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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
他国交流篇
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第46話:他国同士の会見~彼女の大パニック~

ーウィルス視点ー



 レントにお仕置きとばかりに、朝食時いつものように女官達に見られるという慣れない時間を過ごした。あれかな、昨日猫のパンチを受けたから?

 でも、あの子達はじゃれてた気が……。 

 そしたらレントが「たまの意地悪」と笑顔で言い切った。毎回、意地悪を受けている気が……もう、普通に食べると言う願いは諦めた方が良いんだね。




「もう少し締めましょう」

「はい!!」




 ぐぐっとコルセットを締められていく。ドレスを着る時には必要だし、細く見せて他国に良い印象を付けたいのだと。会見では婚約祝いだからと、私とクレールさんを紹介したらさっさと出ていき夜会まで別室で待機。


 南の国のディーデット国のギルダーツ王子、ルベルト王子、東の国のハーベルト国のゼスト王太子と躍るとか……。

 スケジュール大変です。


 確かにこの日の為にとその2国のダンスを練習した。したけれど、バルム国でも練習していたからそんなに苦労して覚える事はなかった。細かい所を修正する位で終わり講師の方からは「流石ですね」と褒めてくれたのに、なんだか怖い顔をしていたのは気のせいかな?




「気にしてはダメですよ。………恐らく他国のダンスまで踊れるとは思わなかったのでしょう。ふふふっ、貴方がそれらの教育に関して優れているのは分かりますとも」




 何だろう、ファーナムから凄い圧が……。

 え、私、怖がってないよ? 

 ただ、不思議に思っただけなのに。あぁ、レントの部屋に籠ってるから何も出来ないと思われたのか。

 まぁ、猫になるからその通りではあるけれど。スティングさんからの資料攻め凄かった……。


 だって、手加減抜きなんだよ。カルラのままでも「ではウィルス様、この方は誰ですか?」と猫であるカルラに聞くからこっちは「フニャニャ、ニャーン!!!」と答えても言葉を分かるのはレントしかいない訳で……。




「不正解ですね」

「フニャ!?」




 正解を言っても全部「ニャーン」にしか聞こえないから分かる筈もなく……。レントが執務から戻ってきてやっと通訳が出来る状態。その後は寝る間も惜しんで、質問攻めが続きレントが「これ以上やるなら明日にして」と脅してくる始末……。

 あの時ほど、怖いものはなかったよ。ナーク君も戻ってきて睨んでたし、何度止めるように言った事か……。




「ふぅ、バッチリです!!!」




 女官の1人が息を吐き達成感からか表情がとても誇らしくしている。ファーナムも嬉しそうに微笑み「次、行きますよ」と表情と行動が合っていない。髪を整え、身に付けているドレスに合うようにと化粧が施されていく。


 前の夜会の時には3人だったのに、今日は5人と人数が多く髪と化粧の同時進行。他国にはお披露目にもなるからか周りの気合が凄い。




「もっと美しくしないと!!!」

「レント王子しか似合わないとばかりにしましょう!!!」

「レント王子とウィルス王妃様の為に!!!」

「国の未来の為に!!!」

「「「エイエイ、オーーーー!!!!」」」




 これが私をセットする前に女官達に気合の入れよう。

 す、凄い皆の目が炎のようにギラギラとしている。

 ……ちょっと怖かったけど、綺麗にして貰うのにそう思ったらマズいかと思い無心でいる。

 そんなこんなで、気合十分の彼女達に綺麗に磨き上げられ化粧をバッチリと決めた自分がいる。マジマジと鏡に映る自分を見る。


 髪はアップにせずにそのままの長さでおり、光沢が放って煌びやかなピンク色に輝いている。最初に会見を行う事から派手にせず私の瞳の色に合わせてくれたのか薄めの紫色のドレス。首にしているチョーカーも首飾りとして、偽装したから大丈夫。




