けられる。




「もしかして、恋人かい?」

「いえ、婚約者ですよ」

「っ!?」




 ボンッ、とすぐに顔を赤くしたウィルス。すぐに「い、言わないで!!!」とポカポカと叩いてくる。

 



「そ、そんな事を恥ずかしげもなく言わないで」

「事実しか言わないけど?」

「それがダメなの!?」

 



 そんなやりとりしていると何故か「あらあら熱いわね」とか言われてしまう。ふふっ、私的にはもっと自慢したいんだよ?




「だとしたら、貴方達ギルドに登録しているのかしら?」

「まずは知り合いにどんなものかを確かめて貰っていますよ。私達は、文字通り買い物です。日用品とか食料とかです」

「あらあら、デートだなんて若いわねぇ」

「えぇ、彼女といると楽しいですから」

「ならおススメのお店を教えましょう。話を聞いてくれたお礼もだし、また寄ってくれるなら若い子にサービスでお安く野菜をお売りしますよ?」

「嬉しいですね♪」



 ………最初はどうしようかと思ったけど、案外面白い。

 ウィルスの事を置いて、今度は私が話し相手へと変わる。




「あれは当分、長いよ」

「………そう、ですね………」




 遠い目をしたようにご主人に、全てを諦めろと言われている。多分、ウィルスはリベリーとナークに謝っているのだろうなと思いながら次に出かける場所を決めていた。

 どうせ、買った野菜を一回屋敷に置いてこないといけないから丁度いい。それで、ウィルスと一緒に散歩して最後にギルドに入るであろう2人の元へと向かうかな。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ーナーク視点ー



「ん?」



 何だか主に謝られたような気がして振り返る。

 でも、主はそこに居なくて視界に広がっているのは冒険者達が依頼書が張られているボートを見ているだけ。

 王子と居るからここに主は居ない筈だけど………癒し成分足りない?




「うーーーん」



 主は抱き心地が良いし、甘えさせてくれるからついつい素直になっちゃう。リベリーには甘えるなって言われるけど、良いじゃん。ボクはこの中だと一番下なんだから、存分にその権利を使ったって。




「どうした。ぼーっとして」

「………何で、いるの」




 リベリーかと思って返事をしそうになって、気配が違う事に気付く。見ればギルドマスターのローレックが普通にボクの隣で話しかけてきた。

 その所為で、周りからは変に悪目立ちしている。




「リベリーはどうした」

「貴方の部屋に行っているんでしょう。何か証拠を探すんじゃない?」

「………チッ。やっぱり気付いていたか」

「バレバレだよ」




 ディーデッド国に本当に行けないのか。

 ギルド同士での転送魔法は本当に制限付きなのか……。話を直で聞いたリベリーが一瞬でも怪しいと感じたから、内緒でこの人の執務室に何かないかを荒しているんだよねぇ。

 ボクは見張りでもなんでもない。

 ただただ、ここで待っているだけでぼーっとしているだけ。




「まぁ、な。暗殺はお前等の得意な分野だからな」   

「好きでなったんじゃない」




 生きる為に、里の教育係に目を付けられたのが悪かった。でも、目を付けられなかった場合一生をあの里の中で暮らす羽目になっていた。どちらが良かったのかとふと思うが………ボクは主を得られた。


 主を見守り守るのが、ボクの生きる喜びだ。

 主の屈託笑う笑顔は好きだし、ボクも幸せに浸れる。……だから、悲しい思いをさせたくないし、したくないんだ。

 

 睨んだボクの目に何を思ったのか、ローレックは小声で「すまんな」と謝ってきた。元々小声で話すボクと彼の周りには、誰1人として近付く者は居ない。半径3メートル前後は近付かないから無意味な空間が空く。

 その分、ヒソヒソと話す分には都合がいい。




「どうだ、屋敷の使い心地は」

「まだ1日しか使ってないから、すぐには返答できないよ」

「それもそうだな。これでも、忙しい中で掃除したり備蓄を管理したりと大変だったんだぜ?」

「そうだね。……あまり使っていない割には手入れはそれなりに行き届いていたからね。リベリーも驚いていたよ。お陰で使う物を揃えるのは少なくて助かったよ」




 本当に驚いた。

 ロクに使われていないと思っていたから、まずは掃除からだとそう思っていた。でも中に入れば、隅々とまでもいかなくても綺麗に行き届いておりお風呂も台所も使えた。

 こっちは揃える物が少なくて助かったし、リベリーも王子も驚いていた位だし。




「こう見えても掃除が得意でな」




 うわぁ、意外だ。そんなごつい体で?

