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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
他国交流篇
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重なるハプニング

 カーテンから差し込む日の光。それがちょうど寝ていたウィルスの顔に当たり、うっすらと目を開ける。




「ん、んん……」




 モゾモゾと向きを変えてそのままひしっと抱き締めた。自分の知っている安心感だから、ふにゃりと笑みを浮かべた。その後も頭をグリグリとこすりつけ、幸せそうにまた笑う。


 しかし、ウィルスは気付いていない。その行動にノックアウトされた男が2人もいたことを……。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ーレント視点ー



 あぁ、朝から大変な目にあった。

 朝からテンションが高い私をどこか微笑ましく見ている近衛騎士。それ程、自分の顔が緩みきっているのだと自覚したが、アレは絶対にウィルスが悪い。




「おはようございます、レント」

「おはようございます。……朝から妙にテンションが高いね。ウィルス様となんかあった?」




 バラカンスが挨拶だけで済まし、ジークがついでとばかりに聞いてくる。既にクレールも来て、書類の整理を始めていた。私に気付いて挨拶をかわし、自分の席に座る。




「ウィルスが可愛すぎて、可愛すぎて」

「あ、そう」

「良かったですね」




 バラカンスが同意したのに、ジークときたら……。自分でふっておいて無視をするとは良い度胸だな。そう言う事なら良いだろう。テンションが高い理由を教えておこうと思い顛末を話す。



 目が覚める。分かっている事でも、隣に彼女が居る事に安堵する。ふと、向かい合わせのナークと目が合う。彼も同じ位に目が覚めたのだと気付き、小声で挨拶をかわす。




「よく眠れた?」

「んー。前に比べれば……王子と主のお陰」




 まだ眠そうに目をこする辺り、本当によく寝たのだと思う。寝間着を持っていたからか、長袖の余裕のあるものに下は短いズボンを履いていた。


 良い目覚めに満足した所で、ウィルスが「ん、んん」とうっすらと目を開ける。私の事を認識したのかゆるゆるとすり寄ってきて、やがて落ち着いたのかふにゃと笑ったのだ。


 落ち着く為になのか、頭をグリグリしたり自分にとっていいポジションを見付けようとしているのか探している仕草。落ち着いた時の安心しきった顔が……凄く凄く癒される。




(あぁ、もう、ダメ………可愛すぎるよ)




 ギュっと優しく抱きしめる。向かい合わせに居るナークも同じ事を思ったのか、顔を合わせられずに下に潜り込んでいる。




「ミャ、ミャ」

「フミャフミャ」

「うぅ、ダメ………主が可愛いよぉ」




 下で寝ていた猫達からの声にナークがポツリと零す本音。うん、やっぱり同じ事を思ったね。もう………そんなに私を突き落としたいのかな、ウィルスは。




「ねぇ、王子。今日、ボクも一緒に食べたい」

「ん?」



 見ればじっと見てくるナークと同じように、シーツにぶさがりながらも同じく見る猫達。あぁ、朝からこんなに癒されていて良いのだろうか。

 返事がないのが不満なのかぶすっとし始めるナークに、尻尾を振っていたり、「ミャー、ミャー」と甘えた声を出す猫達。




(ナークが段々、猫っぽく見えてきたぞ……)




 彼が自分で見付けて来た野良猫は、彼の性格を現しているのかウィルスに凄く甘えてくる。彼が甘えれば猫達も甘えるし、時々日なたぼっこしている姿をジークやバラカンスに報告として聞いている。




「うん。今日は朝から一緒だよ」

「やった♪」




 現にナークが喜べば、猫達も嬉しそうに鳴いている。この状況で起きないウィルスは本当に、深い眠りなんだと理解する。その後、ウィルスが起きてきて朝食を3人で食べたのは言うまでもない。




「うわっ、ウィルス様かわいそうだな……」




 ジーク。何、かわいそうって……。バラカンスもクレールも納得した表情なのに失礼だな。




「だってウィルス様、ずっと真っ赤になりながら食べてるんだろ。レントが食べさせるから」

「え、ダメなの? 今日はナークと交代しながらだから、居たのは女官長のファーナムだけだよ」

  



 そう説明したのに「いや、そう言う問題じゃなくて……」と、納得しない表情に首を傾げた。ウィルスが、顔を真っ赤にして食べるのは今に始まった事じゃないのにね。

 バラカンスは昨日の私の態度から、今日は普通にしている事に安堵していた。あぁ、昨日は誰かさんが予定にない事をやったから……迷惑だったよ本当。 




「ルベルト王子とエリンス殿下は温厚な性格で助かりました。ギルダーツ王子がすぐに止めに掛かった時はどうなるかと……」

「ダンスをしていた時は普通でした。やはりウィルス様が自分達と繋がりのある親族だから、あの行動なのでしょうか」

「だろうね。あと一昨日、一緒に行動したから余計に気になったんじゃないかな。ウィルスは目立つし」




 彼女自身、特別な事はしてないんだと思う。それでも普段の猫達と遊んだり、暗殺者だと知っているナークを相手に普通に接したりしている。自然体でいるからなのか、騎士団の人達や師団の人達にも人気で、ついには厨房の人達にまで人気になっている感じ。


 何だろ、人を引き付けすいのかな?




