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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
他国交流篇
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第54話:港町

ースティング視点ー




「あぁーくっそ。弟君の八つ当たりめ」



 

 他国の王族達が帰り、一段落したなと思っていたらナーク君がリベリーを連れて来て治療を頼まれた。

 まぁ、俺がいるのは師団の個室もとい仕事部屋だ。

 教えた事は無かったが、やはり暗殺者だし城の中を把握するのも仕事なのだろう。見事に当てられた挙げ句に、治療を頼むから笑顔でその経緯を話すのを条件に行っている。




「リベリー、王子に何したの? 前は一緒に追い掛けて捕まえたけどさ」




 ナーク君から話された内容が気になるが、我慢しようと思い治療に専念するフリをする。リベリーは何故か顔をそらし「多分、夜だな……」と思い当たる節がある様子。      




「ナークと会う前に、姫さんと夜に話した事が結構あるんだ。夜まで執務が掛かるのはバーナンを見てて知ってるしな」




 リベリーの話によれば、レントの部屋で寂しく過ごしていたウィルス様の気を紛らわそうとしたのがきっかけらしい。秘密にしていたが、ウィルスはレントとの刻印により全てバレたんだと。

 東の国から来たから刻印の事は知らないのも無理はない。刻印を行える条件が厳しいし、今はその扱いの難しさから資料として残している国は少ない。


 あっても虫食いだらけで、読めるものではないし。

 それの解読をするより、新しい魔法や扱える魔法の幅を広げた方が良いと言うもの。




「はー。なんか、あれ以来オレが姫さんの近くに居るのが嫌なのか明らかにナークと態度が違う。姫さんは気付いてないから、普通に話し掛けたりまた夜に話したいって言うんだがなぁ」




 んー、と唸るリベリー。

 まぁ、ウィルス様は知らないから余計にレントの地雷を踏んでいるしね。リベリー的にもウィルス様と居るのは楽しいらしいから、微笑ましく見ているよ。

 無論、その後の事も含めてセットで楽しませて貰うよ。




「アンタ……よからぬ事考えるだろ」

「うん♪」

「そうかい……」




 納得されたリベリーと首を傾げるナーク君。分からない様子の彼に飴を渡せば目を輝かせて嬉しそうに食べる。

 ウィルス様と言い、ナーク君と言い俺のテンションを上げさせるツボを知らずにやってるから恐ろしい。

  

  


「ナークはペットじゃねぇぞ」

「分かってるよ。……そう言えば、ウィルス様はバーナン様とレントの間にはまれてるの?」

「だろうな。なんか、今日のバーナンは妙に頑固だから、意地でも離さないだろうしな」

「ふぅん」




 これは明日、ウィルス様が俺に泣きつかれるパターンかな? と思いながらも楽しみにしておく。




「やっぱりアンタ、怖いな」

「そう?」




 呆れたように言うリベリーをほっといて治療も終えた。そうしたら、見回りしてくると言って音も立てずに姿を消した2人。

 俺から言わせたら、そっちの方が怖いんだけどね。

 さっきまで話してたのに、普通に何も無かった事になるって恐ろしいんだけど。



 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ーウィルス視点ー




 昨日は驚いた。バーナン様が、一緒に寝たいと言い、レントが拒否をする攻防が数分。リベリーさんがレントの八つ当たりに似たような攻撃が当たり、一旦中止されてそのまま3人で寝てしまった。




「リベリーさん、大丈夫かな」

「昨日、治療したから平気ですよ」

「っ……!!」




 ボソッと言った一言。

 反応が返って来るとは思わず後ろを振り向く。そこに立っていたのはスティングさんだ。いつから居たのかと疑問に思っていると、今日時間はあるかと聞かれた。




「えっと……ちょっと、だけ。その用が済めば大丈夫です」

「一緒に居ても平気ですか?」

「……は、い」




 本音を言うなら止めて欲しいが、スティングさんはナーク君と同じように護衛をしているんだと思い諦めた。色々言われるだろうけど、とにかく当たって砕けろ、だ。





「すみま──」

「断る」




 バタン、と厨房へと続く扉がリーガルさんにより閉められる。少し考えていると、足元から「ミャアー」と鳴く子猫が3匹。思わずしゃがみ込み手伝ってくれるかを聞く。


 すぐに頷いてくれて、頭と肩に乗せもう1匹は抱き抱える。後ろでスティングさんがクスクスと笑っているが関係ない。


 他に入れる場所も知っているからね、よし行くぞ!!!





