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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
他国交流篇
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夜中の戦い

 王城の見張りは朝、昼、夜、夜中の4回に分けられている。

 2人1組での見回りで行い、城内や王族の居住区などを回りつつ異常がないかを調べている。


 これが、近衛騎士の任務の1つにあたる。

 王族の特にレントとウィルスの居る部屋には、厳重にされている。ウィルスの呪いの扱いもあり、知っているのは当事者を含めて彼等の側近と契約を交わしたナーク、宰相のイーザクと言う少数。


 国王のギースは自分の弟のハルートにも伝えている為に、何かあればハルート自身も動く気でいる。




「!!!」




 そんな中ぶつかる金属音。

 それはレントとウィルスが居る寝室の外で起きていた。当然、そこを見回りの者が通り聞こえる筈だ。しかし、音は時々小さくなり大きくなったりと聞こえた者は勘違いか?と思う程に、聞いた者とで返ってくる答えが違う。


 結論として、聞こえた者と全く聞こえなかった者との差が激しい事から勘違いだと判断をした。しかし、それでも寝室周辺には特に見回りをする時に気を付けようと言う心構えがあった。


 だから、助かったのだ。油断を危惧し、いつもよりも少しだけ警戒を強めた。その結果、彼女は──ウィルスの事を連れ出すと言う真似が出来なくなった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



(ちっ……!!!)




 ネルは目の前で退治する人物に苛立ちを覚えていた。それは自分が大ババ様に言われた事を実行出来ない力不足、いつもならただの見回りで警戒を生まない筈の者達。


 計画。大ババ様が1度話したいと言っていたウィルス姫を、少しの間だけ連れ去ると言うものが全て台無しにされてしまったのだ。




(防音の魔法も、気配を感じさせないものも……全部、通じない。何故……アイツには何故効かない)




 木の枝に足をかけ、幹の方に体を支えるようにして立てば相手も同じように待った。敵意はあっても殺気はない。しかし、明らかに警戒を示すように遠ざけるようにした攻撃を続けている。


 ネル自身が、誰を狙い誰を連れ去ろうとしたのか。

 相手にそれが分かったからこそ、寝室から遠ざけるような攻撃が続けられてしまい、寝室に行くにはまた手間を掛けないといけない事態になった。




「分かったと思うけど……これ以上は無意味。さっさと帰って」

「……」




 対峙する相手からは決まって聞かされる言葉。

 ネルはギリっと奥歯を噛み、悔しさから相手を睨み付ける。自分も相手も、体をすっぽりと隠れる程に覆うようにしてフードを着ている。

 しかし、声色的には男だと判断が出来る。そして、時々接近戦をした時に見えた紅い瞳。


 闇夜の中でも綺麗にくっきりと見えた瞳。身のこなしや攻撃から暗殺者だと悟り、すぐに遠ざかる。しかし、どんなに速く動こうとも相手は必ず見つけ出し、ネルが施した魔法を次々と破壊していく。


 防音は見回りの者達に気付かれない為のもの。

 気配を絶ち、近付こうとしたら全てを破壊されいつの間にかネルの後ろに居た人物。

 離脱して行くも、居場所が分かるのかすぐに見付かる。なのに、なのに……その相手は自分を殺そうとする素振りはない。


 本当に、本当に何事も無かったかのように、そのまま立ち去れと言われる言葉にネルはただ困惑した。相手は言葉を待つ様にして黙っているままであり、何か行動を起こそうとしている訳でもない。




「…………。」




 ネルは考える。

 何が正解で相手にとって逆鱗に触れるのか。


 彼、と呼んでいいのか……その人物は何にして怒っているのかを必死で巡らす。自分の事を殺そうとしないのは仕える相手からの命令なのだろうと考える。

 寝室に居たのは第2王子と目的であるウィルス姫が居る。その2人のどちらかが彼にとっての主であり命令を下した人物にあたると考える。




《ネ……ル………じ……ろ………ネ………!!!》




 その時、大ババ様からの念話が聞こえてきた。

 だが内容は聞こえて来ない。ノイズが酷くて所々でしか会話が聞こえないからだ。




「っ……」




 すぐに自身の魔法である水を生成する。

 数秒後には龍を象った姿となって、相手にぶつけ更には水柱を作り視界を遮る。


 足止めと視界を覆った水で時間をし、転移で移動しようとしたが、目の前に突き付けられたナイフと同時にマントを大きく引き裂かれてしまった。




「なっ……」




 ペタンと尻もちをついた。

 暗殺者で魔法を扱える者も確かに居るかも知れない。しかし、元来の生業は依頼があれば赤ん坊でも手に掛ける者達だ。そんな事を頭の隅で考えていたら、いつの間にか手足を紐で結ばれた状態にさせられてしまった。




「お嬢ちゃん。知らなかった、では済まされないぜ」




 バサッと風でなびかせたマントの音が聞こえ、ゆっくりと振り向く。短髪の黒髪に青い瞳の男性がにこやかに言いつつ、ネルの首筋にはナイフが添えられていた。

 気配が全くない状態。しかも、武器を添えられているのを気付いたのもかなり後だ。ネルは一瞬にして青ざめた。


 目の前にいる者も、自分にナイフを向けた男性も手慣れている。実力差がここまであり、見せ付けられたと悟った彼女の目にはポタポタと涙が溢れてくる。




「っ。……うぅ……うっ……」

「お、おい……まさか」




 呆れたように言い、ナイフが首から離れたその瞬間──。




「うわあああああん、うあ、ああああああ!!!」




 大声を上げてネルが泣き出した。彼女の声が反響しているのか、すぐに魔法師団の者達も駆け付け寝ていたレント、バーナンもこの泣き声により目を覚ましてしまう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「ニャア………」