「間もなくレント王子がお迎えに来るかと思いますよ」

「は、はい……」




 いかんいかん。つい、見入ってしまった。やっぱり他国との会見だから気合が凄いなぁと思っていると控室にレントが入ってくる。




「お待たせ、ウィ……ル……ス……」

「あ、レント♪」




 鏡越しではなくレントの方へと向き直って答える。

 彼のサラサラした銀髪が今日も素敵に見える。うん、やっぱりカッコいいなぁ~。




「………」

「レント、どうしたの?」




 コテン、と首を傾げる。確かに今日は気合が入る日だ。だから、前の夜会の様な恰好とは違うし他国に恥ずかしくないようにと、周りもピリピリするのは仕方ない。


 レントの恰好は外交だからかエメラル色のキッチリとした正装だ。胸元には薄い色のエメラルド色の羽が添えられ、反対側には銀の飾りが花のように飾られている。

 白い綺麗な手袋をしてカッコよさが倍増だし、いつものような微笑みをすればキラキラと輝く雰囲気が振りまかれる。


 しかし、今日のレントは驚いたように固まっている。しばらくして、口に手を当て視線を彷徨わせているのか何度も私を見ては視線をそらすを繰り返している。




(………気合、入り過ぎ?)




 チラッとファーナムを見るが、彼女は微笑むだけで何も答えない。傍に控えていた女官達にも視線を向けるが、皆ニコニコとしていて何も答えてくれない。




「レント……大丈夫?」




 私が近付いて話せばレントはビクリと肩を震わし「あ、いや……」と顔が赤くなっている。いつも翻弄されてばかりだから何だかイタズラ心が働いている事に内心、どんな表情するのかな? と動いてみる。




「見て見て、似合う??」




 クルリ、と回転すればフワリと舞うドレスの裾。それを見たレントがゴクリと喉を鳴らす音が聞こえ「に、似合う、よ……」と普段では見られない表情をしてくれる。




「ふふん、いつも翻弄されてるからなんか気分がいい、っ!!!」

「うん、魅力的過ぎて……このまま連れ帰りたいな」




 イタズラしようとしたのがいけないのか、と密かに思い今度は私が慌てる番だった。抱き寄せられて耳元でそう呟かれる。小声で話すから吐息が耳に掛かってくすぐったい。思わず顔を逸らすと「ダーメ」と、無理矢理に顔を合わせられる。




「そっか……たまにはウィルスにイタズラされるのも良いかも」

「そ、そう……たまにだからね? そんな頻繁にはしないよ」

「そうだね。ウィルスは私に翻弄されててほしいよ」

「ほっ……!?」

「ふふっ。事実しか私は言わないよ? それはウィルスも分かってると思うけど」

「………」




 結論、レントにイタズラ仕掛けようなんてした私がバカでした。

 ずっと私の顔が赤くなる一方だし、女官達は待ってましたとばかりに黄色い声を上げている空間。誰も止める人は居ないし、唯一止めれるファーナムも「仲がよろしくて安心です」と言って見送る。

 ごめんなさい、レント。もうしないから、こんな公開処刑は嫌です!!!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 レントに良い様に言いくるめられ結局腰に手を当てたまま控室を出る事に。何故か入り口で控えていた兵士さん達には微笑まれ「今日も綺麗ですよ」とか言われてしまった。


 ふぅ、と息を整え最初に訪れたのは重厚感のある金の縁取りの扉。それを近衛騎士の制服であるエメラルド色の騎士が両端に控え、私とレントの姿を見てニコリと微笑んだ。




「中では既にゼスト様、ギルダーツ様、ルベルト様がお待ちになります。バーナン王子、クレール様もお待ちになっております」

「時間はまだだけど、遅刻したみたいで悪い事してる感じになるね」

「うぅ、ごめんなさい……」




 あれですね、私のセットと言うか女官達に気合の入れようが凄すぎたんだ。会見が始まる時間までには十分すぎる位に早いんだけど、なんだか遅れてきた感が合って一気にいたたまれなくなった。




「平気ですよ、ウィルス様。会見の時間にしては皆さん早い集合ですから」




 ごめんなさい。分かる位に私の表情が暗いからか、気を使われてしまった。レントに促され「じゃ、行くよ。ウィルス」と安心させるように言ってくれて扉が開かれる。




「…………」




 な、なんだこの空気の重み……!!!