「そんな幸せなレントにはこれな」



 そう言ってジークが渡してきたのは大量の書類。嫌だな、と思っていたら「さっさと片付ければあとは、好きにして良いから」と珍しい事を言ってきた。

 ……今更、撤回とかなしだからね。絶対に早く終わらしてウィルスと過ごす!!!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ーウィルス、カルラ視点ー



「フミャーン♪」



 本当ならまだ余裕はあるけど、カルラがお風呂に入りたいとせがんできたからちょっとだけ猫でいます。まぁ、昨日はダンスで疲れてたし、カルラもレントに洗って欲しかったんだよね。

 まっ、もう少ししたらカルラの時間をいっぱい取るから、今だけはリラックスね。




「ミャウ、ミャウ」




 うん、思い切り頷かれたし尻尾振って喜んでるぞ。分かった、レントにも伝えないと。さてさて、もう出ようかと言う所で「誰か居るのか?」と男性の声が聞こえた。




「!?」




 しまったぁー。すぐだからって、言われてた場所とは違う浴室に入ったんだ。鏡があったから、チラッと見て思わず声をあげそうになった。

 私はカルラにも、我慢するようにと願い私の必死の願いに何かを悟ったのだろう。じっとして、静かに静かに出て行こうと動く。




「ほぅ、珍しな。猫が浴室にいるとは」

「ミャ?」




 嘘でしょ……。ギ、ギルダーツ様!? カルラ、逃げて。全速力で!!!




「そんなに好きなら内緒にしとくさ。来るか?」

「ニャニャ♪」




 何でそっちに全速力なの!!!

 あぁ、既に洗われる態勢に……。レントの時にも思ったけど、洗って貰うの好きだよね、カルラ。




「~~♪」




 あぁ、もう……鼻歌まで。そんなに良いんだ。ギルダーツ様、動物に慣れるんだね。嫌がられたらどうしようかと思ったけど、気にし過ぎだったようだ。




「人に慣れているのか、お風呂が好きなんだか……面白いな、お前」

「ニャ、ニャン♪」




 ま、良いか。気分良くなるとたまに変わるけど……。ん、待ってカルラすぐに……と思った時には淡い光に包まれる。




「っ、なんだ……!!!」

「ふきゃっ」




 固い床に当たると思った感触はとても柔らかかった。どう思ってもギルダーツ様の上に乗ってしまっている。自分と同じ色の瞳が見え顔が赤くなる。それは相手も同じだ。




「な、んで……姫が……」

「あっ……ご、ごめんなさい!!!」

「まっ―――」




 呼び止める声が聞こえたけど、それは無視して急いで出る。


 ここで私も全裸でないだけで良かったかも知れないけど……いや、あんまりよくないか。知られた……他国の、知られたらマズい人に……。

 と、とにかくレントに知らせないと!!!




「っ……」



 

 知らせる前に何処か落ち着ける所で、と思ったのによりによって貴方に出くわすんですか……ゼスト様。

 私が来ていたのは城にある小さな庭園の1つ。良い香りだなと思っていたら薔薇園だったのか、と気付いた時にはゼスト様は既に目の前に来ていた。




「どうした、髪が濡れている様に見えるぞ」

「っ」




 ギルダーツ様と対面した時かも知れない。風呂の蒸気で、服も髪も中途半端に濡れた様な感じに思える。……どうしよう、少し寒くなったかも。そう思っていたら後ろからジャケットを掛けられる。

 ふと、後ろを見れば紫色の短髪に緑色の瞳の男性が立っていた。その人の物だと気付き、お礼を言った後で急に恥ずかしくなって逃げよとするも、ゼスト様に阻まれてしまう。




「あ、あの……」

「こちらに来い。奥に行けば日に当たるぞ」

「い、いえ……」




 貴方に会いたくはないと拒否を示したのだが、腕を引っ張られそのまま奥へと連れて行かれる。何気に入り口付近でさっきの付き添いの人がいるから、2人きりになるんですね。

 嫌だと思って力を入れようとしても、男性に勝てる訳もなく奥へと連れて行かれる。




「嘘は言わん」




 ほら、と開けた場所に出れば確かに日の光が浴びられるなと思いそのまま全身に当たる様にすればほっとなる。しかし、気を許す訳にはいかないと距離を離しながらじっと見る。




「そう警戒するな。話がしたいと言ったのは本当だ」

「そ、そうですか……」

「ふむ。薔薇の香りが髪に移ったか、良いものだな」




 ぎょっとして声を上げるのを我慢した。だって、髪の一部を手に取り香りを楽しむ様な仕草。逃げたいのにさらに逃げられない状況だ。上着も落とさないようにしっかりと掴まないといけないから、じっとしているのも辛い。




「……昨日にはなかったな、その首の痣」

「っ!?」

「王子にマークされたか?」




 思わず上着を持っていない方で首を片手で隠す。

 ダンスが終わって、疲れたようにナーク君と寝たから気付かなかった。……レント、寝ている時になんてことをしてくれたんだ。




「くくくっ、噂に違わない溺愛ぶりか」

「っ、ちょっ………!!!」




 レントが付けたのとは逆方向の首筋に目をつけたのか、ゼスト様はそのままキスマークをつけようとしてきた。両手は既に塞がっているし、後ろに下がろうともゼスト様に引き寄せられて逃げ場はない。




「なにしてんの、貴方」

「「!!!」」




 第3者の声にギクリとなる。ゼスト様が舌打ちしたから、本気でやろうとしたのだと思い冷や汗をかく。




「他国で堂々と王子の婚約者を口説こうなんて真似……流石だよね」




 声はとても冷え切っており、さっきまで温かったはずの身体が既に下がっているのは分かる。ゆっくりと目を声が聞こえた方へと向ければ、見えたのは薄い紫色の髪に金色の瞳。

 不機嫌な表情のルベルト様が立っていた。




「邪魔をするな」

「うるさい。こちらは貴方の所為で散々な目にあったんだ」




 既に勃発しそうな雰囲気……ごめんなさい、正直どうして良いのか分かりません。ナーク君を呼びたいけど、彼は絶対にゼスト様を優先してきそうで怖い。


 うぅ、誰か助けてーーーーー!!!!!

 

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