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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
南の国篇
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第60話:その後の方針

ーリベリー視点ー



 姫さんの事を運悪く見付けた連中は、ナークと共に全員捕まえて紐でグルグル巻きにしておいた。裏ギルドの事は、暗殺してた時に聞いた事もあるしバーナンと会う前に何度か組んだ事もあった。


 怪我した奴も多いが、そこは姫さんに頼んで治して貰った。気絶させてるから変な真似は出来ないし、あの2人がそれを許すはずも無い。

 



「治す必要、ある?」

「完全にじゃない。酷すぎるのは流石にヤバいって……八つ当たりなのが丸わかりだろう」

「当然でしょ、そんなの」

「主に手を出そうとして、満足に体が残ってただけ良いでしょ」

「はいはい。そうですね、そうでしょうね!!!」




 ナークから感じる怒りに、弟君からの無言の圧力

 うん。バーナンのプレッシャーに慣れといて良かった。弟君から圧が来るけど、兄ほどじゃないから大丈夫。姫さん、オレの様子を窺わなくていい。


 無視して治療してくれ、なっ?




「……が、頑張り、ます……」




 オレの圧がいけなかったのか、姫さんがビクリと体を震わした。……2人から睨まれるが、無視だ無視。


 ズルズルと引きずるのは、ギルドのトップだけ。あとはナークが見張ってる。街の入り口には、リグート国のような門構えはない。警備している2人組の男は、オレと姫さん、弟君の事を見て怪しむようにじっと見てきた。


 そりゃあ、な。

 オレは紐でグルグル巻きにした男を抱えてるし、姫さんは手首に鎖付きの枷を付けてるし……怪しさ満点だよな。

 弟君はずっと姫さんの手を握って気にしないでいるし……。




「ん?……っ、君!!! この男、何処に居たんだ!?」

「えっと……彼女が攫われかけて、激怒した仲間がボコボコに………」

「人攫いして来る者に加減する必要ないでしょ」




 嘘は言ってない。

 裏ギルドなのはオレとナークが弟君に説明したし、適当に話を合わせて貰った。ボコボコにしたのはナークだし、弟君はトップに対してさらに殴っただけだし、な。

 コソコソと何かを話した後で、1人がすぐに街に入っていくのをチラリと見た。恐らく数人掛かりで残りを迎えてに行く気なのだろうと思い、じっとしとく。




「良ければ、事情を聞かせて貰えるかな?」

「あ、良いですよ………」




 3人で街に入りつつ、ナークに念話で警備の人間が来る事を伝えておく。通されたのは街の中の一番奥の館。門構えが立派で同じく両サイドには先程の警備の人が居る。

 姫さんがドレスを着ているから、貴族扱いとなったのだろう。

 何処の貴族なのか分からないまま、外で事情を聞く訳にはいかない。もし、自分の所の貴族であれば丁重にしないことで問題が起きるかも知れない。


 それを防ぐ為に、あえてこの街の管理者に直接出会うって言う寸法だ。

 弟君の案だし、姫さんを早く休めませたいからって言うのもある。事情を話すのはオレと弟君だけに絞って、ナークが合流したらそのまま2人で大人しくするだろう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「お蔭様で捕らえた者達によって、消息不明だった人達の安否が分かり助かりました。今、ギルドに要請をし護衛を頼む事が出来ました。……ご協力ありがとうございました」



 

 イーグと言う街の中での権力者であり、管理をしているラント・ウェグレスと言う人物が出迎えて来たのはすぐだった。その後に、ナークも来たからそのまま姫さんと部屋で大人しくして貰う。


 あ、オレ達の武器は一応預かって貰ってる。

 弟君は剣で隠せないし、オレとナークも目立つ物だけを預けた。小さめのナイフは幾つかあるが、見た目では分からないように隠してるし、念の為だ。念の為に、持っておく。


 まっ、行くまでにかなり時間を有したが………。




「部屋でゆっくりしててね。寝ても平気だよ」

「で、でも……私も話した方が、良いんじゃ……」




 オロオロする姫さんだけど、弟君は頑なにしなくていいと訴える。ナークも手を握って無言で頷いてるから、弟君の味方なのは分かっている。




「怖い思いしたんだ。慣れない服で砂漠を歩いたから、いつも以上に疲れてるよ」

「レ、レントにずっと背負って貰ったもの……疲れてはない、よ………」




 ちょっとだけ顔を赤くして答えるから、よっぽどあれが恥ずかしいんだろな。まっ、オレ達が歩いてて自分だけが歩いてないって言うのは状況的にやりずらいだろうな……。




「良いから。今は私のワガママを聞いて。………ね?」

「………う、ん。ま、待ってるね」




 頭を撫でて言えば、途端に姫さんは顔を赤くする。人前の、しかもよそ様の館の中で、だ。

 弟君は通常運転。気にした素振りもないし、姫さんを最優先に休めせる事のみにしか動いていない。どうにか姫さんを下がらせて、オレ達2人はラントの後を付いて行き応接間に通される。