 ピクピクと耳を動かし、窓から指す光で目を徐々に開けているのはカルラだ。ウィルスが連続で3日間、姿を保てた事で次の主導権は飼い猫のカルラになる。

 



「ニャウ、ニャウ」

「フニャー」




 ペシペシとカルラを叩いてくるのは子猫だ。カルラを母親として慕われているらしく、いつもべったりな状態だ。今もカルラの背に頑張って上り、もう1匹はカルラの真下に潜り込んでひょこりと顔を覗かせている。




「………」




 ノソノソと動けば子猫の2匹も追って行く。ベッドから出ようとしたら、後ろに引っ張られる。そのまま抱き枕のようにして、抱かれてしまい抜け出せない。

 足をバタバタしているも、2匹の子猫が新たな遊びかと思って近付かれてしまう。違うと首を振るも、同じように首を振られてしまい助けにならないと悟った。




「ニャ……!?」




 レントが寝ぼけていると思っていたが、実際は女の子だ。

 緑色の髪には見覚えがあった。

 第1王都のひっそりと出来ていた薬屋。そこで働いていた女の子だと気付く。あの時は、スティングと薬に詳しいラークとでお出掛けをしていたと思い出していく。




「………ミャア」




 試しにペタペタと腕を叩く。見ていた子猫も真似をして、ペタペタと起きろと言う意味も込めて顔や足にハンコを押すようにする。




「っ。あ、あは、あはははっ、くすっぐったい……!! 勘弁して、くすっぐったいってば……」




 懸命に起こすようにしていたが、人間にとってはくすっぐったさを覚えてしまう結果になり内心でショックを受けるカルラ。ウィルスが小さい時には自分が起こしていた。レントもこれで起きてきたから、てっきり起きるものだと疑わなかっただけにショックが大きかった。 




「ニャ、ニャウゥ………」

「んん。……あ、あれ、君!!! ここの猫だったの!?」




 ちょっと不機嫌になるカルラを余所にオレンジ色の瞳の女の子は、驚いたように持ち上げる。

 プイッと無視すれば「……何で怒ってるの」と呆れた声が返ってきた。




「気持ち良さそうに寝ているようで良かったよ。……あのままだと、私だけでなく周りが困るからね」




 寝室の扉にはレントが顔を覗かせていた。ただし、疲れ切った様子と凄く眠そうにしていたから不思議だとカルラは思った。カルラとレント、ウィルスにたまに入り込んでくる猫達のスペースだっただけにコテンと首を傾げた。




ー眠そうだね。……何かあった?ー

ーうん。ちょっと、ね……ー




 歯切れの悪い答えに思わず女の子を見る。

 薬屋にいた女の子。あの時は黒いトンガリ帽子を被っていた気がすると思い、彼女の周りを観察する振りをして何回か回る。


 黒いワンピースのフリルがある可愛らしいデザインの服。帽子はなく、髪をツインテールにしている。腰の部分には、小さな小瓶があり中身が入っていたり無かったりしている。

 色は赤や緑、紫など様々な色の液体がある。

 何だろうか、と興味もあり触れようとしてフワリと空中に浮かんでしまった。




「フミャ!?」

「ニャウー♪」

「ミャアー♪」




 驚くカルラに、2匹の子猫は楽しそうにはしゃいでいる。思わずピタリと動きを止めるカルラに、女の子は「ビンに触らないで」と注意をされる。




「ミャー」

「フミャー、ミャー」

「ニャニャ、ニャン!!!」




 まだ空中散歩をしたいのか、遊び足りないと抗議らしい声を上げるもカルラは1匹は(くわ)え、もう1匹を前足で器用に押し出して寝室から出て行く。

 レントが扉を開けていたのもあり、いつもより早めに出て行けた。未だに鳴く子猫をナークが持ち上げ「おはよう……」とこちらも眠そうに目をこする。


 カルラはグルリと来ているメンバーを見る。

 ナーク、リベリー、バーナンにクレール、スティングと珍しいメンバーだ。そして全員が眠そうにしている。




「あぁ、そうか姫さんは猫になったから気付いてないんだな」




 小声で話すリベリーに、カルラはコクリと頷く。そのまま肩に移動してスリスリと甘える。子猫はその間に頭の上に乗りだらける姿勢を貫く。




「ちょっと……妙な侵入者がいんだよ」

「女の子。……魔法と薬を使った特殊な戦い方してた。王子が対応してるけど」




 心配そうに寝室を見るナーク。子猫は未だに自由に動き回り、ゴロゴロとしたり互いに遊んだりしている。主にリベリーの周辺で起こすので彼は毎回猫パンチやらキックを受ける。




ーあの子が、侵入者……?ー




 ウィルスが思い出すのは薬屋での事。

 何故、この城に侵入したのか。目的はなんだろうか、と色々と考えるも彼女は知らないでいた。それらが全て自分が目当てであった事、あの女の子が魔女だと知るのはレントと出てきてからだ。


 そこから何故か、副料理長のリーガルと司書見習いのミリアを呼びつけるようにと命令が下った。

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