「王子の所に行ってて下さい、ねっ!!!」




 そう言われてポイッと追い出された。怪我をさせないようになのか、手付きは乱暴なのに丁寧に子猫達まで追い出されてしまった。リーガルさん、何で分かったんだろう……。




「ミャ、ミャー」

「フニャウ、ミァー」

「ナー、ナー」




 うん、子猫達が落ち込むなって言う感じでポンポン頭を撫でてくれる。ありがとう……皆。




「何でこんな行動を起こしてるのウィルス様……」



 

 そんな笑いを堪えて聞かないで下さいよ……。むっ、だから嫌だったのに~。ぷくっと頬を膨らませていれば、「そんな可愛い顔してもダメですよ」と言いつつプニッと触られる。




「厨房に入る許可、ですか」




 観念してスティングさんに話した。

 私が何で厨房に入りたいのか。この子達の分の食事を作ったとされる彼等にお礼が言いたいのと、自分も参加したからだ。……リーガルさんにそれを言ったら真顔で――




「無理ですから。王族がこんな場所に来ちゃダメですから」




 そう言って丁寧に追い出される。だから猫ちゃん達を味方に引き入れてと思ったら、お見通しなのか普通に追い出されてしまったのだ。そう話したら……スティングさん、お腹を抱えて笑ってて。




「ふっ、あははははははっ。ウィルス様、何ですかそれ!!! 猫も使ってダメだったなんて………!!!」




 うぅ、だから言いたくなかったんだよぉ~~~。

 

 何故かポンと励まされるように肩を叩くのは自由奔放な子猫。他の子猫は甘えてくるし、スティングさんを攻撃し始める始末。ナーク君がポンポンって頭を撫でて来るのは……何で?




「護衛だから」




 なんか、違う気がする。スティングさん、いつまで笑ってるんですかもう。

大笑いしたスティングさんが、普通になるのにそこから数分かかるなんて誰が予想出来ようか。




「ごめんごめん。ウィルス様が面白い事してるから、ついね。……レントが見たら1日中仕事に手が付かないと思うけど」




 首を傾げた。なんか、後半が全然聞き取れない。変わらずナーク君はずっと傍に居るから子猫達も同じように甘えて来る。なんか、猫に埋もれている感覚がヒシヒシと感じる……。


 


「主。前は自分で作ってたの?」

「うん。その時も、料理長さんから何度も断られたけど、しつこく毎日通ってなんとか入れたの」

「……ちなみに、その時も……」

「はい!!! 猫攻撃で落としました。毎日、欠かさず飽きもせずに行きました」




 そう答えたらスティングさんがまた笑ってきた。……イジられる可能性、あるよね。

 チラっと見たら視線を逸らされ「手元に置きたいなぁ」とか聞こえた。子猫の事だと思って試しに渡そうとすると、スティングさんは笑顔で違うと言われた。




「………?」




 ナーク君の方に顔を向けると、フルフルと首を振っている。知らないと言う意思表示だと思い、私も分かったと言う意味で首を縦に振る。

 なんだか、スティングさんがプルプルと体を震わせ「無自覚、怖い……」と言って手で顔を覆ってしまった。意味が分からず、2人で首を傾げたらさらに「可愛い……」としゃがみ込んでしまった。



 バラカンスさんとスティングさんとで、やって来たのは南側に位置する港町。ナーク君の姿はなく、こっそりと居るが気配を感じさせていないんだって。


 子猫達は、クレールさんとジークさんが世話をして貰ってます。帰ったら、レントとナーク君と3人で遊ぼうっと。

 