 事情を話し、一応捕らえた人物達が何者かを聞く。

 予想していたから、裏ギルドのその一部だと言う。それなりに勢力を持っていたようだが、有名なのが色で示したギルドだと言う。




「元々、所在も掴ませない人達です。年々、幼い子供や女性を攫っており心を痛めていました。ここでも攫われた人達が居た為に、家族会えて良かったと嬉しそうにしていました」




 砂漠地帯でも、砂嵐から守る魔法の防壁。表側のギルド管理を任されているから、貴族だろうなというのすぐに分かった。ま、そうでなくても貴族の事なら同じく貴族に対応を任せた方が良いよな。




「連れが人攫いに合い、それを必死で追っていた結果ですので気にしないで下さい」




 ボコボコにしたのはナークだし、弟君は姫さんに手を出したからと更にボコボコにしたけどな。あの2人にと言うより、姫さんを見付けたのが運の尽きだ。

 運が悪い連中だったな、ホント………。



 

「それにあの方に付けられた魔封じの枷。あれを取り外すのはこちらでは難しいですね。ディーデット国でなら外す事も出来ますが……」

「いえ。色々とすみません……」




 姫さんに付けられた枷が普通のなら、ナークが壊すなり弟君が壊すなり出来る。実際に破壊したとは首に嵌められていた部分と、足首に嵌められていた所は破壊出来た。


 でも、魔封じは魔力を持った人に付けた場合に魔法が使えなくなる厄介なものだ。


 魔力を実感出来た矢先に、封じられるから姫さんも運が悪い。たまたまとは言え、ただの枷だと思って付けたら特別製ってのも……運が悪すぎる。

 手首の方が厄介な物だから、安全に取り外さないと付けられた側に電撃が襲い掛かる最悪な物。




「…………」




 そう説明された時の弟君の表情はとても険しい……。頼むからオレにプレッシャーを与えないでくれよ。




「どうでしょうか。今日はこの館にお泊りになり、ディーデット国に送りますよ。護衛にギルドの方にお願いしますので」

「あの……」




 一泊出来る事に、密かにガッツポーズしていると弟君は申し訳なさそうに質問した。ディーデット国にここから向かうのは最低でも10日は掛かる。馬車なり、ギルド間で扱う転送魔法を行えばもう少しマシになるだろうとの事。

 



「ここからザーブナーと言う街に転送が出来ます。そこからですと、3日程でディーデット国に着く予定ですね」

「行き方だけ教えて下さい。ギルドの護衛は、お断りしたいので」

「……何か、事情がおありで?」

「え、えぇ。実は……」




 そこから弟君は、姫さんに生き別れの弟が居ると言う事を話しこちらに来たのも探しに来たからと言うもの。ディーデット国に居るかも知れないと分かった時に、姫さんが内緒でここまで来た時にあの連中と出くわした、と。


 オレとナークは護衛だし、弟君は姫さんの婚約者だからと追って来たと……嘘を練り込ませてどうにか断ろうとする。


 そう言えば、姫さんは最大で3日しか保てないが……環境が変わるとどうなるかはオレ達にも分からない。姿を保てる間隔が短くなると、護衛としているギルドの人達に対しての言い訳が思いつかない。

 人数が向こうに伝えられた場合、人数の確認の度に姫さんが居る時と居ない時になる。しかも、そこに猫を連れているなんて………怪しまれてるな。




「そう、でしたか……。確かにディーデット国は大きい国ですが、もしかしたら私達の様なこういった街で元気にやっているかも知れませんね。分かりました。では、街まで送り届けたらギルドに寄って報酬を受け取って下さい」




 ここでも転送される街でも行方不明者がおり、裏ギルドの一部が壊滅したとなればそれなりに報酬は高い。なんだかんだ言って、当分の金銭面はどうにか出来そうだ。

 武器の手入れもあるし、服もあるし……まっ、宿は安い所で弟君に我慢して貰うか。姫さん、その時には猫になってるかも知れないから多分オーケーって言ってくれる。




「あと、度々申し訳ないのですが……彼女に、ここで適した服をお譲り出来ませんか? その分はお支払いします」

「いえ。大丈夫ですよ。……知らなかったとはいえ、裏ギルドの一部を落としてくれましたし、それだけでも貢献出来ていますよ。服もここでの一泊も、お礼としてお受け下さい」

