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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
他国交流篇
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第49話:踏んでしまったが後悔はない

ーレント視点ー


 

「もう少し抑えろよ……」

「なんでそんな事する必要があるの?」

「あー、まぁ、気持ちは分かるけど……」




 今の私の雰囲気が悪いとエリンスから注意を受けるが、抑えようなどとは思わない。今もチラリと私の事を見て、挑戦的な視線を向けてきたゼスト王太子。

 エリンスが怒っている理由が、ウィルスが他人と躍る事が許せないのだと思われる。……それも当てはまるが、私が気に入らないのはゼスト王太子の視線だけだ。




(会話の途中でウィルスを誘ったのも気にくわない)



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 他国の王子達に失礼が無いようにとウィルスはダンスの講師から教わっていた。が、講師から聞いた内容は私を驚かせたものだった。




「どうやらウィルス様は、他国のダンスを熟知している様子でした。恥をかくような事はないでしょう」

「そう。悪かったね、わざわざ時間を割いてもらったのに」

「今は王子の部屋で休んでいるかと思われます」




 「では」と言って執務室から出て行った講師を見る。言葉の端々に怒りを滲ませているのを感じ取った。……次からあの講師をウィルスに会わせない方が良いね。




「レント、気にするな。ウィルス様がずっと君の部屋に居るから、何も出来ない亡国の姫様だと思われたんだろ。アクリア王の公認が強引だと思われたんだろうさ」




 ジークがため息交じりで教えてくれた。バラカンスも苦笑しながら書類をまとめて、私の机に置いていく。




「ウィルス様の体質を知らない者達の反応は実際、あんな感じだ。ま、彼女は気にしないまま撃退してるから心配してないよ」

「ふんっ、気に食わないからって彼女に八つ当たりするのはどうなの」




 バラカンスの撃退と言う言葉が引っ掛かり、その内容を確かめる。聞けばダンスの講師の反応は、他の講師にも見られたらしい。他国の歴史、作法、王子の特徴と現王の名前を聞いていけば全て答えていた、と言うものだ。




「ほら、スティングが彼女に付きっきりだから……」

「ミャーン!!!」

「えっ、カルラ!?」




 トンッ、と机まで来て私を見るカルラ。スリスリと私に寄って来て甘えてくる。頭を撫でているとスティングが一緒に入って来て、意地の悪い笑顔を見せて来た。あぁ、彼の仕業か……と思いながら言葉を待った。




「どう? 仕事疲れを癒したいって言うウィルス様の願いを叶えた結果」

「驚いたよ。どうしたの、いきなり」

「だから言ったじゃない。彼女の願いを叶えただけだって。あと、さっきガックリと肩を落とした講師を見たよ。……予想外だったろ?」




 ニヤニヤするから、予想通りだと思い笑みを零した。カルラは今、バラカンスの頭に乗ってだらけている。気にしないで作業する辺り、体幹が良い上に慣れたんだなと思った。




「当たり前でしょ、彼女に恥をかかせたらそのまま王子の評価が下がりますからね。ウィルス様、教育がかなり行き届いているから教える方は楽ですよ」

「だからってカルラのまま、教えるのもどうなの」

「正解してても不正解でも、全部鳴き声ですからね。俺は面白いから良いけど」

「スティングの遊びに付き合わさないでよ……」

 




「レント。大丈夫か」

「うん。平気平気」




 ついこの間、事を思い出していた私に心配な声色で話し掛けるエリンス。アクリア王の方は、ギルダーツ王子とルベルト王子とで話をしている。


 視線を再びウィルスとゼスト王太子へと向ける。何やら話しているが、内容は分からない。ただ、雰囲気的にウィルスを口説いているようにも見えた。




「お、おい。レント……?」




 ギョッとしたエリンスを気にしないでいる。横からイーグレットが回収したように見えたが、今はウィルスの方を優先にダンスが終わるのをただ待った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ーウィルス視点ー



 さっきからダンスの合間に話し掛けてくるゼスト様。躍る直前に「興味を持った」などと言われ、私は持たれる気はないと言わんばかりの態度をとる。




「驚いた。他国のダンスに興味があるのか?」

「いつ何時、他国に嫁いでも恥ずかしくないように、とは思います。ダンスをするのは好きですから」




 ふんっと顔を背ける。

 会見の時はこちらを狩ろうと鋭い目をしていたのに、今はそのようなギラギラした目ではない。どういう心境の変化かと思わずにはいられない。

 それにギルダーツ様の言っていた事を思い出しさらに身構える。




『ゼスト相手に隙を見せるな、は難しいだろう。奴は興味のある事はとことんまで調べ尽くす男だ。警戒しておいていい』




 何かあって困るのは向こうだと言い切ったギルダーツ様。気合を入れていたら何故か頭を撫でられてしまい、自分がペットになった気分になる。それにちょっと不満げに思っているとルベルト様から一言言われてしまった。




『そこから脱出するのは無理だと思うよ』




 まるで未来永劫無理だと言われているようで、思わず目を見開いてしまった。むむっ、と警戒心を抱くと『猫みたいな反応してもダメだよ』と言われそのままギルダーツ様に撫でられ続ける。