「バラカンスさんもこちらに用事があるんですか?」




 そう聞けばスティングさんの方を一瞬だけ見て「スティングに頼まれたんだ」と、口元に手を当てながら言った。わぁ、背が高いしスティングさんのお兄さんだからかすっごく格好いい。


 真面目であたり笑みを浮かべない人だな、と思ってごめんなさい。そう思って頭を下げたら「どう……しました?」と不思議そうな表情をされてた。




「あ、その……バラカンスさん、ギルダーツ様と同じであまり笑わない印象を受けたので……申し訳なくて」




 後ろでスティングさんが吹き出した気配を感じて、振り向いたがいつものニコニコとした表情だけだ。勘違いかと思ったら、ナーク君から念話で笑ってたと聞きほっとした。




「ま、まぁ。ウィルス様が来る前はあまり笑わなかったからその印象は合っているよ。レントがこっちに用があるんだ。迎えにも行こうとしていたからちょうどいい」

「レントが……?」

「港町の管理は代々王族達がやっているんだ。国王の弟が管理してその子供も同じく教育を受ける。多分、夜会で少し顔を合わせたと思いますよ」




 スティングさんの優しい説明で思い出した。ゼスト様が連続でダンスをし始めたからそっちにばかり気を取られていたが……。確かにアクリア王と話をしていた時に紹介されたんだっけ。


 うぅ、昨日の事もあって記憶が曖昧だ。




「お疲れ様です」


「「「お疲れ様です!!!」」」

「初めて見る方ですね。なんとも可愛いらしい」

「「「可愛いらしい方で!!!」」」




 スティングさんの服を思わずギュッと握ってしまう。

 港町の管理をしている場所だと言う事で、海沿いの大きな建物に案内された。屋敷にも見えるその場所は住み込みで働く人の為でもある事から、大きい敷地を用意されているんだとか。


 それより入った瞬間に、出迎えられた声にビクついた。

 バラカンスさんとスティングさんに落ち着くように言われた人達は、ここの警備をする人達みたい。


 バラカンスさんも体格良いし、ラーグナスも筋肉はある方だ。だけど、声を掛けられた人達は……その、なんと言うか。筋肉が凄い。肉の壁って言うのかな……。


 迫られたら嫌だ。


 スティングさんとバラカンスさんの後ろで隠れたいけど、2人が初めてだからとか説明を色々してくれている。

 何処か隠れられる場所はないかと、キョロキョロとしていたら「どうしたの?」と言う声に後ろから抱き込まれる。




「レント……」




 思わずギューッとしがみつく。やっぱりレントで合っていると思い、スリスリしていると優しい手つきで撫でてくれる。




「スティングが連れて来るとは聞いてたけどね。……どうしたの、なんか怯えてない?」

「……そ、それは」




 出迎えて来た人達は優しいんだろうけど、大人数で迫られるのは嫌だなとか答えたら良いんだろうか。あ、いや、私が部外者だからそんな事は言えないから……と色々と考えて唸る。

 ナーク君が飛びださないでくれたのが、救いかなと思う。




「前に出迎えの時に注意したけど? 大人数で迫るのはよくないって……女の子には注意するように、言ったよね?」




 ピシッとその場の空気が凍った気がした。


 スティングさんは少し呆れた様子で見ており、バラカンスさんはワザと目を逸らしてきた。私がキョトンとレントの方を見ると、彼は何事も無かったように「じゃ、中に入ろっか」と言って横抱きに連れて行かれた。




 この時、私はすっかり忘れていた。


 色々と考えて、頭の中で思っていた事がレントにも届いていたと言う事。それがレントの怒りに触れて彼等を注意した事……。スティングさんに刻印の力だよ、と後から教えて貰い気付かされたのだと。



 刻印の事を忘れていた私に、レントは分かりやすくふくれっ面になり……叔父夫婦に微笑ましく見られるなど、この時は思わなかった。

 

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