 え、そんな顔でウキウキしながら掃除しているの。わっ、気持ちわるっ。




「お前、何を想像した?」

「別に」




 ふーんと怒ったようにそっぽを向く。

 リベリー、早く戻ってこないかな。変に注目を浴びるのは嫌なんだけど……。




「まぁいい。ここでの説明に不足はなかったか?」

「………ランクの事?」




 受付の人からの説明を聞き、ボクもリベリーもギルドに登録をした。一時的の場合でも名前登録が必要であり、その身分証明として小型のギルドマークの魔法道具を渡される。


 そして、ランクごとに依頼をこなせるものが違うと言うのも説明された。


 最高ランクはS。

 次に高いのはA、B、C、D、とランクに分けられており、上に上がる程こなせる依頼が難しくなる。




「まぁ、お前等ならすぐに上に上がって来れるだろうよ」

「そう?」



 まぁ、王子もAランクに留めたって言ってから良いのかな。

 あ、そうだ。試しに聞いてみようかな。




「ねぇ、ゲーリーって言う冒険者の事……知ってる?」

「ゲーリーって……ディルランドの、か?」

「有名人?」

「おう。有名もなにも、3年前にぽっと出て一気にAランクまで駆け上がった正体も不明な人物だ。なんだ、お前知っているのか?」




 その声が割と大きかったのか、一気に周りがザワザワと探しく始めた。耳を傾ければ、あのゲーリー様と知り合い!? とか、ギルドマスターとあんな気楽に話せるのかとまた目立つ。




「ねぇ。何のために小声で話してるのさ」

「わ、わりぃ……。けどよ、マジでどうなんだ知り合いなのか?」

「ううん。ここに来た時に何度か名前を聞いたから、有名な人なのかなって思って」




 嘘だ。本当は王子がそのゲーリーだし、今回はどうするのかなって思う。昨日、主がレントって名前で呼んで否定もしなかったから本名で行く気なのかな。




「そういや、パートナーだって言うドールトって冒険者も有名だな。その人しか絶対に組まなかったと聞くし、何度か城の騎士がその様子を見ていたと言う位だ」




 あぁ、それは絶対に心配で見てきたんだね。

 エリンス殿下の護衛の人は、バラカンスさんやジークさんみたいに放任主義じゃないから付いてきちゃったって感じかな。




「ナーク君。お疲れ様」


 


 今度は空耳でもなく、気配もはっきりとしているからすぐに分かった。振り向けば予想通りに、主とご満悦の王子が手を降って来た。ボクもそれに習って手を振りローレックの事を邪魔者扱いのように、出て行けと目で訴える。




「任務はどんな調子?」

「んー。人探しに、飼い猫と犬の捜索、紛失物の探し物をしてきたよ」




 最低ランクであるDからのスタートだから、一気に4つはこなした。他にもお年寄りの肩たたきや子供の世話とあるけどね。




「そんなにこなしたんだ。偉いね」

「え、当たり前の事をしただけでしょ?」

「もう、レントは意地悪。なに、そんなにナーク君の事を褒めるのがいけないの?」




 そう言ってボクの事を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめて来る。丁度、主の胸が当たる位置だし、主から漂う良い香りは安心する。それは好きだからじっとしてると、明らかに不機嫌な王子と視線が絡み合う。


 べー、とちょっとだけ舌を出してみればギロッと睨まれる。主が抱きしめた力を強めてきた。自分が睨まれていると思ったんだろうけど、違うからね?


 主は全然、悪くないからね♪


 そう意味でボクもぎゅっと抱きしめれば、さらに雰囲気が悪くなる王子。むっ、良いじゃない。どうせ2人はずっと一緒だったんだから、ちょっとだけでも分けて貰っても。




「楽しそうだな、おい……」

「うん、楽しい」




 呆れたようにローレックが言う。丁度、リベリーが何食わぬ顔で入り口から入ってきてボク達の状況に目を見張る。溜め息を零して「喧嘩すんなー」と仲裁に入ってくる。


 元々、女の人は受付の人か女の冒険者ぐらいだから主みたいに清楚な感じの人は居ないのだろう。周りは主を見て、頬を染めたりしている。王子がすぐにその視線に気付いて、睨みだけで黙らせるのが面白い。


 こういうのは王族の人を従わせる力って言うのかな。かなり迫力があり、一気に空気が一変した。




「ったく。買い物は終わったんだろ? とっとと行くぞ」

「待って、ナークの事ぶっ飛ばす」

「ダ、ダメ!! そんなの絶対にダメ!!!」




 いやいやと首を振る主は普通にボクに胸を押し付けるような格好だけど。それに周りが羨ましいとか言う声が聞こえて来たから、あとでどう制裁しようかなと密かに考える。




「ナーク君。良くない事したらダメだよ」

「はーい」




 バレちゃったか。

 ……さて、充電出来たしもう少し任務をこなそうかな。


 張られているボートまで行き、適当に任務を取る。そこに王子の手も重なってきて、ギリギリと力を込めて来る。




「魔物狩りする気なら私もやるよ。ウィルスに良い所をみせたいし」

「無理しなくて良いんじゃないかな。休んでれば?」

「挑発しているのかい? 良いよ、どっちが早く狩れるか勝負しようか」

「へぇ……珍しい。そんな事言うんだ」


 

 バチバチと火花を散らすボクと王子。主は状況が掴めなくてオロオロしているけど、リベリーが「気にすんな。くだらない喧嘩だから」と余計な事を言っている。


 どうやら、王子以外に黙らせないといけないのが居るみたいだ。

 ………さて、魔物の餌にでもなって貰おうかな、リベリー。主に余計な事を言った罰だ……文句は言わせないよ。


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