 こんなピリピリとした感じだと思わず、ついレントの手をギュっと握ってしまった。それにレントも答える様にして握り返してくれた事で安心が得られる。


 会見の場として用意されたのは王の間かと思った。しかし、扉が重厚感あるから勝手に中もそれ位の内装だと思ったんだ。そして、私に突き刺さる様な視線に思わず身を引き締める。




「……!!!」




 ん?……あれ、知っている方が2人。え、ギルさん……とルーベルトさん???

 あれ、でも、髪も瞳も昨日とはちが……え、何、どういう事!?




「初めまして、ディーデット国のギルダーツ・ヒナム・ディーデットだ」

「弟のルベルト・ヒナム・ディーデットと言います」




 よろしくお願いしますね、と微笑まれたのは間違いなく昨日会ったルーベルトさんであり、ギルさんだ。……え、私、昨日既に2人に会っていた?


 ギルダーツ様は昨日と違い金髪の私と同じ紫色の瞳で、自分と繋がりがあるのかと思う程に似ていた。弟と名乗ったルベルト様は、薄い紫色髪に金色の瞳を宿した優しい雰囲気のままだ。 


 初めましてではなくて、昨日会いましたよね?


 これが言える程、私は冷静じゃない。もうパニックだ。でも表情には出さずに何とか堪える。レントには全部、心の内が流れ込んでいるだろうからきっと分かってくれると信じる。




「噂以上の美しさだな。初めまして、俺はハーベルト国のゼスト・リーゼルト・ハーベルトだ」




 低い声で一気に慌てた心が冷える。ゼストと名乗った方を見る。漆黒の髪に群青色の瞳の男性。その鋭利な目が獲物を狙うような感じに、顔を引きつらせる。

 心臓を鷲掴みにされたような錯覚に陥るからだ。


 しかも、彼が話した途端にまた空気が重たくなった。なんだ、思ってたのと違う。すぐに出ていきたい気持ちが増すんですけど。




「お褒め頂きありがとうございます」




 なんとかお礼を言いつつ、優雅にお辞儀をする。ちょっとだけ空気が軽くなったから助かった……。チラッと見たけど、ディーデット国とは違い黒のぴっちりとした制服。軍事国家と説明を受けていたから、軍服に近く公式だからなのか軽めに作られた印象。

  



(ま、まぁ、交流の意味もある訳だから敵意向けますって表現はしないものね)  

「では彼女達のお披露目も済みましたので、一旦控えましょう」




 レントにしては珍しく声色が固く、私とクレールさんを下がらせる。挨拶を交わしたからかと思い、内心ほっとしつつレントに促されクレールさんも合わせて出て行く。   

 ルベルト様も出て行くから、ここは第1王子同士だけにするんだね。うん、それは非常に助かる!!!




「っ……!!!」


 


 あ、あれ。な、何で足が動かな……わ、待って待って。

 レントとクレールさんが異変に気付いた時には既に出口に立っていた。手を伸ばした時には無情にも扉は閉まってしまった。


 ど、どうしよう!!! 

 空気的に出れなくなって閉じ込められた感が強いよ……!!!

 



「おや、姫は残るのか。ククッ、花がなくては楽しめるものも楽しめんしな」

「ウィルスに触らないでくれます? ゼスト王太子」   



 

 ゼスト王太子の手が私に触れる手前、バーナン様が滑り込むようにして遮る。ギルダーツ王子は明らかに不機嫌になり「貴様、どういうつもりだ…」と睨んでいる。


 え、な、な、に。どうしたらいいの!?

 レント、助けてーー。全然分からないよ!!


 睨み合いから始まるなんて知らないよ…。どうするのが正解なの、誰か教えて!!!

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