ーなんか、酷い………ー

ー可愛いものを素直に可愛いって言うのはダメなの?ー

ーむっ、レントまで………ー




 レントの心の声が響き、思わず言い返すとそんな答えを返された。恨めしいと思いレントの事を睨むと彼は変わらずの笑みで、何ともない様にされてしまう反応。………悔しい、なんだ猫みたいって。



 ダンスをしながら控室でのやりとりを思い出す。

 そうしている内に曲の終わりを告げた。ふぅ、と息を吐きこれでおさらばだと思い手を放そうとしたら……ゼスト様は離さずそのまま別の曲をリクエストしに向かってしまう。




「ちょっ、ちょっと!?」

「今ので納得しろと言うのは無理だ。悪いがもう一曲付き合え」

「なっ……!?」




 振り払おうとするもそのままズルズルと連れて行かれる。そして流れてきた曲を聞いて思わずキッと睨み付けてしまった。

 さっきの曲は緩やかな中でも時々激しさのあるものだったが、今からのメロディーを聞き確か難易度の高いものだったのでは……と内心で焦る。


 東の国の曲はダンスをするのに、難易度の高いものが多くある。砂漠と言う厳しい環境での生活でも、めげずにいると言う表現を表わしているのかは分からない。が、殆どの場合はステップやスピード感のあるものが多く踊れるものも少数だと聞く。




「ここで止めれば、姫の婚約者の名に傷が付くぞ。……良いのか?」

「っ!?………卑怯者」




 本音を言えば面白そうに目を細められる。むっとした私は始まる直前で、ゼスト様の足をワザと踏みつけた。




「!?」




 まさか私がそんな行動を起こすとは思わなかったのだろう。

 痛がる素振りを見せない辺り流石だと思うが、幸い私の着ているドレスは裾が少し長めになっているから近くからなら踏まれたかも位の認識だ。


 誰もワザとなどとは思わない……。


 そう思ったのに「気に入ったよ、姫」とゾクリと背筋が凍ってしまう。耳元でそう呟かれ、興味を持たれるなと言うギルダーツ様の忠告を無視してしまったと後悔した。




「見た目からそんな行動をとるとはな……人は見かけによらないと言う事か」

「……何にでも思い通りになるとは思わないで下さい」

「ほぅ。強気なのも良い……ハーベルトは従順な連中が多い。反抗的な方が退屈せずに済む」

「人を道具のように言わないで」




 難しいステップが多いからか、私達以外で踊ろうと言う人達はおらず自然と注目されてしまう。ターンをする中でレントと視線をかち合う。大丈夫、と言われているようで凄く安心した。


 だからフワリと笑みを零した。


 レントが味方についていると言う安心感。ディルランド国のエリンス殿下、イーグレット様、アクリア王が見ている中で失敗なんて出来ない。


 その挑戦受け取ろうじゃないか、とダンスをしていけば「そのように笑うのは王子の前だけか」と言われれそっぽを向く。




「ハーベルト国に来る気はないか」

「この態度を見て誘うのはどうかと思いますよ?」

「ほう。来る気はあると受け取るぞ」

「観光なら構いません。ですが、貴方の妃にと言われるのであれば謹んでお断りします。私はレントのものですから」

「身も心も、か」

「どう思われようとも構いません。心変わりなどありえませんから」

「くくっ、絶対か?」

「はい。あり得ません」




 話をしながら必死で踊る。こう難しい曲をしながらで、よく間違えないなと驚きながらも必死で食らいつく。その間、ずっと面白そうに目を細められていたが気にしないようにと無視をする。

 曲が終わり一安心する。見ればゼスト様は満足気になったのか、私の方へとおもむろに手を伸ばしてくる。




「戯れは寄せ、ゼスト」




 パシッと別の手が阻み私の事を守る様にして遮る。金髪の髪がサラリと揺れ自分と同じ瞳の色は、睨み付ける様にしてゼスト様を見ていた。




「1人占めにしては少々やり過ぎだ。彼女が躍り切れたから良いようなものの………どういうつもりだ」

「どうもこうもない。お前も知っているだろう、俺の性格を」

「執着するな。彼女はレント王子の婚約者だぞ……婚約祝いをぶち壊す気で来ているのか」




 一気にピリピリとした雰囲気に周りはどよめく。マズいと思い、私はギルダーツ様の手を取る。一瞬、驚いた様子だったがそれに構う事無く「ダンスのお誘いですよね?」と、言い適当に理由を付けて彼から離れる。




「っ、すまない……」

「い、いえ。私も助かりましたから」




 途端に自身の失敗を責めるギルダーツ様。気を取り直して曲を再開するようにお願いをすれば、何事もなかったかのように別の曲が流れ始める。流れ的にこのままギルダーツ様と踊る形になったが良いよね?




「すみません、強引な方法で……」

「いや、いい。……くそっ、ディーデット国でなら奴は絶対に拒否している所だ」

「助かりました。ギルダーツ様を使って流れを変えてしまい、申し訳ないんですけど……結果的には良かったですよね?」

「すまない。このままお付き合い出来るか」

「はい、喜んで!!」




 そう言った私はそのままギルダーツ様と踊る。先程までの悪い雰囲気を変えられたのは助かったと思いつつ、思わずゼスト様の様子を気になりチラッと見る。

 完全に目が合ってしまいギクリとなる。余計な事をしたな、と思いつつ何でもない様に装ってダンスを続けた。


 心の中で興味を持たれませんように、と切に願いながら………。

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