「ありがとうございます」




 オレも頭を下げてお礼を言う。報酬としてお金を貰い、まずはと姫さんとナークに居る部屋に通された。パタン、と使用人に閉められ4人だけなのをナークとで目線だけで知らせる。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ーレント視点ー




「魔封じの枷………」




 手首に付けられた枷を説明したら不安げに言った。腕の中で大人しくしているウィルスは何処か、戸惑い気味だけど私の行動を咎めたりはしない。今は、誰かに傍に居て欲しいのだろうと思う。

 今も、私の服をぎゅっと握りしめている事から無意識の行動だとしても、それが嬉しいのだから不思議だ。




「でも、最初は扱えていたのに……。時間の経過と共に難しくなるんだね」

「なんでも、魔法を扱える人を捕えたり売りさばいたりする時に作ったんだって。それが負の遺産として何年か前に製造をしている裏ギルドや繋がっていた貴族達を処分したらしいよ」

「じゃあ、これはたまたま生き残った物なの?」

「アイツ等も、盗賊みたいなことをするから遺跡とか人の物とか盗るからその時に色々と見付けたみたいだよ。見た目はただの枷だから、まさか魔封じだとは知らなかったんじゃないかな」




 ナークが様子を一回様子を見に行ったらしく、拷問している内容を話してくれた。あと、ウィルスとナークには私が言った嘘を伝えて、これからどうするのかも一緒に伝えた。




「お、弟探し……う、うん。分かった、覚えておくね」

「ギルドの人達、来なくて良いよ……」




 不満げに言うナークと「弟、弟、弟………」と必死で覚えようとしているウィルス。そんな2人が可愛いから少しだけ乱暴に頭を撫でて「いい子、いい子」と言えば、ウィルスは微笑まれナークはさらにふくれっ面になった。




「事情を知らない人間を一緒に行動する訳にはいかないしね。知っている者同士で行動をした方が都合は良いんだよ。明日にはここのギルドに行って、そのままザーブナーと言う街に行くんだ。今日はもう寝て良いからね、ウィルス」




 お風呂もここの侍女と入り、食事も頂いたから外はすっかり夜だ。ナークとリベリーは隣の部屋に居るからと、私とウィルスの2人きりにする様子。寝る前にナークがぎゅうっと力一杯にウィルスの事を抱きしめて「また、明日ね」と言って部屋に戻る。


 自然と静まり返る。

 私もウィルスも淡い水色の寝巻を着ている。未だに服を握りしめる力は弱まらず、体も少し震えている。




「ウィルス……。私はここに居るから。安心して」

「………っ」




 ウィルスから縋りつくように抱き付かれ、予想外な力にそのまま押し倒される。勿論、ベッドの上だから痛みはない。彼女の綺麗な髪をすくうようにして、優しく撫でた後でそのままキスをする。

 いつもなら恥ずかしがって身をよじらせるが、何の抵抗もないまま受け入れる。長い事、キスをし息も絶え絶えになった時に解放する。




「っ、はあ、はあ………はあ………」




 空気を吸おうと何度も呼吸をし、落ち着いた時にはまた縋りつくように離れない。これらが何度か繰り返されてから、ウィルスはずっと私から離れないように力強く抱きしめてきた。




「………怖か、った………。レントの事、呼んじゃう、位に………」

「うん。分かってるよ。ウィルスの助けてって言う声、私にハッキリと伝わったんだ。ナークが終わらせていたのは、悔しいけどね」

「ううん………良いの。レントが……レントが居るって言うのが分かるだけで」




 それだけで大丈夫。

 そう言った彼女はそのまま眠ってしまった。体をずらして顔が覗けるようにと、自分の見えやすい位置にウィルスを持ち上げる。女の子らしい、軽すぎる体に不安を覚える。

 ……もう少し増えても良いけど、体重の事は厳禁だとクレールに言われているから何も言わない。




「平気だよ。ずっと、ずっと一緒だから……」




 安心してよと言う意味で、額だけでなく顔全体や首筋にも軽めの印を落とす。時々くすっぐったい様子のウィルスがまた可愛いから、思わず長く続けてしまった。


 ラーファルに連絡をつける為にと、魔法で作り出した白い小鳥を先に飛ばしておいた。明日以降の動きを彼には分かっていて欲しいのもあるし、ディーデット国での現状を知りたいのもあった。


 連絡手段は行い、明日には色々と動く出そうと考えて私も早めに寝る事にする。ウィルスの寝顔を見ながら、寝るのは嬉しい事なのでこれだけは毎日でも続けたいなと……そう思っていたらいつの間にか深い眠りに入っていた。

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